源氏将軍断絶と承久の乱
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
後鳥羽上皇の親王を将軍に推戴する…実朝の奇想天外な名案
源氏将軍断絶と承久の乱(8)親王将軍推戴構想
歴史と社会
坂井孝一(創価大学文学部教授/博士(文学))
唐船による渡海の夢が破れた後、源実朝は奇想天外の策を思いつく。子のなかった彼は、後鳥羽上皇の親王を将軍にいただき、後継者問題を解決するとともに、幕府の権威を高めようと考えたのである。この構想は後鳥羽上皇側にも北条側にも有利であったため、プロジェクトは実現に向けて着々と進んでいく。(全12話中第8話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:8分18秒
収録日:2022年7月13日
追加日:2022年10月30日
≪全文≫

●奇想天外の「親王将軍」推戴構想


坂井 このように、非常に将軍権力は増大しているのですが、(唐船により)はっきり言うと、少しケチがつきました。ここをなんとか乗り切らなければいけません。

 そのために(源)実朝が打ち出した奇想天外の策があります。これは同時に、子供が生まれなくて後継者がいなかった実朝の解決策としては、いろいろな意味で名案だと言えるものです。

 後継者に(源)頼家の血を引く者や、源氏の他の一門などではなく、自分と非常に関係の深い後鳥羽上皇の親王をもらってこようというものです。

 親王は格が高いですから、それを将軍として推戴する。親王は鎌倉のことも、武士の政権のことも、何も知りませんから、実朝が補佐する。そういうかたちで後継者問題を解決し、幕府の権威も高めようという策を、おそらくは建保5(1217)年の末に実朝が打ち出したと思われます。

 同じ建保5年の4月に唐船の進水に失敗しています。その後、この策を練り、かつ有力御家人たちの首脳部に伝えたのだと思います。

―― 本当に直後というお見立てですね。

坂井 そういうふうに私は考えています。後継者については、建保5年の時点で(実朝は)26歳になっていますから、御台所と結婚してすでに13年ぐらい経っています。

 それで子供ができていないこと自体が当時としては非常に不思議であるし、実朝は「妾(しょう)」と呼ばれた側室をとりませんでした。 おそらく御台所が後鳥羽上皇のいとこであるということが関係していると思います。後鳥羽上皇と非常に親密な関係にあるにもかかわらず、側室をとるということには、やはり、はばかりがあったのでしょう。


●「女人入眼」…日本では事柄を最後に成し遂げるのは女性だ


坂井 さらに、本来であれば上皇のいとこと自分の血を継いだ者が次の将軍になるべきであって、(源)頼家の子供ではない、ましてや他の源氏ではない、というふうに考えていたはずなのです。しかし、子供ができないのは、しょうがないことです。

 ということで、(親王を将軍に推戴するというのは)奇策と言っていいですよね。そして、反対は、なかなかしづらいわけです。親王が来るということは、幕府の権威が極めて高まることになりますから。

 それで、建保6(1218)年(1月)に政所で審議があります。ちゃんとした公的な立場ではありませんが、実の母であ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
概説・縄文時代~その最新常識(1)縄文時代のイメージと新たな発見
高校日本史で学んだ縄文時代のイメージが最新の研究で変化
山田康弘
モンゴル帝国の世界史(1)日本の世界史教育の大問題
なぜ日本の「世界史」はいびつなのか…東洋史と西洋史の違い
宮脇淳子
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男
『三国志』から見た卑弥呼(1)『魏志倭人伝』の邪馬台国
異民族の記述としては異例な『魏志倭人伝』と邪馬台国
渡邉義浩
「集権と分権」から考える日本の核心(1)日本の国家モデルと公の概念
日本は集権的か分権的か…地理と歴史が作る人間の性質とは
片山杜秀

人気の講義ランキングTOP10
続・日本人の「所得の謎」徹底分析(1)各国の財政と国民負担
日本と各国の比較…税負担は低いが社会保障の負担は高い
養田功一郎
経験学習を促すリーダーシップ(2)経験から学ぶ力
米長邦雄のアンラーニング、弟子の弟子になってV字成長
松尾睦
海底の仕組みと地球のメカニズム(1)海底の生まれるところ
地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か
沖野郷子
数学と音楽の不思議な関係(4)STEAM教育でつくる喜びを全ての人に
世界で最もクリエイティブな国は? STEAM教育が広がる理由
中島さち子
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
「集権と分権」から考える日本の核心(5)島国という地理的条件と高い森林率
各々の地でそれぞれ勝手に…森林率が高い島国・日本の特徴
片山杜秀
未来を知るための宇宙開発の歴史(9)宇宙開発を継続するための国際月探査
「国際月探査」とは?アルテミス合意と月探査の意味
川口淳一郎
第2の人生を明るくする労働市場改革(1)日本の労働市場が抱える問題
シニアの雇用、正規・非正規の格差…日本の労働市場の問題
宮本弘曉
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(4)百年後の日本人のために
百年後の日本人のために、共に玉砕する仲間たちのために
門田隆将
「アカデメイア」から考える学びの意義(2)プラトンの学園アカデメイア
プラトン「アカデメイア」の本質は自由な議論と哲学的探究
納富信留