デジタル全体主義を哲学的に考える
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
「もう投資先がない」、資本主義が招いたパラドクスとは
デジタル全体主義を哲学的に考える(3)「人の資本主義」と場を開く人
中島隆博(東京大学東洋文化研究所長・教授)
グローバル化された資本主義は、国内外でさらなる格差を生み出し、もはや資本主義とは言えない事態を招いている。差異の消費を基盤としたこれまでの資本主義のあり方を見直し、人の生を豊かにする「人の資本主義」へと変容することが重要だ。(全7話中第3話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:9分50秒
収録日:2021年5月28日
追加日:2021年11月19日
≪全文≫

●消費に拠らない資本主義のあり方を構想する


―― 資本主義的なグローバリズム、あるいはグローバル資本主義的なものの一つのあり方として、先生が近年挙げているのが、「人の資本主義」です。ちょうどテンミニッツTVでも、以前そのテーマでお話しいただいたことがあります。グローバリズム、あるいはグローバル資本主義の問題点を解決する一つの手立てとして、デモクラシーもありますが、もう一方で、資本主義のあり方自体を変えていくというのもあります。

中島 資本主義には、それ自体に歴史があると私は思っています。資本主義は別に同じシステムがずっと続いているわけではないと思います。もちろん基本は同じです。資本主義の基本は、時間を支配する形式だと私は思っているのですが、それが具体的に体現されるのは投資です。やはり投資をして、回収していく仕組みだと思います。

 ところが今の資本主義を見ていくと、例えば1パーセントの超々富裕層に莫大な資金が集まっています。しかしそれは投資されません。もう投資先がないというか、投資しなくてもお金が集まってしまうという、おかしなことになっています。資本主義のそういう基本的な構造から外れてしまっている感じです。資本主義がそれを招いたのですが、それが実は資本主義とは関係のないものをもたらしてしまったというパラドクスが生じている気がします。

―― よく投資と投機の違いといわれたりしますが、最近はお金を預けても、みんなAIで運用してしまいます。昔の銀行がやっていた、可能性のある技術に懸けて、それを育てるというイメージから、もう少し投機的なイメージになっているというお話ですか。

中島 それも含めてです。やはり資本主義自体を鍛え直さないといけない気がします。そのときのキーワードの一つとして考えてみたのが、「人の資本主義」という概念です。モノからコトへ、コトから人へというイメージを自分は持っています。

 資本主義は、モノをつくっていきます。良いモノをつくって、それを皆さんに買っていただいて、経済を回していきます。これがある段階では非常に優勢だったと思います。だから良いモノさえつくれば、売れると思われていました。しかし、だんだんモノが溢れてしまって、良いモノをつくっても売れません。次にどこに向かっていくかというと、今度はコトに向かいます。これを「コト消費」と言い、いろいろ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
2025年、どん底日本を脱却する大戦略(1)日本が凋落した要因を総覧する
日本凋落の「7つの要因」と「10の復活大戦略」
島田晴雄
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
多数派が多数でなくなるとき
悩める多数派…なぜ「多数は少数の集まり」と考えるべきか
曽根泰教
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
松下幸之助の人づくり≪3≫理想の政治(1)国家に経営理念があれば、もっと日本は発展する
無限の可能性に挑め…国家経営を創造し、新時代の憲法を!
松下幸之助
トランプ・ドクトリンと米国第一主義外交(1)リヤド演説とトランプ・ドクトリン
トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ
東秀敏

人気の講義ランキングTOP10
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
ケルト神話の基本を知る(1)ケルト地域と3つの神話群
ケルト神話とは…ダーナ神族、アルスター神話、フィアナ神話
鎌田東二
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(5)「チーム戦と新規ビジネス」の要点
「土地勘のあるところ、自分たちの武器を持っていく」
水野道訓
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(2)言葉を理解するプロセスとスキーマ
なぜ子どもは教えられても理解できないのか?鍵はスキーマ
今井むつみ
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
「集権と分権」から考える日本の核心(1)日本の国家モデルと公の概念
日本は集権的か分権的か…地理と歴史が作る人間の性質とは
片山杜秀
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
教養としての「人口減少問題と社会保障」(1)急速に人口減少する日本の現実
毎年100万人ずつ減少…急降下する日本の人口問題を考える
森田朗
ショパンの音楽とポーランド(1)ショパンの生涯
ショパン…ピアノのことを知り尽くした作曲家の波乱の人生
江崎昌子