小林秀雄と吉本隆明―「断絶」を乗り越える
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デビュー論文「様々なる意匠」小林秀雄の試みと直観の真意
小林秀雄と吉本隆明―「断絶」を乗り越える(3)小林秀雄の批評
哲学と生き方
浜崎洋介(文芸批評家/ 京都大学経営管理大学院特定准教授)
大正から昭和初期にかけて起きた戦争景気、関東大震災、昭和恐慌など時代の荒波は、日本国民の心に多くの影響を与えた。そうした中、昭和4(1927)年に「様々なる意匠」という論文で文壇にデビューした小林秀雄は、これらの人々の内的感覚に近代を接ぎ木していくのである。今回の講義では、小林秀雄がそこで提示した「直観」という言葉を通じて社会と交わること、そして、「直観」を豊かにすることについて解説する。(全7話中第3話)
時間:13分05秒
収録日:2023年4月7日
追加日:2023年8月29日
≪全文≫

●「私には常に舞台より楽屋の方が面白い」


 こんにちは。文芸批評家の浜崎洋介です。小林秀雄と吉本隆明を対比しながら、日本の近代を考えようという講座ですが、その第3回目です。いよいよ小林秀雄の批評、「様々なる意匠」というデビュー論文ですが、それに注目しつつ、それ以後の実践についても簡単にご紹介したいと思っています。

 まず重要なのは、前回の講義の続きということでもありますが、日本人の生き方、まさに「型」ですね、それをなくしてしまったということが、昭和初年代に起こってしまうということです。

 これは私自身が言っていることでもありますが、同時にみんなが言っていることでもあり、実は大正期に、すでに森鷗外という文学者が、「礼儀小言」というエッセーを書いています。その中でどんどん、どんどん昔ながらの生き方がなくなっていってしまい、その不安感の中で日本人が浮動しているということを言っています。

 そして、それを取り上げながら、例えば唐木順三という文芸批評家がいますが、彼も『現代史への試み』という本を書いています。それほどまでに実は生き方をなくしてしまったということは、当時の非常に大きな主題だったのです。であるがゆえに、なくしてしまったその穴にいろんなものが流れ込むわけです。つまり、なくしてしまったそれを、いろんな理念で補おうとするわけです。

 これが前回言ったプロレタリア文学、つまりマルクス主義を目標とした文学だったり、あるいは象徴主義、要するにこの世界を否定してもっと芸術的な世界だけに戯れようとするあり方だったり、あるいは新感覚派、つまり都会的なモダンな感覚に身を任せて、その中で感覚の断片を拾っていきながら文学をしようとするような、そのような派閥です。

 そういったものがどんどん流行っていくわけですが、実は「様々なる意匠」という批評は、まさにそれらを批評した、あるいは批判したものだと言っていいかと思います。

 つまりは自分の外にある理論、あるいは自分の外にある身元保証です。それによって自分を吊り支えるような、そういうイデオロギーを批判した試みを、昭和4(1927)年という、まさにマルクス主義が一番風靡しているそのど真ん中でやったというのが、まさに小林秀雄の最初のデビュー論文でした。

 これは実は『改造』という雑誌...

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