デジタル全体主義を哲学的に考える
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
儒教由来のスコアリングが格付けに使われる中国の現実
デジタル全体主義を哲学的に考える(2)スコアリングとデモクラシー
中島隆博(東京大学東洋文化研究所長・教授)
デジタル化が進む中国では、個人のあらゆる行動が監視され、評価される社会が訪れた。そこでは儒教由来のスコアリングが単なる格付けのために都合よく解釈されている。こうした現状はデモクラシーにとっていかなる意味を持つのか。(全7話中第2話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:12分10秒
収録日:2021年5月28日
追加日:2021年11月12日
≪全文≫

●儒教を平板化することによる、スコアリングの格付化


―― 先生がこの『全体主義の克服』でされている大変興味深いもう一つの議論が、スコアリングの話です。冒頭(第1話)であったように、デジタル全体主義には、自分で情報を自発的に上げてしまうという側面があります。実はそれに似たものが、東洋の伝統の中にあり、それが中国の明の時代にあった「功過格(こうかかく)」です。これは採点表ですか。

中島 採点表です。

―― これはどうやって使われていたのでしょうか。

中島 日本では江戸時代に入りますが、夜寝る前に今日一日を振り返り、良いことをしたら「〇」で、悪いことをしたら「×」を書きます。その「〇」と「×」を足し算、あるいは引き算して、どちらが多いのかを計算して、「〇」が多かったら、今日は一日良かったというような採点表が結構はやります。

―― 良かった・悪かったというのは、儒教的な位置づけの項目ですか。

中島 もちろん儒教的なものです。そのため、親孝行した、あるいは人に善くしたなど、そういったことが中心にはなりますが、非常に民間に根差している面もあるので、使われ方は幅広いのです。

 それ自体は、人びとが自分を振り返るキッカケになるという点では、悪くない装置だったのかもしれません。

―― 寝る前にチェックして、反省しましょうということなので、悪くないですね。

中島 しかし、それが今のテクノロジーと結びついて、ある種、自分の格付けに用いられています。例えば、良いレストランを使ったらポイントが高い、あるいは良い大学に行ったらポイントが高いなど、その人に対してそういう合計でスコアリングをしていくことになっていきます。例えば、お見合いの場面などで、自分のスコアを見せあって、スコアが近い者同士で、結婚する・しないを議論したりするらしいのです。しかし、それで本当に良いのでしょうか。

―― このご本の中ですごく印象深かったのが、中国の場合は、支払いもだいたいデジタル通貨で一元管理されていて、いろいろな監視システムで行動が全部管理されます。例えば、親のお見舞いに行ったかどうかで何ポイントや、お金の使い方がどうなのかで何ポイントなど、それが社会的に良ければ良いけれど、ダメな人は、クレジットカードでいうブラックリストみたいなものに載ってしまうと。

 これは実際にそうなるとなかなか大変です...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉
戦争と平和の国際政治(1)「合理性の罠」とインテリジェンス
国際政治の要諦は戦略とインテリジェンス
小原雅博
台湾有事を考える(1)中国の核心的利益と太平洋覇権構想
習近平政権の野望とそのカギを握る台湾の地理的条件
島田晴雄
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
トランプの誤謬…米国製造業を壊した犯人は米国の経営者
島田晴雄
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博

人気の講義ランキングTOP10
こどもと学ぶ戦争と平和(2)「本当の平和」とは何か
「平和」には2つある…今の日本は本当に平和なのか?
小原雅博
AI時代と人間の再定義(1)AIは思考するのか
AIでは「思考の三位一体」が成立しない…考えるとは?
中島隆博
プロジェクトマネジメントの基本(10)大脳生理学によるモチベーション理論
論理的?計画的?社交的?冒険的?利き脳による4タイプ
大塚有希子
これから必要な人材と人材教育とは?(2)AI時代に必要とされる能力
AI時代に必要なのは「問いを立てる能力」…いかに育成するか
柳川範之
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(4)全てをつなぐ密教の世界観
密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」
鎌田東二
これからの社会・経済の構造変化(2)経済的利益と社会課題解決の両立へ
利益か社会課題解決か…かつての日本企業の美点を取り戻せ
柳川範之
経験学習を促すリーダーシップ(2)経験から学ぶ力
米長邦雄のアンラーニング、弟子の弟子になってV字成長
松尾睦
「進化」への誤解…本当は何か?(3)進化学説史と近代の生物実験
ラマルクの進化論…使えば器官が発達し、それが子に伝わる
長谷川眞理子
おもしろき『法華経』の世界(2)『法華経』と「神道」の共通性
『法華経』と「神道」はアバター!?通底する世界観とは
鎌田東二
危機のデモクラシー…公共哲学から考える(5)共存・共生のための理性
共生への道…ジョン・ロールズが説く「合理性と道理性」
齋藤純一