デジタル全体主義を哲学的に考える
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
なぜ論語の中の「道」は世界的に役立つ普遍的概念なのか
デジタル全体主義を哲学的に考える(6)概念の普遍化に必要なこと
中島隆博(東京大学東洋文化研究所長・教授)
人びとの豊かな生を守るための概念として、平和、自由、平等、そして人権が挙げられる。これらの概念は普遍的価値として認識されているが、それぞれの国には異なる文化的・社会的な背景がある中で、ある概念が普遍的価値になるとはどういうことなのか。また、ある概念を普遍化させるためには何が必要なのか。(全7話中第6話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:8分06秒
収録日:2021年5月27日
追加日:2021年12月10日
≪全文≫

●概念自身が旅をすることによって普遍化していくことが必要


―― この本(『全体主義の克服』)の中で、もう一つ非常に興味深いのが、新しい普遍的な価値をどうつくっていくかという議論です。

 先ほど先生が問題提起したように、一つの考えが全体として全てを包含するということではなく、もっと偶然や他者の知恵などが加われるように開いていくほうがいいというときに、いかにその考え方を世界に普遍的なものとして、哲学的に打ち立てていくかという議論を、いろいろな方向からマルクス・ガブリエルさんとしています。

 今の普遍的な価値というと、一般的には例えば自由、平等、人権で、今のところ、これが世界では普遍的な価値といわれています。ただ、この本で先生が挙げているのですが、実はヨーロッパでこの概念が出始めた時代は植民地がありました。

 実際にそれらの概念を全世界で広めていけるのかというと、ヨーロッパにはヨーロッパの抵抗感があり、いってみれば、当時は白人だけのものでした。しかし、それがやがてだんだんと世界に広がっていったというイメージです。その部分の問題もお話しになっているのですが、一つの概念が普遍化していくというのは、どういうことなのでしょうか。

中島 今おっしゃったように、自由や平等、人権にしても、誕生した瞬間に普遍的であったわけではないと思います。それはある普遍化可能なものとして登場したことは確かですが、でも、当時のヨーロッパで考えていくと、ヨーロッパの外には、それは適用されていませんでした。そのため、いったんヨーロッパの外に概念が出る必要がどうしてもあったのだと思います。出ることによって、ヨーロッパ自身が揺さぶられて、鍛え直されていくと思います。

 そういう概念が世界的に旅をするといいますか、循環して鍛えられていく。そういう中で、自由や平等、人権が鍛えられていったのだと思います。だから、フランス革命のときの人権の概念と、世界人権宣言の人権の概念は、もう別物ですよね。

―― 世界人権宣言は第二次世界大戦後、すぐのものですね。

中島 成人男性だけに認められていた人権概念だと具合が悪いわけです。それがどうしても万人に開かれていかなければいけませんでした。そのため、いきなり普遍的な概念があるというより、概念自身が旅をすることによって、普遍化していくことがどうしても必要だと思いま...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
台湾有事を考える(1)中国の核心的利益と太平洋覇権構想
習近平政権の野望とそのカギを握る台湾の地理的条件
島田晴雄
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏

人気の講義ランキングTOP10
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(3)医療の大転換と日本の可能性
近代医学はもはや賞味期限…日本が担うべき新しい医療へ
鎌田東二
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
今井むつみ
編集部ラジオ2025(28)内側から見た日米社会の実状とは
島田晴雄先生の体験談から浮かびあがるアメリカと日本
テンミニッツ・アカデミー編集部
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
デカルトの感情論に学ぶ(1)愛に現れる身体のメカニズム
デカルトが注目した心と体の条件づけのメカニズム
津崎良典
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫