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再選を狙うトランプ大統領がラシュモア山を演説の場に選んだ背景

2020年度独立記念日演説と第2次米国革命(1)ラシュモア山を選んだ意義

東秀敏
米国安全保障企画研究員
情報・テキスト
4人の大統領
(ジョージ・ワシントン、トーマス・ジェファーソン、
セオドア・ルーズベルト、エイブラハム・リンカーン)
の彫像があるラシュモア山
2020年7月4日に行われたトランプ大統領の「独立記念日演説」が注目を集めている。トランプ大統領のメッセージはどういうもので、その意義とは何か。また、日本に対する含蓄はあるのだろうか。何だろうか。そして、トランプ氏が狙う再選への道にどうつながるのか。演説の場に選ばれたラシュモア山の歴史的背景とその意義から順を追って解説を進める。(全7話中第1話)。
時間:07:34
収録日:2020/07/29
追加日:2020/10/01
ジャンル:
≪全文≫

●「独立記念日演説」への三つの問題提起


 よろしくお願いします。米国安全保障企画の東秀敏と申します。本日は、2020年度7月4日に行われた「独立記念日演説」を説明したいと思います。特に、「第二次米国革命」という視点と、トランプ大統領が狙う再選への道にどうつながるのかに関して話していきたいと思います。そのために、まず三つの問題提起をします。

「トランプ大統領の2020年度の独立記念日演説の意義とは何か?」
「トランプ大統領のメッセージとは何か?」
「日本に対する含蓄は何か?」

これらの答えが出るよう説明していこうと思います。

 まず、要旨ですが、2020年度独立記念日演説がラシュモア山で行われたことは、米国の孤立主義的方向転換を象徴しています。演説の内容も、かなり抽象的な「米国第一主義」に固執し、ほぼ内政のみを語る内容でした。

 演説の核心は、トランプ陣営の採用している「カオスから生まれる秩序」という戦略が見事に披露されたことにあります。特に演説の論理展開自体が、「カオスから生まれる秩序」にのっとっていることにご注目ください。

 トランプ氏のメッセージは何かというと、「第二次米国革命」を実現する意思を表明したということです。日本に対してどういう意味があるのかというと、米国の本格的な孤立主義への転換に備えなければいけないということです。

 このシリーズでは、以下のポイントに即して説明していきます。まずラシュモア山を選んだ意義です。次に、主要メディアの偏向報道を見ていきます。そして、独立記念日演説の核心に迫りたいと思います。そして、第二次米国革命への舵取りがどう行われたのか、さらに民主党の対応、日本への含蓄と進めます。


●ラシュモア山の持つ歴史的意味合い


 まず、ラシュモア山を選んだ意義をお話ししましょう。ラシュモア山というのは、アメリカの観光ガイドブックに載っている山で、4人の有名な大統領の彫刻があります。ラシュモア山のあるエリアはサウスダコタ州というアメリカ中西部の田舎にあるのですが、その地域を「ブラックヒルズ(黒い丘)」と呼びますが、ここは「西漸運動」の栄光と悲劇を同時に内包する、米国の矛盾の象徴です。

 元来、インディアンの部族の抗争は何世紀にもわたって行われてきましたが、19世紀半ばまでにこのエリアを支配したのはスー族という部族です。同じ頃、白人がマジョリティを占めていた当時の米国では、白人勢力が西漸運動を遂行していきます。トーマス・ジェファーソンのルイジアナ買収をきっかけにして、このエリアに白人がどんどん入植するようになっていきます。

 連邦政府は、最初はここを「インディアン居留地」と認め、条約を交わします。ところが、その後すぐ、ちょうど南北戦争直後の時代になって、この地に金鉱が見つかりました。それでは、ということで謀略が駆使され、一度署名した条約が骨抜きにされ、戦争と虐殺により白人がこの地を強引に奪います。これは歴史的事実です。

 1925年、当時の大統領はウォレン・ハーディングの後継者カルビン・クーリッジでしたが、その意向により、1925年に白人至上主義団体KKK(クー・クラックス・クラン)会員のガストン・ボーグラムという人物が彫刻事業を請け負い、ジョージ・ワシントン、ジェファソン、テディー・ルーズベルト、エイブラハム・リンカーンを彫ることになりました。

 ここが問題なのですが、当時、彫刻のアイデアとしてあったのは「アメリカ西漸運動の象徴として位置付ける」ということでした。ところが彫刻家であるガストン・ボーグラムが、セオドア・ルーズベルトやウッドロウ・ウィルソン大統領と非常に親しい関係にあったのです。そこで、彼の独断により、ワシントン、ジェファソン、セオドア・ルーズベルト、リンカーンの4人が選ばれたわけです。


●トランプ大統領が演説の場にラシュモア山を選んだ意義


 1980年代には、最高裁がラシュモア山の接収を違憲と判断する決断をしました。そこで、連邦政府はインディアン側に「ディール(取引)」を持ちかけます。どのようなディールかというと、連邦政府によるインディアン側への賠償の申し入れです。ところが、インディアン側はそれをことごとく拒否します。「白人側は、このような歴史の悲劇をお金で解決しようとするのか」「インディアンという民族を軽視しているのか」という論理でした。そのため、連邦政府と原住民の対立は今でも続いています。

 そのラシュモア山を選んだドナルド・トランプ大統領が意義というのは、表向きには「独立記念日を祝福する最高の地」と言っていますが、敵対勢力に自分の理念や価値観...
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