徳川将軍と江戸幕府~阿部正弘編
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
阿部正弘は理想的政治家なのか…その能力と評価の真相
徳川将軍と江戸幕府~阿部正弘編(4)政治家としての評価
「阿部正弘こそまさに理想的政治家」と評価する人もいるが、では阿部正弘は「中庸」の人といえるのか。開国の決意を胸に秘めながら、現実にはその大きなブレーキとなる徳川(水戸)斉昭を幕閣に招き入れた阿部正弘。その八方美人的な身の処し方からは、「郷原」の疑いも感じられるが、実際に何をなしたか政治的に分析していくと、現代にも通じる「狷者」としてのふるまいが浮かんでくるが…。(全5話中第4話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
時間:9分47秒
収録日:2021年3月29日
追加日:2024年3月30日
≪全文≫

●阿部正弘は狂者なのか、狷者なのか、それとも郷原なのか


山内 このように考えていくと、阿部正弘とは何だろうという点はどう思いますか。

―― 阿部正弘は徳川(水戸)斉昭に気に入られ、松平春嶽にも島津斉彬にも気に入られ、大奥にも気に入られた。そして、改革派の若手にもそれなりに人気がある。けれど、阿部正弘が去った後の人たち、堀田正睦や安藤信正や井伊直弼がみんな大変な目に遭っているというのは、確かにいわれる通りですね。

山内 やはり水戸斉昭という、現実政治にはかなりそぐわない面も持っている人物、全部そぐわないというわけではないが、そぐわない面を持つ人間を幕府の中に入れたのが、政治家としては致命的とはいわないまでも、かなり人の見る目によって評価が違うことだと思います。

 私からすると、彼はとうてい成り立たないことをやった。阿部正弘は開国というようなことまで決意して、幕府の通商貿易というようなところまで踏み込む意思でいました。しかし、その一番ブレーキになったのは誰かというと水戸斉昭ですからね。

―― そうでしょうね。

山内 そういう点について今日は十分に話ができないですが、阿部正弘がどういう人だったのかというのは非常に面白い問題です。

 そうすると、この類型の中で、神藏さんはどのあたり(だと思いますか)。

―― これは、やはり厳しくいえば4番目の郷原の人になってしまいますね。

山内 郷原。

―― 狂者でもない。

山内 けれど、一般的に皆さんは、阿部正弘のことを「中庸の徒」だというイメージを持ちがちですね。

―― はい。大奥でも人気があったように、たぶん今の言葉でいえば、たいへんイケメンの人ですよね。

山内 そうです。私はまだ少し考えていて答えを出せないでいるのですが、こうやって見ていくと阿部正弘がこのような総合力として達観したものを持っていたかどうか、やや疑わしいような気がしてきました。

 ただし、もちろん阿部正弘は狂者ではない。そうかといって、阿部正弘が郷原かというと、それは酷ではないか。阿部正弘が決断しなければ進まなかった面がいろいろあり、実際に幕府政治を動かしていった。何よりもペリーの国書を受け取り、次の年に和親条約を結んでいくという第一の決断をした。

 いろいろ阿部正弘のビヘイビア(behavior:行動・態度)を見ていくと、私はやはり3番目の狷者で...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之
ローマ史に学ぶ戦略思考~ローマ史講座Ⅳ(1)古代の持つ意義と重み
一神教もアルファベットも貨幣も全て古代に生まれた
本村凌二
近現代史に学ぶ、日本の成功・失敗の本質(1)「無任所大臣」が生まれた経緯
現代の「担当大臣」の是非は戦前の「無任所大臣」でわかる
片山杜秀
徳川将軍と江戸幕府~徳川家斉(1)家斉が長期政権を維持できた理由
11代将軍・徳川家斉が50年もの長期政権を築けた理由
山内昌之
明治維新から学ぶもの~改革への道(1)五つの歴史観を踏まえて
明治維新…官軍史観、占領軍史観、司馬史観、過誤論の超克
島田晴雄
最初の日本列島人~3万年前の航海(1)日本への移住 3つのルート
最初の日本列島人はいつ、どうやって日本に渡ってきたのか
海部陽介

人気の講義ランキングTOP10
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
西野精治
歴史の探り方、活かし方(4)史実・史料分析:秀吉と秀次編〈上〉
史料読解法…豊臣秀吉による秀次粛清の本当の理由とは?
中村彰彦
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(4)全てをつなぐ密教の世界観
密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」
鎌田東二
内側から見たアメリカと日本(4)アメリカ労働史とトランプ支持層
ギャングの代わりに弁護士!? 壮絶なアメリカ労働史の変遷
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(7)不動産暴落と企業倒産の内実
不動産暴落、大企業倒産危機…中国経済の苦境の実態とは?
垂秀夫
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
人生100年時代の「ライフシフト概論」(3)キャリアの危機〈下〉
40代前半に訪れる「中年の危機」、鍵は「人生の成長戦略」
徳岡晃一郎