戦前日本の「未完のファシズム」と現代
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
攘夷思想を強める契機となったのはコレラと天然痘の流行
戦前日本の『未完のファシズム』と現代(4)西洋のイメージと攘夷思想
片山杜秀(慶應義塾大学法学部教授/音楽評論家)
明治維新の根本には尊王攘夷思想がある。攘夷思想を強める契機となったのは、コレラと天然痘が西洋から入ってきたことである。これによって、西洋人への負のイメージが醸成され、国力を高めていくエネルギーとなっていった。(2020年2月26日開催・日本ビジネス協会JBCインタラクティブセミナー講演「戦前日本の『未完のファシズム』と現代」より9話中4話)
時間:6分29秒
収録日:2020年2月26日
追加日:2020年7月7日
≪全文≫

●明治維新の鍵は尊王攘夷思想にあった


 次に、国力問題についてお話ししたいと思います。

 明治維新後の日本の立ち位置を考えてみましょう。非常に乱暴な言い方をすると、幕末の日本は、後に近代国家の国民をつくることになる様々な階層の人間を、尊王攘夷という思想によって気持ちを一つにし、明治維新を成功させることが試みられました。単純にこう言うと語弊もあるのですが、取りあえずは攘夷思想によって国民を一枚岩にすることが幕末の狙いだったのです。

 奇兵隊や、農民、博徒、商人等、いろいろな立場の人が攘夷のために天皇のもとに集まり、それを阻むものをやっつけるという形で、武士そっちのけで幕末の戦いが始まり、新しい時代が始まっていきました。吉田松陰や高杉晋作、それに続く伊藤博文や山縣有朋たちの考えが、幕末の段階で示されたのです。


●攘夷につながるもとになったのはコレラと天然痘の流行


 攘夷について、ここで一つ付け加えておきます。余計なことかもしれませんが、攘夷というのは、当初から思想によって一枚岩であったというわけはありませんでした。皆さんがマスクをしている今の時代に生きていることを踏まえていうと、当時はコレラと天然痘が非常に大きな役割を果たしたのです。

 コレラと天然痘は、開国して西洋の船が多く入ってくるようになってから日本でも流行りました。コレラはそれ以前からも流行っていましたが、引き金となったのはペリー来航以後の幕末に、アメリカ人やイギリス人が上海経由でやってきて、中国で流行っているコレラを日本に持ち込んだことです。これによってコレラが大流行し、一般の日本人の西洋イメージは、すごく悪くなりました。こうした病気は、西洋人が持ってきているのだというイメージができてしまったのです。


●西洋人に対する悪いイメージが付与され、攘夷のエネルギーに


 もともと西洋のイメージは決して悪くなかったのですが、幕末期になると錦絵等で西洋人が病気を持つ人のように描かれるなど、悪いイメージを付与されるようになりました。鼻が肥大して疱瘡があるような、怖い姿で描かれるようなことが増えました。ペリー来航以前は、そんなことはありませんでした。

 天然痘やコレラは、何度も何度も日本を襲いました。文久、安政、万延の時代もそうです。例えば、「東海道五十三次」の歌川広重が亡くなったのも、コレラが...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
本当のことがわかる昭和史《1》誰が東アジアに戦乱を呼び込んだのか(1)「客観的かつ科学的な歴史」という偽り
半藤一利氏のベストセラー『昭和史』が持つ危険な面とは?
渡部昇一
「武士の誕生」の真実(1)10世紀の東アジア情勢と「王朝国家」
「王朝国家」と「武士」が誕生した理由は大唐帝国の解体
関幸彦
ローマ史に学ぶ戦略思考~ローマ史講座Ⅳ(1)古代の持つ意義と重み
一神教もアルファベットも貨幣も全て古代に生まれた
本村凌二
徳川将軍と江戸幕府~徳川家斉(1)家斉が長期政権を維持できた理由
11代将軍・徳川家斉が50年もの長期政権を築けた理由
山内昌之
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国時代、民衆にとっての課題は生き延びること
黒田基樹
近現代史に学ぶ、日本の成功・失敗の本質(1)「無任所大臣」が生まれた経緯
現代の「担当大臣」の是非は戦前の「無任所大臣」でわかる
片山杜秀

人気の講義ランキングTOP10
内側から見たアメリカと日本(6)日本企業の敗因は二つのオウンゴール
日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた要因はオウンゴール
島田晴雄
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(5)『秘蔵宝鑰』が示す非二元論的世界
雄大で雄渾な生命の全体像…その中で点滅する個々の生命
鎌田東二
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
西野精治
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(7)不動産暴落と企業倒産の内実
不動産暴落、大企業倒産危機…中国経済の苦境の実態とは?
垂秀夫
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
古代中国の「日常史」(1)日常史研究とは何か
『古代中国の24時間』英雄だけでなく無名の民に注目!
柿沼陽平
戦国武将の経済学(1)織田信長の経済政策
織田信長の経済政策…楽市楽座だけではない資金源とは?
小和田哲男