デジタル全体主義を哲学的に考える
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
次の動画も登録不要で無料視聴できます!
儒教由来のスコアリングが格付けに使われる中国の現実
第2話へ進む
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
中島隆博(東京大学東洋文化研究所長・教授)
SNS等を通じて誰もが自分の意見を発信することができる今、20世紀型の全体主義とは異なる「デジタル全体主義」が登場している。あらゆる情報がデータ化され、一部のエリート層によって社会が動かされることにより、「無用者階級」が生み出される懸念もある。社会の格差や分断が広がる中で、どのような社会を目指していけばいいのか。(全7話中第1話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:14分43秒
収録日:2021年5月28日
追加日:2021年11月5日
≪全文≫

●20世紀型の全体主義とは異なる形の全体主義が登場している


―― 皆さま、こんにちは。

中島 皆さま、こんにちは。

―― 本日は中島隆博先生に「デジタル全体主義を哲学的にどう考えるか」というテーマでお話いただきます。中島先生、どうぞよろしくお願いいたします。

中島 よろしくお願いいたします。

―― 今日は哲学講義ですが、いろいろな哲学者の紹介というよりも、現代的な問題を哲学的にどう考えていくかについてお話をお伺いできればと思います。

中島 はい。

―― テーマが「デジタル全体主義」ですが、ちょうど中島先生がマルクス・ガブリエルさんと一緒に、『全体主義の克服』という大変興味深い本をお書きになっているので、こちらをベースにお話を伺っていければと思います。

 まず、最近よく聞かれる「デジタル全体主義」という言葉は何を意味しているのでしょうか。

中島 「全体主義」という言葉自体は20世紀の概念です。21世紀にはもうそれをとっくに克服して、過去のものになったとわれわれは思っていました。しかし、新しい形での全体主義が登場してしまっているのではないかという疑問から問いが生まれて、「デジタル全体主義」が登場してきたと思います。

―― この本に書かれていることでいうと、例えばソ連やナチスドイツなどの20世紀型の一般の全体主義とは非常にイメージが違います。昔は強制したり、密告を強要して、例えば誰と誰が仲間なのかという情報を国家が全体主義的に集めていき、統制していくイメージでした。

 それがデジタル全体主義になると、むしろ人びとの側が、例えばグーグルやフェイスブックに自発的に情報を出していってしまい、そのデータがビッグデータとして使われて、社会として全体主義的になっているのではないかという主張です。こうしたイメージの認識で正しいのでしょうか。

中島 はい。ある意味で非常に不思議なことが起きていると思います。

 20世紀型の全体主義は、例えば特殊警察などを使って、人びとの頭の中の思想をつかもうと大変な努力します。おっしゃるように、密告が奨励されたり、さまざまな形の拷問が使われたりしました。それによって、何とか思想をつかむことが大きなテーマだったと思います。

 ところが21世紀になってくると、もはやそういう必要がありません。皆さんがそれぞれの仕方で自分の思想・信条をインターネ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
「中華民族の偉大な復興」と中国外交(1)外交姿勢・前編
四字熟語で見る中国外交の変化
小原雅博
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦

人気の講義ランキングTOP10
逆境に対峙する哲学(2)運命・世界・他者
「私をお母さんと呼ばないで」…突然訪れた逆境の意味
津崎良典
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会
古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著
渡部玄一
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(1)史実としての豊臣兄弟と秀長の役割
豊臣兄弟の謎…明らかになった秀吉政権での秀長の役割
黒田基樹
平和の追求~哲学者たちの構想(4)ルソーが考える平和と自由
ルソーの「コスモポリタニズム批判」…分権的連邦国家構想
川出良枝
熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために
夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは
西野精治
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
死と宗教~教養としての「死の講義」(1)「自分が死ぬ」ということ
世界の宗教は死をどう考えるか…科学では死はわからない
橋爪大三郎