●大統領選挙でのロシア疑惑について追及が進んでいる
トランプ大統領は、マイケル・フリンという補佐官がロシアの大使と少し付き合ったというのを言わなかったという理由で、煙が立っているからと辞めさせました。それで、フリン氏の捜査を止めるように、CIAの長官のジェームズ・コミー氏に圧力を掛けたら、抵抗したのでコミー氏を辞めさせる、ということになったのです。
2017年5月17日に、ロバート・モラー氏が司法省から特別検察官に任命されました。特別検察官はアメリカの司法制度の中でしっかりと地位が確立されています。形式的に任命するのは大統領ですが、大統領といえども簡単に辞めさせるといったことはできないのです。
この人はベトナム戦争の勇士で、国民的人気が高く、あまりに立派なFBI長官だったので、8年任期を10年にしてもらったほどです。そしてこの人が着実に調査を進め、さまざまな人の偽証罪が分かってきました。トランプ氏の選挙対策本部長だったり、トランプ氏の女性問題で出てきた話を隠させているマイケル・コーエンという弁護士であったり、フリン補佐官であったりと、すでに身動きが取れないほどの証拠で固めたので、彼らは司法取引に応じました。
つまりこのままいくとえらいことになるので、取引に応じるということです。そうすると、刑が3分の1ほどになるからです。その代わり、さまざまなことを言います。それが次第に固まってきました。(すでに提出されましたが、)モラー氏の最終報告はどのようなものなのでしょうか。
●トランプ大統領の弾劾はあり得るのか
そこでトランプ氏が弾劾されるのではないか、大統領を辞めさせられるではないか、という話があります。韓国のパク・クネ氏は大統領を辞めさせられましたが、あのような感じです。
アメリカは次のような手続きになっています。弾劾の訴追、すなわち「弾劾してください」と提案するのは、下院の機能です。下院において過半数で可決すると、それを上院が受けて、上院での裁判が行われます。最高裁長官が議長にして(議員が陪審員の役割を務め)、1件1件チェックを入れ、3分の2が有罪だということになると、弾劾になるのです。
2018年11月の中間選挙は、非常に重要な結果となりました。民主党が少数派だったのですが、193議席から41議席増やして234議席と、かなり多数派になりました。こうなると、弾劾訴追を決定できるのです。ナンシー・ペロシ下院議長は、「弾劾の選択はあり得る」と言っています。
ただ上院では、共和党がさらに勝利したので、トランプ大統領は下院の事態に目をつぶり、「大成功だ」と言っているのです。これがどういうことになるかは非常に重要な点です。
モラー氏のレポートが出てきます。そうすると、反国家的であまりに醜いトランプ氏の言動、女性スキャンダルやマネーロンダリングも全部含め、さまざまなことが表に出てくるでしょう。それを上院の議員がどう判断するかです。国民は議員の投票も見ていますから、あまりにひどいので支持できないという人が数人でも出てくると、トランプ氏が弾劾されてしまう可能性はあるのです。
●民主党は弾劾よりも次の大統領選で勝負する戦略をとり得る
そしてこの前、(メキシコとの国境につくる)壁の予算をどうするかという問題がありました。そこで上院で投票したのです。すると、それは国民の受けが悪いということで、上院の議員が4人造反したのです。ですから、弾劾の可能性はあるかもしれません。ただ、ペロシ議長は、弾劾してもトランプ氏の次にトランプ氏よりもっとガチガチのマイク・ペンス副大統領が出てくるのであまり面白くはないのです。
ですから、2年待ってトランプ氏を泳がせておいて大統領選でやっつけようというのが戦略らしい。ただ、大統領選でやっつけるといっても、求心力のある民主党の議員がいるのかなという感じです。ジョークで36人の候補者がいると言われていますが。
ただアメリカは1年半あると、新人でも大統領候補にできるらしい。トランプ氏もそうでした。
●急激に加熱した経済はインフレとスタグフレーションを引き起こし得る
トランプ政権の経済政策とアメリカ経済がどうなるかを少し考えてみたいと思います。
トランプ氏の政策には、経済政策が3つあるのです。それは、減税とインフラ投資と関税攻撃です。減税ですが、非常な減税です。今まで35パーセントだった法人税を21パーセントにしました。そして減税規模は、10年間で1.5兆ドルというのですから、日本円で約170兆円です。
これは何を意味するのでしょうか。今、アメリカ経済はほぼ完全雇用ということで加熱しています。加熱しているところに減税するということは、経済理論ではあり得ません。経済理論では、減税はデフレ・ギャップがある、すなわ...