●「20世紀は戦争の世紀」、そして21世紀は再び戦争の時代へ
―― 本日ですが、小原雅博先生に、戦争や紛争が絶えない世界でわれわれはいったい何を考えて何ができるのか、市民の立場からどういうことができるのかということを軸に、お話をいただきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
小原 よろしくお願いします。
―― 最初に今回の講義ですが、まず、私たちは今どんな時代に生きているのかというところでお話をいただきたいと思っています。
小原 本当に難しい時代になってきたと思うのです。長い人類の歴史を振り返りますと、実は平和な期間というのは本当に短かったのです。「戦争と平和」とは、トルストイの言葉でもあるわけですけれど、「平和」とはいったい何なのだという議論をすると、悲観的には平和は、戦争と戦争の間の休戦期の、一時的な平和でしかないのだという見方もあるわけです。
少し時代をさかのぼると、「20世紀は戦争の世紀」といわれているわけですけれど、20世紀には第一次世界大戦があり、第二次世界大戦がありました。この2つの大きな大戦があって、その後に冷戦という時期はソ連とアメリカを中心とした東西の対立、核戦争の危機にキューバ危機というものがあったわけです。そうしたことを乗り越えて、冷戦が終結して、ソ連、あるいは共産圏といわれていた東欧諸国の社会主義体制がみな崩壊するわけです。
その後に生まれた(のが)アメリカ一極主義ですね。2つの超大国があったうちの1つが倒れて、基本的に自由で民主主義、かつ、市場経済といったパッケージの秩序というものが、世界を覆うかのようになり、当時フランシス・フクヤマというアメリカの非常に著名な哲学者は、これでもって人類の歴史は終わったのだと(いいました)。ベストセラーになります、『The End of History (and the Last Man) 』という本が象徴するように、われわれはこれから永続的な平和の時代に生きることになるのだというような、楽観的な予感が世界的な空気になった時代もあったわけです。
それが21世紀に入ると、皆さんご存じのように9.11が起こるわけです。今、戦争・紛争という話をしましたけれど、暴力には、テロという問題も非常に大きいわけです。そのテロが、アメリカという超...