西洋文明の起源から見るグローバル化
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「アルケー」の意味とは?万物の根源を問うギリシア哲学
西洋文明の起源から見るグローバル化(5)哲学の起源
哲学と生き方
納富信留(東京大学大学院人文社会系研究科教授)
哲学というと、古代ギリシアで始まったのが常識になっている。しかし、世界中のどこでも哲学的な命題を考えることはあったはずだ。ではギリシアの特殊性はどのようなところにあり、どう受け継がれてきたのだろうか。始原を意味する「アルケー」、言葉や議論を指す「ロゴス」、彼らが生きた社会である「ポリス」について解説を進めながら、その問いに応えていく。(全6話中第5話)
時間:11分19秒
収録日:2019年5月29日
追加日:2019年8月1日
≪全文≫

●「哲学がギリシアで生まれた」は謎のある言明


 今回は西洋文明の起源をめぐって、いよいよ哲学について考えたいと思います。

 哲学= “philosophia”とギリシア語で呼ぶものは、紀元前6世紀の初めにタレスという、かなり象徴的な人物が始めたといわれています。しかし、そもそも「哲学がギリシアで生まれた」というのは、謎のある言明です。人間が生きている限り、どの世界にでも哲学はあるだろうし、宇宙のことや人間の生き死にについては、誰もが悩んでいると思われるからです。

 他方で、私たちが今日「哲学」と呼んでいるような形をつくったのは、やはり2400~2500年前のギリシア人でした。今日、大学で教えている哲学も、その形を受け継いで展開されているという意味では、ギリシアを外して哲学を考えるのは難しいというのが、今日の話のポイントになります。

 philosophia(哲学)というのは、ご存じのように「知を愛し、求める」という単語です。人間は、全てを既に知っている神と同じようなものではない。しかし、ずっと議論したり、研究を続けたりしていく中で、少しずつ本当の真理に近づいていく存在である。これが、「哲学」という単語のもとの意味です。

 では何を知っていくのかというときに、一つ提示されたのが「アルケー」という概念です。アルケーは「始まり、始源」という意味で、のちに「原理」と訳すこともあります。一番大元のものを知ることが大事であるし、大元のものを知ることでこの世界を理解したい。そうしないと、表面的なものをいくら集めても(それは膨大なデータを集めればいいわけですが)、真相は見えてこない。つまり、真理を知るということはアルケーをつかむことである。これが、ギリシア哲学がその当初から追求したプログラムの一つです。


●万物の根源をたずねた初期のギリシア哲学者


 タレスをはじめとする初期の哲学者たちは、非常にぶっ飛んだことをいいます。タレスは「万物の根源は水だ」と言う。全てのものの一番大元にあるのは水だ。なぜか。その理由は判明ではありませんが、生きる上で水の存在は非常に大きいし、地球上では海が大半を占めている。だから、水が一番根本にあるのではないかと考えたようです。

 同様のことは、いろいろに言えます。「火が一番重要だ」と言った哲学者もいるし、「空気が一番重要だ」と言った哲学者もいる。そうすると、何が...

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