アメリカの理念と本質
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
理想主義的か利己主義的か…アメリカ史から考える孤立主義
アメリカの理念と本質(10)二つの孤立主義と30年周期説
中西輝政(京都大学名誉教授/歴史学者/国際政治学者)
孤立主義の中には「理想主義的な孤立主義」と「利己主義的な孤立主義」がある。これはしっかり区別しなければいけないが、アメリカの歴史の文脈でいえば、本当は「理想主義の孤立主義」なのだと中西氏は言う。実際にアメリカはさまざまな意味でこの二つの対極的な概念を行き来しているのだが、それはバランスを取るための動きと見るのがよさそうだ。30年周期説などが唱えられる中、その変化の背後にある「変わらないもの」を見つめるのがアメリカ理解のカギである。(全10話中第10話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:14分24秒
収録日:2024年6月14日
追加日:2024年10月22日
カテゴリー:
≪全文≫

●理想主義的な孤立主義と利己主義的な孤立主義


―― 今日のお話の中で、アメリカはもともと、その始まったところから、ある意味で帝国主義的な要素もあるのだというお話もありましたし、実際に非常に大きく出ていって影響を及ぼした時期も長くありました。その反面、「モンロー主義」という言葉もよく聞きますが、孤立主義的な姿勢を取ることもある。

 この当たり、孤立主義とグローバリズム的な部分のアメリカ内部における相克というのは、日本人にとっては、そのどちらの側面が出てくるのかを読みにくくしている一つの要素だと思うのですが、中西先生はどのようにお考えでしょうか。

中西 孤立主義という言葉自体が、英語では“Pejorative word”という「非難語」なのです。外国の、外部の紛争や国際政治にあまり関わらないようにしようというのが、孤立主義という言葉の最も広い意味だと思います。

 孤立主義にはいろいろな種類があり、四つにも五つにも分類することができると思います。簡単にいえば、孤立主義の中には「理想主義的な孤立主義」と「利己主義的な孤立主義」がある。これはしっかり区別しなければいけません。アメリカの歴史の文脈でいう孤立主義は、本当は「理想主義の孤立主義」なのです。

 どういうことかというと、「戦乱と腐敗のヨーロッパを捨てて、新大陸に新しい理想の国をつくったのだ」という立場から見ると、外交や安全保障に肩入れをして、絶えることのない戦争に国民を叩き込むようなことはやってはいけないことで、それ自体が悪である。そうすると、そういうことになりかねない形で国際関係に関わっていくこと自体が、戦争の泥沼にアメリカを引き込んでしまう。

 つまり、どこの国も主権国家として立派に生きていく権利があり、あらゆる戦争は他の国のことに干渉し、介入することによって起こる。だから、平和と自由のためには、不介入主義が平和への道になる。他国のことに介入しないことが正しい方針、平和の方針であり、平和をもたらす。こういう考え方から、「アメリカは海外の問題に関わらないようにしましょう」というのが、初代大統領ジョージ・ワシントン以来ずっとアメリカにあった孤立主義の伝統なのです。それが孤立主義なのですが、この伝統は多分ずっと20世紀まで続くと思います。第一次大戦に参戦するまで続いたと思います。

 ところが、それとは違う孤立主義があ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
本当によくわかる経済学史(1)経済学史の概観
経済学史の基礎知識…大きな流れをいかに理解すべきか
柿埜真吾
台湾有事を考える(1)中国の核心的利益と太平洋覇権構想
習近平政権の野望とそのカギを握る台湾の地理的条件
島田晴雄
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫

人気の講義ランキングTOP10
折口信夫が語った日本文化の核心(1)「まれびと」と日本の「おもてなし」
「まれびと」とは何か?折口信夫が考えた日本文化の根源
上野誠
編集部ラジオ2025(33)2025年を振り返る
2025年のテンミニッツ・アカデミーを振り返る
テンミニッツ・アカデミー編集部
過激化した米国~MAGA内戦と民主党の逆襲(3)DSA化した民主党と今後の展望
DSAの民主党乗っ取り工作…世代交代で大躍進の可能性
東秀敏
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(4)信長の直臣、秀吉の与力としての秀長
最初は信長の直臣として活躍――武闘派・秀長の前半生は?
黒田基樹
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
世界哲学のすすめ(1)世界哲学プロジェクト
日本発!危機の時代に始動する世界哲学プロジェクトの意義
納富信留