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日本が必要なのは「軽武装・経済優先主義」からの大転換

グローバル・サウスは世界をどう変えるか(8)日本の新しい平和戦略

島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授
概要・テキスト
日本は戦後70年以上、日米安保の下で経済活動だけに注力してきた。そして1人当たりのGDPではアメリカと肩を並べるほどに急成長したものの、この「軽武装・経済優先主義」の代償として国民の安全保障への意識低下を招いた。だが、ロシアのウクライナ侵攻で目を覚ました日本は、国防政策を変更して緊張が高まる時代に対応しようとしている。今回は日本の新しい平和戦略を考える。(全10話中第8話)
時間:12:39
収録日:2024/02/14
追加日:2024/05/22
≪全文≫

●日米安保で思考停止に陥った日本


 今、これまでずっと戦後の世界史をアメリカ中心に見てきましたけれど、日本から見るとどう見えるのか、さっとレビューしてみたいと思います。

 日本は(1951年に)吉田首相がサンフランシスコで1人で日米安保に署名するのですが、そのあとずっと日米安保体制で、安全はアメリカに任せる、日本は経済に注力する、ということでやってきました。これを「軽武装・経済優先主義」といわれていますが、経済については大成功しています。復興も発展も成長もこのくらいでできた面があります。

 ただ、もう1つマイナスの面があると思います。そのようなことをやったため、ものすごく大きな代償を払っていると思います。なぜかというと、安全保障ということについての思考を、政府というよりは国民が停止しているからです。国民がそういうことを一切考えないということでは、政府は政策を作れません。

 どうしてそのようになったのでしょうか。前に、6カ国のグローバル・サウスの主要国の歴史を展望しましたが、それぞれいろいろな歴史があって苦労してそこまで来ているわけです。特にイランなどを見ると、「なるほど、ここまでになれば、アメリカを憎み、憎みきって、終局的に憎むところまでいってしまうのだろう」という感じがしました。

 では、日本を振り返ると何をやっているかということですが、歴史を振り返ると、世界最大、最強の国、国力が10倍だったアメリカに正面から連合艦隊で戦いを挑むという、とんでもないことをやったのは日本だけなのです。その代わり、木っ端みじんになり、原爆を2度も落とされて、およそ310万人もの民間人と軍人が死んでいる。徹底的に破壊されたという歴史があります。

 ところが、その後アメリカが日本を助けるというか、終戦直後のアメリカの国際戦略は、危険な日本から世界をどう守るかということだったそうです。ですから、日本弱体化戦略をやっていました。それを国務省は、冷戦になってきたという判断で(戦略を)がらっと変えるのです。

 それで、日本をむしろ冷戦時代の堤防として使ったほうが意味があるというので、徹底的に日本を助けるのです。それが、前に申し上げたようにアメリカの富を使って、金本位制だ、固定為替だ、ものすごい援助だ、日本が作ったものを全部買ってやる、ということで...
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