西洋文明の起源から見るグローバル化
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
「アルケー」の意味とは?万物の根源を問うギリシア哲学
西洋文明の起源から見るグローバル化(5)哲学の起源
納富信留(東京大学大学院人文社会系研究科教授)
哲学というと、古代ギリシアで始まったのが常識になっている。しかし、世界中のどこでも哲学的な命題を考えることはあったはずだ。ではギリシアの特殊性はどのようなところにあり、どう受け継がれてきたのだろうか。始原を意味する「アルケー」、言葉や議論を指す「ロゴス」、彼らが生きた社会である「ポリス」について解説を進めながら、その問いに応えていく。(全6話中第5話)
時間:11分19秒
収録日:2019年5月29日
追加日:2019年8月1日
≪全文≫

●「哲学がギリシアで生まれた」は謎のある言明


 今回は西洋文明の起源をめぐって、いよいよ哲学について考えたいと思います。

 哲学= “philosophia”とギリシア語で呼ぶものは、紀元前6世紀の初めにタレスという、かなり象徴的な人物が始めたといわれています。しかし、そもそも「哲学がギリシアで生まれた」というのは、謎のある言明です。人間が生きている限り、どの世界にでも哲学はあるだろうし、宇宙のことや人間の生き死にについては、誰もが悩んでいると思われるからです。

 他方で、私たちが今日「哲学」と呼んでいるような形をつくったのは、やはり2400~2500年前のギリシア人でした。今日、大学で教えている哲学も、その形を受け継いで展開されているという意味では、ギリシアを外して哲学を考えるのは難しいというのが、今日の話のポイントになります。

 philosophia(哲学)というのは、ご存じのように「知を愛し、求める」という単語です。人間は、全てを既に知っている神と同じようなものではない。しかし、ずっと議論したり、研究を続けたりしていく中で、少しずつ本当の真理に近づいていく存在である。これが、「哲学」という単語のもとの意味です。

 では何を知っていくのかというときに、一つ提示されたのが「アルケー」という概念です。アルケーは「始まり、始源」という意味で、のちに「原理」と訳すこともあります。一番大元のものを知ることが大事であるし、大元のものを知ることでこの世界を理解したい。そうしないと、表面的なものをいくら集めても(それは膨大なデータを集めればいいわけですが)、真相は見えてこない。つまり、真理を知るということはアルケーをつかむことである。これが、ギリシア哲学がその当初から追求したプログラムの一つです。


●万物の根源をたずねた初期のギリシア哲学者


 タレスをはじめとする初期の哲学者たちは、非常にぶっ飛んだことをいいます。タレスは「万物の根源は水だ」と言う。全てのものの一番大元にあるのは水だ。なぜか。その理由は判明ではありませんが、生きる上で水の存在は非常に大きいし、地球上では海が大半を占めている。だから、水が一番根本にあるのではないかと考えたようです。

 同様のことは、いろいろに言えます。「火が一番重要だ」と言った哲学者もいるし、「空気が一番重要だ」と言った哲学者もいる。そうすると、何が...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
もののあはれと日本の道徳・倫理(1)もののあはれへの共感と倫理
本居宣長が考えた「もののあはれ」と倫理の基礎
板東洋介
老荘思想に学ぶ(1)力のメカニズム
老荘思想は今の時代に人類の指針となる
田口佳史
楽観は強い意志であり、悲観は人間の本性である
これからの時代をつくるのは、間違いなく「楽観主義」な人
小宮山宏
西洋哲学史の10人~哲学入門(1)ソクラテス 最初の哲学者
ソクラテス:「フィロソフィア」の意味を問う最初の哲学者
貫成人
今こそ問うべき「人間にとっての教養」(1)なぜ本を読むことが教養なのか
『人間にとって教養とはなにか』に学ぶ教養と本の関係
橋爪大三郎

人気の講義ランキングTOP10
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(2)『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏への道
『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏のすごさ…波へのこだわり
堀口茉純
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
大谷翔平の育て方・育ち方(1)花巻東高校までの歩み
大谷翔平の育ち方…「自分を高めてゆく考え方」の秘密とは
桑原晃弥
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は音楽と数学であふれている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
健診結果から考える健康管理・新5カ条(1)血管をより長く守ることが重要な時代
健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと
野口緑