徳川将軍と江戸幕府~家慶と烈公斉昭
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烈公の光と影…徳川斉昭のビジョンと政治家としての資質
徳川将軍と江戸幕府~家慶と烈公斉昭(2)家慶が比較された徳川斉昭の実像
12代将軍・徳川家慶にとって常に意識せざるを得ない存在、それは水戸藩主の徳川斉昭だった。斉昭は非常にスケールの大きな政治家で、ビジョンや理想を描き、実際に北海道開拓に乗り出すなどを行った。だが、斉昭はこのような良い面ばかりではなかったと山内氏は語る。一見優れた政治家に見える斉昭の実像とは――。(全4話中2話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
時間:7分59秒
収録日:2021年3月8日
追加日:2023年10月10日
≪全文≫

●家慶にとって忌々しい存在だった徳川斉昭


山内 したがって、徳川斉昭の存在は、常に徳川家慶にとってはある面で忌々しいものがあったのです。

 何が忌々しいか。これは水野越前守忠邦老中が言ったそうです。上様(家慶)は天保の改革を行っていて、大変な改革を進めているわけです。そういった点でいうと、徳川吉宗、松平定信の2人は徳川の一族で、それに続けて「自分(家慶)も、一族の先達である吉宗と松平定信に並んで改革を行っている」という意識があるわけです。

 そのように天保の改革の推進者としての意識があるわけで、評価される面もある。でも、何をやっても斉昭と比較されたのです。そして、実は家慶が手を付け、水野忠邦が進めたような改革も、「あれは水戸様の後追いだ、水戸様の模倣だ、真似をしていらっしゃるのだ」と捉えられる。家慶にとっては実に心外で、いろいろと(胸に)つかえてくるものがあるわけです。

 斉昭という人は、 これは後から話になると思いますが、今でいう、いわゆる「空気が読めない」ところがあるのです。言うことは間違っていない、非常に正しいのだけれど、言うにしても「そのような言い方はないでしょう」「場所というものがあるだろう」といったように、TPOをほとんど欠いた人なのです。

 だから、理想を語るのです。「言うだけ番長」という言葉がありますが、大きいことを言う、知ったかぶりを言う、理想を語る。それは素晴らしいわけです。でも、「それを実現する術は?」「財源は?」というと、十分にない。そのような政治家は、過去から現在にかけて、やはりタイプとしているわけです。


●理想は語るが、実現に至るプロセスの考えがない


山内 そういった点でいうと、斉昭のようにスケール感のある政治家はいません。例えば、斉昭は何を構想するか。「北海道」という名前をつけたのは、伊勢出身の探検家・松浦武四郎ということになっている。ところが、松浦よりも早く、斉昭がすでに「北海道」という名前を提言しているのです。

 斉昭に話をシフトしますが、斉昭は北海道を開拓しようとする。これは2つ理由があります。まず、このような要所の国防、安全保障です。特にロシアという強力な国が南下してくる。それに対して、支えているのは松前の小藩(小さい藩)です。松前藩は、最初はいわゆる「無高(むだか)」といって幕藩体制史上、あり得ないような...

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