●中国では経済成長が鈍化したためモデルの転換が必要
中国は成長が次第に鈍化しています。それは構わないのです。労働力制約によって成長が鈍化するのは当然です。中国は今二重のチャレンジをしています。一つは、鄧小平時代の途上型の発展モデルがもう使えないということです。つまり低賃金で外資を入れて、技術革新で輸出するというモデルです。
このモデルは、賃金が上がってきてしまったら成り立ちません。今中国では、鄧小平が改革をスタートした頃の20倍ぐらいの給料になっています。国民所得がすでに8,000ドルを超えています。そうなると中国に投資しても、安くありません。むしろ高いのです。ですから、外国にとって中国に投資するのは魅力がなくなってきています。
高度成長モデルが効かなくなります。そうなると、自主的にイノベーションで技術革新して、生産性を一気に上げなければいけない。日本は1960年代後半から80年代前半までそれをやったのです。だからできました。先進国にもなれました。それはチャレンジでした。しかし、先進国は時間がたつとどこの国も人口が減っていくのです。なんと中国はまだ先進国になっていないのに、人口が減り始めました。二重の重みを抱えているのです。
●中国で新たな世界的IT企業が生まれた
そこで習近平氏が、鄧小平型の成長ではない、「新常態」の経済で行こうと言いました。つまり「スピードは求めない、量は求めない、内実を整える」というのです。その習近平氏の期待を担うような大発展があります。これはもう深センに行っていただければ分かりますが、シリコンバレーを超える発展といわれています。
例えば、アメリカが調査したのですが、世界のイノベーション企業50のうち、騰訊控股(テンセント)は12番、華為(ファーウェイ)が45番、レノボが50番となりました。また、世界IT大手10社のうち、中国は4社入っているのです。Google、Amazon、Facebookに次いで、アリババ、テンセント、百度、京東集団が入っています。
よくアメリカなどで、ファーウェイやアリババなどのハイテク企業は共産党の手先ではないか、といった議論があります。しかしながら、少しこのアリババや、WeChatを手掛けているテンセントなどの会社の歴史をたどってみると全然違います。
アリババというのは、世間ではジャック・マーといわれている馬雲という人が会長です。この方は杭州市の英語教師で、仲介サイトをやったのですが、ネットバブルが崩壊して、大変な目に遭いました。その頃はeBayが圧倒的だったのです。そこでアリペイが、売る方も買う方も全く安心というモデルを開発して非常に頑張りました。それでeBayを撤退させたのです。
面白いのは、11月11日の独身の日(光棍節)があります。非常に大量の取引量なのです。この会社は最初オラクルやIBMのシステムを使っていたのですが、とてもこれではできないというので、分散型でオープンソースのようなものはないので、自分で開発しているのです。2年取り組んだらできたのです。涙の出るような話です。それを見て、政府が法律的にバックアップしてくれているのです。
テンセントもそのようなところがあります。最初はオンライン・コミュニケーションというイスラエルの会社を参考にして始めました。今はもうアプリのWeChatは世界200カ国でユーザー10億人です。WeChat関連の総合関連サービスも、本当に努力をして、有料会員制サービス、商品マネジャー制度、社内競馬制度などを導入しました。涙の出るような話です。それをようやく政府が認めるということです。
●中国経済には構造的な問題もある
ファーウェイはこういうことだったようです。会長が「任正非(レン・ツェンフェイ)」さんといいます。この創設者は一度、人民解放軍に入ったことがあります。
さらにいえば、そのお父さんが文化革命中に反革命分子でした。ですから、政治と距離を置いていたのです。そこで技術を頑張ったけど認められなかったのです。そこで深センでファーウェイという会社を起業したのです。最初はベランダで炊事をして、ご両親と同居して、市場で捨てられた野菜や死んだ海老などを買ってきて食べて命をつないだというような努力でここまで来ているのです。それは、後で、政府が認めているのです。こうした話はわれわれも知っていた方がいいと思い少し話しをしました。
このように頑張っているのですが、中国の構造問題がすさまじいのです。過剰設備、過剰生産、過剰債務、国有企業問題、不良債権。この過剰生産設備負債というのは、2008年にやった4兆元経済対策の後遺症です。これを克服するために市場原理を導入していこうということが、一時期相当盛んに言われたのですけど、今は逆行してしまったみたいです。
国営企業に力を付けようというこ...