宮沢賢治『銀河鉄道の夜』を読む
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宮沢賢治の浄土教的世界観の根底にあった「隠し念仏」とは
宮沢賢治『銀河鉄道の夜』を読む(6)キリスト教と隠し念仏
鎌田東二(京都大学名誉教授)
『銀河鉄道の夜』にはキリスト教的モチーフが多く登場する。この物語へのキリスト教の影響、そして宮沢賢治とキリスト教の関係はどうなのか。ファンならずとも気になるところである。 本講義収録後の質疑応答コーナーに、宮沢賢治とキリスト教についての質問が寄せられたが、法華経的な純正日蓮主義を進めた国柱会、民族宗教として花巻周辺に浸透した「隠し念仏」などの話題も飛び出し、『銀河鉄道の夜』の謎は深まるばかりだ。メタファーについての質問と合わせて、鎌田氏の回答を見ていこう。(全6話中第6話:2022年7月28日開催ウェビナー〈宮沢賢治『銀河鉄道の夜』を読む〉より)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:14分56秒
収録日:2022年7月28日
追加日:2023年4月10日
≪全文≫

●メタファーと時代の文学的思潮からみた宮沢賢治作品


── ということで、皆さんからお寄せいただいた質問をお読みしたいと思います。まずひとつ目、「タイタニックの例のように、メタファーとして表現されているところ、また作品が書かれた時代の文学的思潮が特徴的に著されているところがありましたら、ご指摘いただきたいと思います」。メタファーについてのご質問ですね。

鎌田 タイタニックの前後か「鳥を捕る人」のところかに、ドボルザークの『新世界』(交響曲第9番)が表現されているといった指摘があります。『新世界』はアメリカを意識してできているので、アメリカ=新しい世界創造のように受け取れます。宮沢賢治自身は法華経の思想に基づいて田中智學が説いた「純正日蓮主義」という法華経的な世直し思想に共鳴を持ち、非常に大事にしていました。

 それは、世界を法華経によって霊化していく「真世界」の創造だという思想で、賢治の同時代、特に1911年前後頃から日本国内に広がっていました。賢治が入信するのは1919年頃ですが、そういう国柱会の思想などが出てきた時代というのは、「真世界」の創造とは裏腹に、世界大戦が1914年から18年まで起こり、かつ世界大戦が終わる頃にスペイン風邪のパンデミックが起こって、非常に多くの方々が亡くなっています。

 そういう時に賢治は国柱会に入会し、信行員となって、生涯会員であり続けます。そういう中で賢治は『銀河鉄道の夜』を最後まで練り上げようとしたので、同時代の問題意識というものが最終的にこの中のいろいろなところで、メタファーとして表現されていると思います。

―― また、メタファーでいうと、自分の作品を自己引用しているところもありますね。

鎌田 「さそりの火」とかね。

―― ええ。自分の作品を自分の作品の中に入れ込んで、世界観を著していく。この作品に対して賢治が込めたものが、やはりそういうところからも見えてくる気がします。

鎌田 『よだかの星』につながるところとか、前回言った『農民芸術概論綱要』の一節につながるところとか、いろいろなものが賢治の中では重なっていますよね。その重なり具合を、メタファーとして捉えることもできますね。


●宮沢賢治とキリスト教の関係


―― 次の質問にまいります。「『銀河鉄道の夜』にはキリスト教的モチーフが多く登場しますが、この物語へのキリスト教の影響...

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