戦前日本の「未完のファシズム」と現代
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
東条英機が開戦後に気がついた大日本帝国憲法の欠陥
戦前日本の『未完のファシズム』と現代(3)戦時の機能不全
片山杜秀(慶應義塾大学法学部教授/音楽評論家)
明治憲法下で確立した天皇を中心とする分権システムはある程度有効だったが、戦争時のような緊急事態で、ついに機能不全に陥った。東条英機は開戦後に明治憲法の欠陥に気がつき、内閣総理大臣と参謀総長を兼務するようになるのだが…。(2020年2月26日開催・日本ビジネス協会JBCインタラクティブセミナー講演「戦前日本の『未完のファシズム』と現代」より9話中3話)
時間:10分40秒
収録日:2020年2月26日
追加日:2020年6月30日
≪全文≫

●大日本帝国の軍隊は文字通り「皇軍」だった


 次に、日本の軍事力についてお話しします。軍事力は現在でも、国の存在感を表します。戦後の日本は少し変わりましたが、陸軍・海軍が重要な時代の中で、大日本帝国の陸軍・海軍は、非常に独立した存在でした。これも明治憲法によって定められていたのですが、統帥権の独立が謳われていたのです。陸軍・海軍は、内閣や議会から全く支配を受けていませんでした。

 現在の自衛隊は、文民統制(シビリアンコントロール)が実践されており、内閣の管理下に置かれています。これは小学校の歴史の授業のようで、そんな初歩的なことは言うなよとご立腹の方もいるかもしれません。しかし、念を押すために一応言っておくと、現在、「党の軍隊」(中国共産党と人民解放軍など)というものも国によってはありますが、大日本帝国の陸軍・海軍は「皇軍」、つまり天皇の軍隊と言われています。これはただのキャッチフレーズではなく、実質的にそうでした。

 つまり、大日本帝国の軍隊は、天皇の名の下に独立した決定を行っていたのです。陸軍は参謀本部の参謀総長が、一応、実際の行動に関する権限を持っていました。正確にいえば、参謀総長が軍隊を全て取り仕切れるわけではなく、分権になっていました。とはいえ基本的には、陸軍参謀本部が存在し、そこで独立した指揮が行われていました。


●海軍は総理大臣らに戦況を報告する義務を持たなかった


 海軍にも海軍軍司令部があり、そこには連合艦隊司令長官がいました。海軍は決戦が求められるため、陸軍のように常に分隊を編成してはいられません。統合的な運用を常に考えておかないと、大艦隊の決戦の際にコンビネーションがうまくいかないのです。そのため、連合艦隊を組織し、一緒に練習が行われていました。連合艦隊司令長官は、海の上にいたため、陸の上の軍令部が何を命令しても、結局その場で決めることが多いという状況でした。そのため、連合艦隊司令長官が最も偉いという神話まで生まれました。

 海軍にはそうした連合艦隊司令長官がおり、海軍軍令部があり、陸軍には参謀総長がいました。参謀総長と軍令部総長の上には内閣総理大臣も誰もおらず、天皇陛下がいるだけです。天皇陛下に対しては、一応正確に報告する義務はあります。しかし内閣総理大臣等に対しては、戦争の時も報告する義務はありません。法律的にも憲法的...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
ローマ史に学ぶ戦略思考~ローマ史講座Ⅳ(1)古代の持つ意義と重み
一神教もアルファベットも貨幣も全て古代に生まれた
本村凌二
本当のことがわかる昭和史《1》誰が東アジアに戦乱を呼び込んだのか(1)「客観的かつ科学的な歴史」という偽り
半藤一利氏のベストセラー『昭和史』が持つ危険な面とは?
渡部昇一
明治維新から学ぶもの~改革への道(1)五つの歴史観を踏まえて
明治維新…官軍史観、占領軍史観、司馬史観、過誤論の超克
島田晴雄
最初の日本列島人~3万年前の航海(1)日本への移住 3つのルート
最初の日本列島人はいつ、どうやって日本に渡ってきたのか
海部陽介
徳川将軍と江戸幕府~徳川家斉(1)家斉が長期政権を維持できた理由
11代将軍・徳川家斉が50年もの長期政権を築けた理由
山内昌之
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦

人気の講義ランキングTOP10
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
今井むつみ
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
AIとデジタル時代の経営論(6)暗黙知と判断力
AIは「暗黙知・常識に基づく高度な判断」が不得意
一條和生
編集部ラジオ2025(27)なぜ何回説明しても伝わらない?
なぜ伝わらない?理解の壁の正体を今井むつみ先生に学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦