加速する「アメリカの政治的分極化」と今後の可能性
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
トランプ政治で加速する分極化…2024年大統領選の行方
加速する「アメリカの政治的分極化」と今後の可能性
曽根泰教(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
政治的分極化が進んでいるアメリカ。特に共和党内での分裂が顕著で、2023年10月には下院議長選挙が大混乱した。この背景にはイデオロギー的、感情的な分極化がある。トランプ政権以降、分極化が加速すると、中道が失われて両極がますます広がる傾向にある。マスメディアの偏向報道とSNSの発達が拍車をかけ、地域、学歴、所得などの格差も影響している。民主党はアイデンティティ政治を強めているが、アメリカの政治は今年(2024年)の大統領選挙でさらに分極化が進む可能性が高い。今後どうなるのか。この問題について、大統領選挙の行方を占いながら解説する。
時間:8分35秒
収録日:2023年12月21日
追加日:2024年2月20日
カテゴリー:
≪全文≫

●ポラライゼーション(分極化)を見ないとアメリカ政治は分からない


 これからお話しするのは、アメリカの政治的分極化というお話をいたします。分極化というのは何かというと、ポラライゼーション(polarization:分極化)なのですが、具体的な例から始めます。

 非常に細かい例ですが、2023年10月25日に共和党の混乱がやっと収まりました。なぜそのようなことが起きたのか。マッカーシー(前)議長が解任されましたが、これはマット・ゲイツ下院議員が動議を出したからです。この人は共和党員です。マッカーシー議長も共和党員です。そして議長選を何度も繰り返し、4回投票してやっと決まったわけです。共和党は下院で多数を持っています。しかし、共和党の内部が分裂しているのです。

 もともとアメリカは党議拘束がないというのが特徴としてありますが、これは非常に珍しい。珍しいというのは、分裂がこんなに明らかになるのは珍しいということです。

 アメリカの現状について、5派閥があるとか、主流派対反主流派とかいろいろいわれますが、フリーダム・コーカス(Freedom Caucus)というところに参加していたグループが、テコでも動かない。テコでも動かないのと、それから同じトランプ支持者同士でも、いがみ合ったり対立したりするということが現状としてあります。

 この問題はポラライゼーションの1つなのですが、アメリカの政治が政治的分極化したという問題と、それから多数派の問題の2つを含んでいます。多数派については別途議論します。

 それから、日本ではよく分断と分極化が同じように扱われますが、分断一般の中にいくつか含まれるのは日本でいわれる「ねじれ国会」で、これも分断といわれるわけです。

 しかし、ポラライゼーションというのは分極化です。イデオロギー的な分極化もあるし、感情的な分極化もある。この分極化というものを見てみないと、アメリカの政治がよく分かりません。


●アメリカの分極化はトランプを境に加速している


 昔からアメリカは分極化していた、といえばそうです。南北戦争がありました。

 それから、共和党は公民権に反対し、それで南部に出ていくとか、あるいは民主党は北部だったのが西海岸のほ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
過激化した米国~MAGA内戦と民主党の逆襲(1)米国の過激化とそのプロセス
MAGA内戦、DSAの台頭…過激化が完了した米国の現在地
東秀敏
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
為替レートから考える日本の競争力・購買力(1)為替レートと物の値段で見る円の価値
ビッグマック指数から考える実質為替レートと購買力平価
養田功一郎

人気の講義ランキングTOP10
折口信夫が語った日本文化の核心(1)「まれびと」と日本の「おもてなし」
「まれびと」とは何か?折口信夫が考えた日本文化の根源
上野誠
過激化した米国~MAGA内戦と民主党の逆襲(2)MAGAの矛盾と内戦の現状
MAGA内戦勃発…なぜトランプがMAGAの敵になってしまうのか
東秀敏
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(4)信長の直臣、秀吉の与力としての秀長
最初は信長の直臣として活躍――武闘派・秀長の前半生は?
黒田基樹
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
ChatGPT~AIと人間の未来(1)ChatGPTは何ができて、何ができないか
ChatGPTは考えてない?…「AIの回答」の本質とは
西垣通
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏