●アメリカ建国の核であるピューリタニズムを知る
中西 このように見てくると、結局一番大事なのはどこか。アメリカの本質、すなわちアメリカという国の一番の核になっているものは何なのか。アメリカの憲法なのか。それとも連邦政府や連邦議会の存在、政治体制なのか。あるいは、宗教や社会を築いていく植民地時代のアメリカが、本当はアメリカの核なのか。こういう三つの問いが、3種類の建国のいきさつから問われるわけです。
あえて私なりの考えを個人的にいいますと(これは私の個人的な考えで、日本の歴史学者には他の説を採る人が多いのですが)、アメリカにはキリスト教国家としての理念がその根本にあるのだろう、アメリカの核はやはりピューリタニズムにあったのではないだろうか、と思います。
では、ピューリタニズムとは何なのか。これについては、日本の高等学校の世界史の授業にも出てきますけれど、ドイツのマルティン・ルターによる宗教改革、スイスのジャン・カルヴァンによる宗教改革というものが、カトリック教会の教皇庁に反旗を翻し、カトリックの教えを批判して、新しい教会の階層制度を提示した。
ローマ法王をはじめ、大司教や司教といった階層制や組織制に基づくものではなく、明らかに個人の宗教的な確信すなわち信仰によって神の救い、神の恩寵をこうむることができる、つまり天国に行くことができるということを、魂の救済として唱えた。これが宗教改革であり、プロテスタンティズムの始まりです。
ですから、ドイツのマルティン・ルターやスイスのカルヴァンたちの唱えたものが、新しいキリスト教の考え方や信仰の道であろうといわれるわけですが、これらは(アメリカに渡った)ピューリタニズムとは少し違うと思うのです。
●イギリス国家と国教会への反逆として
中西 それはどういうことかというと、イギリスはイギリスで、ルターの宗教改革の少し後に、当時のイギリス国王ヘンリー8世がローマ法王庁(ローマ・カトリック教会)との関係を断絶して、「イギリスはイギリスだけの教会をつくる」と言い出します。これは「一国教会主義」といわれますが、イギリス国教会(イングランド国教会)というものが、王の命令でつくられるわけです。
一説には、当時の国王(ヘンリー8世)が離婚したかったが、王妃はスペインの出身でカトリックだから、ローマ法王の許可がなければ...