●演説理解のために「ヘーゲル弁証法」を知る
ここからは、独立記念日演説の核心に迫りたいと思います。
まず、ラテン語に「Ordo Ab Chao」という言い回しがあり、英語訳は「Order out of Chaos」になります。つまり「カオスから生まれる秩序」というスローガンです。これはカトリックのスローガンでもあり、他の団体でも使われています。
これは、ヘーゲル弁証法の政治適用の例として挙げられますが、トランプ氏の戦略として、このスローガンの本質はかなり重要なものです。
ヘーゲルの弁証法では「テーゼ」と「アンチテーゼ」を見いだし、それらを止揚(統合)して「ジンテーゼ」に上昇させます。
まず、「テーゼ」というのは命題です。例えば現在の問題や敵などがこれに当たります。これに対して「アンチテーゼ」は反対命題で、対抗策や味方になります。これらを「止揚(上昇)」する、すなわちテーゼとアンチテーゼを闘争させて生まれるのが「カオス」で、「ジンテーゼ」(合)となります。これは、革命や新制度ということになります。
●今回の演説の要点と「ヘーゲル弁証法」
今回の演説の要点をヘーゲル弁証法から見ていくと、まず一番目に論理構成として、米国の偉大なる精神の発揚=米国例外主義をもってトランプ支持者をかなり扇動しています。そして、二番目に米国史におけるトランプ側の正当性の確認をします。つまり、民主党側との区別を明確にするのですが、ここで「選民思想」的なロジックが出てきます。
第三段階で、ヘーゲル弁証法が始まります。まず、敵対勢力の指名をするわけで、トランプ側にとって敵とは何かというと、「左翼文化革命」で、これがテーゼとして成り立ちます。第四に、対策案の明確化がなされます。これが、トランプ側の対策案としての「米国革命」で、アンチテーゼになります。
第五に、左翼文化革命vs米国革命からなる闘争というのが出てきます。これが止揚の段階で、カオスが出てくるわけです。まさに今、全国で行われている暴動が、この止揚の段階になります。第六に、「第二次米国革命」が出てきます。これはジンテーゼで、テーゼとアンチテーゼを融合させたものなのです。
●記念日演説にみる「米国の偉大なる精神の発揚」
それでは、演説の...