源氏将軍断絶と承久の乱
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後鳥羽上皇の親王を将軍に推戴する…実朝の奇想天外な名案
源氏将軍断絶と承久の乱(8)親王将軍推戴構想
坂井孝一(創価大学文学部人間学科 教授)
唐船による渡海の夢が破れた後、源実朝は奇想天外の策を思いつく。子のなかった彼は、後鳥羽上皇の親王を将軍にいただき、後継者問題を解決するとともに、幕府の権威を高めようと考えたのである。この構想は後鳥羽上皇側にも北条側にも有利であったため、プロジェクトは実現に向けて着々と進んでいく。(全12話中第8話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:8分18秒
収録日:2022年7月13日
追加日:2022年10月30日
≪全文≫

●奇想天外の「親王将軍」推戴構想


坂井 このように、非常に将軍権力は増大しているのですが、(唐船により)はっきり言うと、少しケチがつきました。ここをなんとか乗り切らなければいけません。

 そのために(源)実朝が打ち出した奇想天外の策があります。これは同時に、子供が生まれなくて後継者がいなかった実朝の解決策としては、いろいろな意味で名案だと言えるものです。

 後継者に(源)頼家の血を引く者や、源氏の他の一門などではなく、自分と非常に関係の深い後鳥羽上皇の親王をもらってこようというものです。

 親王は格が高いですから、それを将軍として推戴する。親王は鎌倉のことも、武士の政権のことも、何も知りませんから、実朝が補佐する。そういうかたちで後継者問題を解決し、幕府の権威も高めようという策を、おそらくは建保5(1217)年の末に実朝が打ち出したと思われます。

 同じ建保5年の4月に唐船の進水に失敗しています。その後、この策を練り、かつ有力御家人たちの首脳部に伝えたのだと思います。

―― 本当に直後というお見立てですね。

坂井 そういうふうに私は考えています。後継者については、建保5年の時点で(実朝は)26歳になっていますから、御台所と結婚してすでに13年ぐらい経っています。

 それで子供ができていないこと自体が当時としては非常に不思議であるし、実朝は「妾(しょう)」と呼ばれた側室をとりませんでした。 おそらく御台所が後鳥羽上皇のいとこであるということが関係していると思います。後鳥羽上皇と非常に親密な関係にあるにもかかわらず、側室をとるということには、やはり、はばかりがあったのでしょう。


●「女人入眼」…日本では事柄を最後に成し遂げるのは女性だ


坂井 さらに、本来であれば上皇のいとこと自分の血を継いだ者が次の将軍になるべきであって、(源)頼家の子供ではない、ましてや他の源氏ではない、というふうに考えていたはずなのです。しかし、子供ができないのは、しょうがないことです。

 ということで、(親王を将軍に推戴するというのは)奇策と言っていいですよね。そして、反対は、なかなかしづらいわけです。親王が来るということは、幕府の権威が極めて高まることになりますから。

 それで、建保6(1218)年(1月)に政所で審議があります。ちゃんとした公的な立場ではありませんが、実の母であ...

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