グローバル・サウスは世界をどう変えるか
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
防衛費を拡大した日本だが…自力安保への課題と厳しい現実
グローバル・サウスは世界をどう変えるか(9)日本の防衛力と自力安保への転換
島田晴雄(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
世界が多様化と多極化で混沌とする中、日本の安全保障政策はより高度に強力なものにする必要があり、自力で安全保障をするという「自力安保」への転換が求められている。しかし、それを実現するにはさまざまなハードとソフトの両面での改革が不可欠だ。最近は、戦闘機やミサイルの能力もそうだが、サイバー戦略はより重要だ。これに加えて日本で難題とされるのが法的な問題解決である。今回は具体的な防衛力の問題と防衛産業について解説する。(全10話中第9話)
時間:6分55秒
収録日:2024年2月14日
追加日:2024年5月29日
≪全文≫

●反撃能力の保有と運用についての課題


 次に皆さんと考えたいのは、自力で安全保障をするということです。そこで、反撃すべきということを、日本の政府与党もやりだしたわけですが、バイデンさんに予算を増やしてくれといわれると、日本もやるわけです。岸田さんは防衛3文書の改定にあたって、2022年から5年間で防衛費の総額を43兆円にするという方針を立てました。

 2022年度の予算は5.2兆円ですから、5年分で約25兆9000億円になるので、43兆円にすると15~17兆円ぐらいプラスしなければいけません。今のところ、まだ予算をどこから出すのかはっきりしませんが、大変な負担です。でも、いいことだと思います。

 与党の国防部会というものがあって、小野寺(五典)さんは安全保障調査会会長で、この人は大変素晴らしい防衛大臣だったのですけれど、ミサイルの発射の反撃のボタンをいつ押すかという議論になったのです。その時、公明党が、発射の条件を法的に明確にすべきだと主張して、小野寺さんは本当に頭を抱えて困ったのです。

 それで、反撃の中身は1000キロ飛ぶ中距離ミサイルといっていますが、今、自衛隊が持っているものは最大100キロしか飛ばないのです。これを改造するというのですけれど、何年もかかり、間に合いません。だから、トマホークを買うというのですが、トマホーク500本、すごい値段です。

 この前、石破茂さんと話していたら、あれは1990年の湾岸戦争で使ったもので、時速880キロだからすぐ撃ち落とされてしまうというのです。だから、日本は廃品セールを買うのかということですけれど、アメリカは最新型を渡しますといっていますので、よく分かりません。

 しかし、もっと重要なのは反撃の目標です。反撃の目標が分かっていなければ反撃できません。中国がゴビ砂漠に、最大の目標である沖縄の嘉手納基地の同規模模型をつくって爆撃練習をしています。

 そのようなことを日本はできませんが、反撃の目的は、本当に反撃することではなく、日本を攻撃したら手痛い目に遭うということを知らせるだけですから、日本が最新、最強の武器と運用システムを持っているということを示せばいいのです。これは、すぐその日のうちに敵に分かります。それでいいので、使わないほうがいいのです。それをどのようにやるのかということを真剣に考えるべきです。


●重要になってきたサイバー・ハイブ...


スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
日本人が知らないアメリカ政治のしくみ(1)アメリカの大統領権限
権限の少ないアメリカ大統領は政治をどう動かしているのか
曽根泰教
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉

人気の講義ランキングTOP10
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
西野精治
内側から見たアメリカと日本(5)ヒラリーの無念と日米の半導体問題
大統領選が10年早かったら…全盛期のヒラリーはすごすぎた
島田晴雄
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(4)全てをつなぐ密教の世界観
密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」
鎌田東二
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(7)不動産暴落と企業倒産の内実
不動産暴落、大企業倒産危機…中国経済の苦境の実態とは?
垂秀夫
歴史の探り方、活かし方(4)史実・史料分析:秀吉と秀次編〈上〉
史料読解法…豊臣秀吉による秀次粛清の本当の理由とは?
中村彰彦
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
人生100年時代の「ライフシフト概論」(3)キャリアの危機〈下〉
40代前半に訪れる「中年の危機」、鍵は「人生の成長戦略」
徳岡晃一郎