戦前日本の「未完のファシズム」と現代
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
太平洋戦争はなぜ、誰が始めたのか…日本が戦った理由
戦前日本の「未完のファシズム」と現代(9)質疑応答編
片山杜秀(慶應義塾大学法学部教授/音楽評論家)
日本が真珠湾攻撃に至った経緯はどのようなものだったのか。アメリカの策略という説もあるが、責任の所在が曖昧であったことにもその要因がある。シリーズ最終話は講義後の質疑応答編として、太平洋戦争の開戦に関する二つの質問に答える。(2020年2月26日開催・日本ビジネス協会JBCインタラクティブセミナー講演「戦前日本の『未完のファシズム』と現代」より9話中9話)
時間:5分51秒
収録日:2020年2月26日
追加日:2020年8月11日
≪全文≫

●真珠湾攻撃はアメリカの戦略だったのか


―― 質問があります。太平洋戦争における真珠湾攻撃の際、空母が重要だったアメリカは、パールハーバーからすでに空母をほとんど避難させていたといわれています。つまり真珠湾攻撃は、アメリカの仕組んだ話だというのです。そういった説がいろいろありますが、実際にはどうだったのでしょうか。アメリカも当時はモンロー主義で、不戦という立場を取っていたため、日本をわざと誘導したのでしょうか。

片山 これについてはいろいろな議論があります。最近ではそうした考え方は一時期よりも強まっており、説得力のある議論が展開されています。

 ルーズベルトがいかに日本に先手を取らせるかと考えていたと言う点については、私もある程度同意します。しかし、アメリカの太平洋艦隊の状況の中で、空母がパールハーバーにいなかったのは空母が大事だったからだという議論については、疑問が残ります。証明するような材料もないのではないでしょうか。皆さんご存知の通り、あの時に空母は、近海に演習に出ていてパールハーバーにはいませんでした。そのため山本五十六は、お目当ての空母がいなかったため、しょげたといわれています。

 仮にあのときにパールハーバーに空母がいて、空母にもダメージを与えられたとしても、少し日本が自由にやれる時間が長くなっただけだったでしょう。終戦が昭和21(1946)年ごろに伸びた程度です。

 アメリカが戦略的に日本に手を出させたのだという説は、かなり説得力があると思います。ただし、空母の状況のような戦場の具体的な点まで含めると、疑問符がつきます。


●太平洋戦争の開戦を誰がどうやって決めて始まったのか


――  当時の制度として、天皇が専権的にものを決められない仕組みがあり、だから戦争の終結も、御聖断という形になった。それは理解できるのですが、スタートした時はどうだったか。例えば真珠湾攻撃です。これはどういう形で、誰が決めて、どうやって始まったのでしょうか。

片山 開戦の経過については、最近のものも含めてさまざまな研究があります。しかし共通していえるのは、アメリカは日米交渉によって、中国大陸における日本の権益から大幅に得ようとしていたという点です。それに対して日本の外交のスタンスは、明治以来の歴史経過から考えて、妥協することができませんでした。日本はかなり土壇場まで...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
ローマ史に学ぶ戦略思考~ローマ史講座Ⅳ(1)古代の持つ意義と重み
一神教もアルファベットも貨幣も全て古代に生まれた
本村凌二
近現代史に学ぶ、日本の成功・失敗の本質(1)「無任所大臣」が生まれた経緯
現代の「担当大臣」の是非は戦前の「無任所大臣」でわかる
片山杜秀
『江戸名所図会』で歩く東京~吉原(1)「苦界」とは異なる江戸時代の吉原
遊女の実像…「苦界?公界?」江戸時代の吉原遊郭の真実
堀口茉純
本当のことがわかる昭和史《1》誰が東アジアに戦乱を呼び込んだのか(1)「客観的かつ科学的な歴史」という偽り
半藤一利氏のベストセラー『昭和史』が持つ危険な面とは?
渡部昇一
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国時代、民衆にとっての課題は生き延びること
黒田基樹
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之

人気の講義ランキングTOP10
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
プロジェクトマネジメントの基本(2)プロジェクトの複雑性とマネジメント
コスパが鍵!? 顧客満足につながる品質マネジメントとは
大塚有希子
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
健診結果から考える健康管理・新5カ条(1)血管をより長く守ることが重要な時代
健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと
野口緑
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ