宮沢賢治『銀河鉄道の夜』を読む
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
「ほんとうの神さま」の謎…宮沢賢治が込めたメッセージ
宮沢賢治『銀河鉄道の夜』を読む(5)「ほんとうの神さま」論議
鎌田東二(京都大学名誉教授)
銀河鉄道の中で描かれる「ほんとうの神さま」論議。はじめ、ジョバンニと女の子が語りあい、やがてクリスチャンらしき若者の「神さま」とジョバンニが考える「ほんとうのたった一人の神さま」との差違が語られる。はたして、「ほんとうの神様」とはいかなるものだと、宮沢賢治は考えていたのか。そのヒントも、ブルカニロ博士のメッセージのなかに現われる。われわれはこのメッセージをどう捉えるべきか。(全6話中第5話:2022年7月28日開催ウェビナー〈宮沢賢治『銀河鉄道の夜』を読む〉より)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:10分14秒
収録日:2022年7月28日
追加日:2023年4月3日
≪全文≫

●唯一神を超える「ほんとうの神さま」の意味


── 先ほど少し「ほんとうの神さま」論議の話が出ました。ここのお話を(今回は)いただくことにしたいと思います。

 この「ほんとうの神さま」論議については、あらすじを思い出していただくといいのですが、南十字のところで女の子と弟と青年が降りていきます。それまで楽しく旅をしてきたので、なんとなくみんな名残惜しい状況になり、ジョバンニがこらえかねて「僕たちと一緒に乗っていこう。僕たちどこまでだって行ける切符持ってるんだ」と言います。

 そうすると女の子は「だけどあたしたち、もうここで降りなけぁいけないのよ。ここ天上へ行くとこなんだから」とさびしそうに言います。ジョバンニは「天上へなんか行かなくたっていいじゃないか。ぼくたちここで天上よりももっといいとこをこさえなけぁいけないって僕の先生が言ったよ」。

 女の子(とジョバンニ)は「だっておっ母さんも行ってらっしゃるし、それに神さまがおっしゃるんだわ」「そんな神さまうその神さまだい」「あなたの神さまうその神さまよ」「そうじゃないよ」と、言い合いのようになっていきます。

 ここへ青年が入ってきて、「あなたの神さまってどんな神さまですか」と笑いながら言いました。ジョバンニが「ぼくほんとうはよく知りません。けれどもそんなんでなしに、ほんとうのたった一人の神さまです」と言うと、青年が「ほんとうの神さまはもちろんたった一人です」と言う。

 「ああ、そんなんでなしに、たったひとりのほんとうのほんとうの神さまです」。すると青年が「だからそうじゃありませんか。わたくしはあなた方がいまにそのほんとうの神さまの前に、わたくしたちとお会いになることを祈ります」。青年はつつましく両手を組みました、ということです。

 この青年は明らかにキリスト教を意識していて、キリスト教的な唯一神を前提に話している。ジョバンニはそのあたりがまだ明確な像を結んでいないけれども、この前のページにあった「ここで天上よりももうちょっといいところをこさえなけぁいけないと先生が言ったよ」というメッセージをここで語っています。

 この「ほんとうの神さま」についても、やはり謎めいたといえば謎めいた箇所になりますが、ここはどういう意味に...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「芸術と文化」でまず見るべき講義シリーズ
バッハで学ぶクラシックの本質(1)リベラルアーツと音楽
音楽の父バッハ…なぜ「音楽」が西洋でリベラルアーツなのか?
樋口隆一
古関裕而・日本人を応援し続けた大作曲家(1)恩師との出会い
六甲おろし、栄冠は君に輝く、長崎の鐘…古関裕而の魅力
刑部芳則
司馬遼太郎のビジョン~日本の姿とは?(1)1923年生まれの3人の作家
司馬遼太郎と日本人…まず遠藤周作、池波正太郎との比較で考える
片山杜秀
ルネサンス美術の見方(1)ルネサンス美術とは何か
ルネサンスはどうやって始まった?…美術の時代背景
池上英洋
なぜ働いていると本が読めなくなるのか問答(1)読書と教養からみた日本の近現代史
『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』で追う近現代史
三宅香帆
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純

人気の講義ランキングTOP10
徳川将軍と江戸幕府~井伊直弼編(3)水戸藩の問題と安政の大獄
安政の大獄は失政!?…井伊直弼は何を見誤ったのか
山内昌之
仏教とキリスト教が照らし出す日本の宗教(2)教義の宗教と覚りの宗教
キリスト教は教義の宗教、仏教は覚りの宗教…仏教はなぜ普遍宗教か
橋爪大三郎
もののあはれと日本の道徳・倫理(1)もののあはれへの共感と倫理
本居宣長が考えた「もののあはれ」と倫理の基礎
板東洋介
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(2)翻訳に込めた日米の架け橋への夢
アメリカ人の心を震わせた20歳の日系二世・三上弘文の翻訳
門田隆将
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
資本主義の再定義…哲学で考える(1)アダム・スミスの「市場と感情」
資本主義を哲学する…まずアダム・スミスの見えざる手と道徳感情論
中島隆博
『江戸名所図会』で歩く東京~日本橋 (1)日本橋に見る徳川家康の手腕
徳川家康と江戸の町づくりー江戸時代の「日本橋」の姿とは
堀口茉純
原因と結果の迷宮~因果関係と哲学(6)不在因果の問題
不作為(◯◯しなかったこと)の原因は無限に拡散する
一ノ瀬正樹
ギリシア悲劇への誘い(7)ギリシア悲劇を論じた歴史
アリストテレス、ニーチェ…哲学者によるギリシア悲劇批評
納富信留
デカルトの存在論に学ぶ(1) 「我思う、ゆえに我在り」
「我思う、ゆえに我在り」はデカルトの専売特許ではない
津崎良典