小林秀雄と吉本隆明―「断絶」を乗り越える
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
なぜ吉本隆明は60年安保の時に進歩的知識人を批判したのか
小林秀雄と吉本隆明―「断絶」を乗り越える(5)吉本隆明の思想――大衆の原像と対幻想
浜崎洋介(文芸批評家/ 京都大学経営管理大学院特定准教授)
大衆の原像と対幻想――これは「戦後最大の思想家」といわれる吉本隆明の象徴的ともいえる言葉だが、いったいどのような思想にもとづくものなのか。今回は、吉本隆明の思想を初期から中期、そして後期とたどりながら、この2つの言葉について考察し、その思想をより深く理解していきたい。詩人として活動を始めた吉本隆明はその後、進歩的知識人の欺瞞を批判するようになり、後期に至っては自然としての性を強調する。(全7話中第5話)
時間:13分42秒
収録日:2023年4月7日
追加日:2023年9月12日
≪全文≫

●初期吉本隆明――〈関係の絶対性〉のなかに見る「倫理」


 皆さん、こんにちは。文芸批評家の浜崎洋介です。今日は吉本隆明の思想の第2回目です。いよいよ吉本隆明が何を語ったのか、あるいは何を価値としたのか、それについて皆さんと一緒に見ていきたいなと思っています。

 ちょっと難しい言葉が2つ出てきます。先に言っておきますが、「大衆の原像」という言葉と、「対幻想」という言葉です。もちろん、これはのちに私自身が解説することにはなりますが、これをめぐって吉本隆明は思考を紡いだといっていいのではないかと思っています。

 吉本隆明というのは難しい言葉で語る人なので、ですから「戦後最大の思想家」などと言われてしまうのですが、一方でそれを解きほぐしていくと、非常に単純なことをいっていたのではないでしょうか。あるいは小林秀雄についての講義でもやりましたが、まさに日本の自然ということを語ったのではないかと思えるところも多々あります。そのあたりを今日は拾っていきたいと思っています。

 まず、吉本隆明の思想を、初期から中期、それから後期にかけての流れとして、本当に簡単にということになりますが、まとめておきたいと思います。

 初期においては、彼自身は詩人として登場してくることになります。そのときはどういう感覚かというと、まさに戦後において社会的な秩序が変わったわけです。皇国思想から一気に戦後民主主義になり、全然違うものになります。

 ということは、社会的な理論からあぶれてしまった自分を、どこか持て余すことになるのです。そして内向的になっていくわけです。内向的になっていきながら、社会化されている言葉でそれが語れないときに人はどうなるかというと、詩人になるのです。詩の言葉でしか自分の心を、自分の思いを語ることができなくなります。

 そして最初に、その詩の言葉と内的な言葉と社会的な批評の言葉を、どこか橋渡ししようと思って書いたのが『高村光太郎』です。この人自身も詩人ですが、戦前において詩人として出立して、造形美術、彫刻などもやりながら、戦争中は皇国史観、つまり国体思想にずいぶんと肩入れした人です。そして、大正デモクラシーや大正教養主義を語っていた高村光太郎がなぜ皇国思想に行ったのかを問うような、そのような著作を書いたりします。

 ある...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
老荘思想に学ぶ(1)力のメカニズム
老荘思想は今の時代に人類の指針となる
田口佳史
人の行動の「なぜ」を読み解く行動分析学(1)随伴性
「なぜ人は部屋を片付けられないか」を行動分析学で考える
島宗理
西洋哲学史の10人~哲学入門(1)ソクラテス 最初の哲学者
ソクラテス:「フィロソフィア」の意味を問う最初の哲学者
貫成人
禅とは何か~禅と仏教の心(1)アメリカの禅と日本の禅
自発性を重んじる――藤田一照師が禅と仏教の心を説く
藤田一照
楽観は強い意志であり、悲観は人間の本性である
これからの時代をつくるのは、間違いなく「楽観主義」な人
小宮山宏
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会
古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著
渡部玄一

人気の講義ランキングTOP10
逆境に対峙する哲学(2)運命・世界・他者
「私をお母さんと呼ばないで」…突然訪れた逆境の意味
津崎良典
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会
古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著
渡部玄一
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(1)史実としての豊臣兄弟と秀長の役割
豊臣兄弟の謎…明らかになった秀吉政権での秀長の役割
黒田基樹
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
大谷翔平の育て方・育ち方(1)花巻東高校までの歩み
大谷翔平の育ち方…「自分を高めてゆく考え方」の秘密とは
桑原晃弥
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
宗教で読み解く世界(1)キリスト教の世界
キリスト教とは?…他の一神教との違いは神様と法律の関係
橋爪大三郎
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政