世界哲学のすすめ
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「人間は世界内存在」ハイデガーに学ぶ哲学ならではの視点
世界哲学のすすめ(2)「世界」とは何か
納富信留(東京大学大学院人文社会系研究科教授)
世界哲学を考えるとき、まずは「世界」とは何か、その概念について考える必要がある。世界哲学は単に地球表面の人間世界だけでなく、全自然や宇宙などあらゆるものを対象とする。さらに、地理的なことだけでなく、時間的な「世」ということ、また世界内存在として世界に生きる私たち人間のことも同時に考えていくことになるのだ。(全9話中第2話)
時間:11分12秒
収録日:2024年9月6日
追加日:2025年1月22日
≪全文≫

●地球上の地域を指すだけではない「世界」


 世界哲学を考え始めようとするときに、まず必要なのは、このタイトルにある「世界」ということばです。世界と聞くと、日々当たり前に使っていると思うかもしれませんが、実はこれ自体けっこう複雑な概念で、昔から現在に至るまで哲学者が一つのテーマとして考えてきているものでもあります。

 世界哲学という名前を聞き、World Philosophyというと、地球上の地表面にあるさまざまな地域という意味でお取りになる方がほとんどだと思います。実際にそれは間違っていないし、そういう趣旨もあります。つまり、ヨーロッパや北アメリカだけでなく、地球上のさまざまな大陸や地域、あるいは島々のようなところも含めて、地球上全体で人類の運命全体を捉えていこうという趣旨が一つ、世界哲学というときには入ってきます。

 ですから、「世界哲学史」というプロジェクトで議論しているときも、やはりいろいろな地域やいろいろな時代から参加しましょうという意図がありました。その意味では、まずこの地球という一つのものの上の、いわば地表面全体を視野に入れましょうという意味が「世界」にはあります。日本・世界、あるいはアジア・ヨーロッパ・世界というときの世界です。これは一応地理的、空間的な把握ということになると思いますが、世界という概念自体はそれでは尽きないということになります。

 世界を指す単語には、例えばWorldがありますが、ギリシア語ではKosmosと世界を呼んでいました。Kosmosは秩序という意味で、ピタゴラスがこれを使い始めたといわれています。ご存じの方にはお分かりのように、これには宇宙という意味もあります。つまり、宇宙全体が一つの秩序である。そうすると、単に太陽系の第3惑星としての地球だけではなく、太陽系や銀河、宇宙全体を含めた全てということになるわけです。ですから、世界=万物という意味に使われることがよくあります。

 というよりも、哲学者はこういう意味でよく使います。ですから、哲学で「世界」という単語が出てきている場合、地球上のさまざまな大陸や島という意味ではなく、むしろわれわれが生きている全ての空間、そして時間が考えられています。そういう意味だとすると、世界哲学は単に地理的な概念だけでなく、むしろ全自然や宇宙などのあらゆるものを含んだ、いわば全てについて考えるという意味になろうかと...

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