●世界を変えたパクス・アメリカーナの転換
そこでこれからの世界はどうなるのか、その世界の中で日本はどうしたらいいのかということを、皆さんと考えていきたいと思います。
第2次世界大戦後の世界も決定的にアメリカ主導のシステムでやってきました。しかし、アメリカが歴史的にだんだん変化して、アメリカ自身が変質してくると、日本はアメリカが変質していても日米安保準拠でやっているのですが、これで果たしてこれからの世界に通用するのかということを考えたいですね。
アメリカは第2次世界大戦後、次のような背景がありました。アメリカは戦災を受けていません。しかも、もとから非常に力の強い国でした。GDPでいえば、終戦直後で世界の52パーセントぐらいをアメリカが占めていたようです。
アメリカは当時、民主党でしたが、民主党は大変理屈っぽい政党で、他の国々が疲弊しているとアメリカ自体が成長しませんから、つまりトレードができないからですが、そういうことで他の国々を支援するという考え方でした。
実は、それで日本をすごく支援してくれたし、ドイツも支援したのです。また、第1次世界大戦後にドイツを支援しなかったので、それによってヒトラー政権になってしまったという教訓もありました。
これを「パクス・アメリカーナ」といいます。アメリカには、金融ならIMF、経済発展なら世界銀行、貿易ならGATT、そして国連と、全て置きました。もっと大きいのは、アメリカは非常に富がありましたから、金本位制だったことです。
世界全体を相手にして、しかも固定為替レートです。ただ、変動為替だと経済が伸びれば為替レートが上がりますから競争力は落ちますが、固定為替だと競争力は伸び放題です。たちまちドイツと日本が発展するというようなことを許したのです。そういう状況の中で、日本はアメリカに依存して戦後をやってきているわけです。
ところが、アメリカもさすがにそれでは(経済を維持、発展)できなくて、二重の赤字がすごくなり、ニクソン大統領は1971年8月15日に電撃発表をします。私はたまたまシカゴ大学にいたのですが、シカゴ大学の先生とテレビを見ていたらニクソンさんが出てきて、「日本に対するアメリカの赤字がものすごいところに来ている。このままではやっていけない。だから今日8月15日に変動為替にする」と宣言したのです。
これに世界中が...