アメリカの理念と本質
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
ピューリタニズムとは?アメリカ建国の核とその歴史に迫る
アメリカの理念と本質(2)ピューリタニズムの歴史
中西輝政(京都大学名誉教授/歴史学者/国際政治学者)
アメリカの本質を知るにはキリスト教の中でも特殊なピューリタニズムを理解する必要がある。アメリカ建国の礎をなしたアングロ・サクソンはイギリスで迫害から逃れたピューリタンであり、新しい土地で理想国家をつくろうとする信念がアメリカの理念の元となった。今回はアメリカ建国の核となったピューリタニズムについての知見を深めるため、ピューリタニズムの歴史について解説する。(全10話中第2話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:10分51秒
収録日:2024年6月14日
追加日:2024年8月27日
カテゴリー:
≪全文≫

●アメリカ建国の核であるピューリタニズムを知る


中西 このように見てくると、結局一番大事なのはどこか。アメリカの本質、すなわちアメリカという国の一番の核になっているものは何なのか。アメリカの憲法なのか。それとも連邦政府や連邦議会の存在、政治体制なのか。あるいは、宗教や社会を築いていく植民地時代のアメリカが、本当はアメリカの核なのか。こういう三つの問いが、3種類の建国のいきさつから問われるわけです。

 あえて私なりの考えを個人的にいいますと(これは私の個人的な考えで、日本の歴史学者には他の説を採る人が多いのですが)、アメリカにはキリスト教国家としての理念がその根本にあるのだろう、アメリカの核はやはりピューリタニズムにあったのではないだろうか、と思います。

 では、ピューリタニズムとは何なのか。これについては、日本の高等学校の世界史の授業にも出てきますけれど、ドイツのマルティン・ルターによる宗教改革、スイスのジャン・カルヴァンによる宗教改革というものが、カトリック教会の教皇庁に反旗を翻し、カトリックの教えを批判して、新しい教会の階層制度を提示した。

 ローマ法王をはじめ、大司教や司教といった階層制や組織制に基づくものではなく、明らかに個人の宗教的な確信すなわち信仰によって神の救い、神の恩寵をこうむることができる、つまり天国に行くことができるということを、魂の救済として唱えた。これが宗教改革であり、プロテスタンティズムの始まりです。

 ですから、ドイツのマルティン・ルターやスイスのカルヴァンたちの唱えたものが、新しいキリスト教の考え方や信仰の道であろうといわれるわけですが、これらは(アメリカに渡った)ピューリタニズムとは少し違うと思うのです。


●イギリス国家と国教会への反逆として


中西 それはどういうことかというと、イギリスはイギリスで、ルターの宗教改革の少し後に、当時のイギリス国王ヘンリー8世がローマ法王庁(ローマ・カトリック教会)との関係を断絶して、「イギリスはイギリスだけの教会をつくる」と言い出します。これは「一国教会主義」といわれますが、イギリス国教会(イングランド国教会)というものが、王の命令でつくられるわけです。

 一説には、当時の国王(ヘンリー8世)が離婚したかったが、王妃はスペインの出身でカトリックだから、ローマ法王の許可がなければ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
日本のエネルギー&デジタル戦略の未来像(1)電動化で起こる「カンブリア爆発」
ロボットの「カンブリア爆発」時代へ電動化がもたらすもの
岡本浩
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
マルクス入門と資本主義の未来(1)マルクスとはどんな人物なのか
マルクスを理解するための4つの重要ポイント
橋爪大三郎
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
トランプ・ドクトリンと米国第一主義外交(1)リヤド演説とトランプ・ドクトリン
トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ
東秀敏

人気の講義ランキングTOP10
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(2)量子論と空海密教の本質
脳内の量子的効果――ペンローズ=ハメロフ仮説とは
鎌田東二
編集部ラジオ2025(27)なぜ何回説明しても伝わらない?
なぜ伝わらない?理解の壁の正体を今井むつみ先生に学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
内側から見たアメリカと日本(2)アメリカの大転換とトランプの誤解
偉大だったアメリカを全否定…世界が驚いたトランプの言動
島田晴雄
デカルトの感情論に学ぶ(2)感情をコントロールするには
恐怖をなくす方法と感情のコントロール…デカルトの考え方
津崎良典
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(2)「ほめる」技術
男性は「ほめる」のが苦手?傾聴から始まる「ほめる」技術
三谷宏治
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ