徳川将軍と江戸幕府~徳川家斉
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
11代将軍・徳川家斉が50年もの長期政権を築けた理由
徳川将軍と江戸幕府~徳川家斉(1)家斉が長期政権を維持できた理由
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
江戸幕府11代将軍・徳川家斉は約50年にわたる安定した長期政権を築いた。その要因として、山内昌之氏は4つの点を挙げる。中でも注目したいのは、「自分の血(子ども)を全国に行きわたらせた」点である。このようなことを行った背景や理由、またそれに伴うマイナス面などを詳しく解説する。(全4話中1話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
時間:13分03秒
収録日:2020年12月14日
追加日:2023年7月26日
≪全文≫

●50年間も権力のトップであり続けた徳川家斉


―― 山内先生、今日は11代将軍・徳川家斉の、1787年から1837年までの50年にわたる治世を、特に田沼意次を罷免して松平定信を老中に任命するあたりから、教えていただければと思います。

山内 人間が今でも50年間(大御所時代は3年間だったので、それを併せて53年間)も現役で、しかも権力のトップにいるのは大変なことです。

―― すごいことですね。

山内 世界史で見ても稀有なことです。家斉以外、あまり思い当たらないと思います。それができ得たのは、一にも二にも家斉が健康だったということです。

 それから二つ目には、彼は若くして、15歳くらいで将軍になっている。そして、意外と長寿ではありませんでした。古稀(70歳)の手前、あと一年経てば“人生古来、稀なり”の古稀になったのだけれど、69歳まで生きている。その間、事実上、権力のトップにあり続けた。ですから、彼がやはり健康であったということが一つあります。

 それから、どんなに健康であっても根本的なところで、権力のトップとはいえ勘が狂ったり、判断力が鈍ったり、物事の軽重を忘れたり、いろいろなことで失敗する人間が多いものです。ですが、家斉がすごいと思う三つ目として、彼の政治能力がどういうものであったかということがある。今回のシリーズでもこれから議論すると思いますが、そのときどきに見合った老中たち、宰相たちを起用して、その時代と自分の今いるポジションを的確に理解し、宰相に任せるという構造を取っていきました。しかし、肝心の政策決定は自分が握っていた。

 考えて見ると、最初に選んだのは松平越中守定信(寛政の改革)、それから最後は沼津の城主だった水野忠成(みずの・ただあきら)で、2人は全然性格が違います。この水野は、田沼と並ぶほど腐敗や汚職の徒と言われているのだけれど、そういった人物に至るまで適格に、時代の要請、あるいは自分の問題関心に合わせるかたちで変わることができた。そのような判断力がありました。


●自分の血統で天下に血を分けていく


山内 それから四番目として、これは極端に語られるけれど、家斉ほど政治(公的生活)と大奥(私的生活)という空間を巧みに利用して政治を行い、かつ人生もエンジョイした人間は稀有だということです。

―― すごい話ですね。

山内 それは全くの純粋な享楽や快楽だけのため...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
古代中国の「日常史」(1)日常史研究とは何か
『古代中国の24時間』英雄だけでなく無名の民に注目!
柿沼陽平
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
明治維新から学ぶもの~改革への道(1)五つの歴史観を踏まえて
明治維新…官軍史観、占領軍史観、司馬史観、過誤論の超克
島田晴雄
『昭和16年夏の敗戦』と『昭和23年冬の暗号』
『昭和16年夏の敗戦』『昭和23年冬の暗号』が映す未来とは
猪瀬直樹
最初の日本列島人~3万年前の航海(1)日本への移住 3つのルート
最初の日本列島人はいつ、どうやって日本に渡ってきたのか
海部陽介
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男

人気の講義ランキングTOP10
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
編集部ラジオ2025(27)なぜ何回説明しても伝わらない?
なぜ伝わらない?理解の壁の正体を今井むつみ先生に学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(2)量子論と空海密教の本質
脳内の量子的効果――ペンローズ=ハメロフ仮説とは
鎌田東二
内側から見たアメリカと日本(2)アメリカの大転換とトランプの誤解
偉大だったアメリカを全否定…世界が驚いたトランプの言動
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
今井むつみ
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(1)ソニー流の多角化経営の真髄
ソニー流「多角化経営」と「人的資本経営」の成功法とは?
水野道訓
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(2)「ほめる」技術
男性は「ほめる」のが苦手?傾聴から始まる「ほめる」技術
三谷宏治
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史