●反撃能力の保有と運用についての課題
次に皆さんと考えたいのは、自力で安全保障をするということです。そこで、反撃すべきということを、日本の政府与党もやりだしたわけですが、バイデンさんに予算を増やしてくれといわれると、日本もやるわけです。岸田さんは防衛3文書の改定にあたって、2022年から5年間で防衛費の総額を43兆円にするという方針を立てました。
2022年度の予算は5.2兆円ですから、5年分で約25兆9000億円になるので、43兆円にすると15~17兆円ぐらいプラスしなければいけません。今のところ、まだ予算をどこから出すのかはっきりしませんが、大変な負担です。でも、いいことだと思います。
与党の国防部会というものがあって、小野寺(五典)さんは安全保障調査会会長で、この人は大変素晴らしい防衛大臣だったのですけれど、ミサイルの発射の反撃のボタンをいつ押すかという議論になったのです。その時、公明党が、発射の条件を法的に明確にすべきだと主張して、小野寺さんは本当に頭を抱えて困ったのです。
それで、反撃の中身は1000キロ飛ぶ中距離ミサイルといっていますが、今、自衛隊が持っているものは最大100キロしか飛ばないのです。これを改造するというのですけれど、何年もかかり、間に合いません。だから、トマホークを買うというのですが、トマホーク500本、すごい値段です。
この前、石破茂さんと話していたら、あれは1990年の湾岸戦争で使ったもので、時速880キロだからすぐ撃ち落とされてしまうというのです。だから、日本は廃品セールを買うのかということですけれど、アメリカは最新型を渡しますといっていますので、よく分かりません。
しかし、もっと重要なのは反撃の目標です。反撃の目標が分かっていなければ反撃できません。中国がゴビ砂漠に、最大の目標である沖縄の嘉手納基地の同規模模型をつくって爆撃練習をしています。
そのようなことを日本はできませんが、反撃の目的は、本当に反撃することではなく、日本を攻撃したら手痛い目に遭うということを知らせるだけですから、日本が最新、最強の武器と運用システムを持っているということを示せばいいのです。これは、すぐその日のうちに敵に分かります。それでいいので、使わないほうがいいのです。それをどのようにやるのかということを真剣に考えるべきです。