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ウクライナ侵攻も支持率対策か…プーチン政治の実態に迫る

ロシア「内政・経済・外交」の真実(1)国民の支持を意識するプーチン政治

上月豊久
元駐ロシア日本国特命全権大使
概要・テキスト
ロシアの政治・経済は今どのような状況なのだろうか。2022年2月に始まったウクライナへの侵攻だが、いまなおその戦闘は続いている。今後も予断を許さない状況だが、このことがロシア国内に与えた影響も気になるところだ。そこで本シリーズでは、今回から3話にわたってロシアの内政・経済・外交の現在と日本のこれからについて前ロシア大使が語る。第1話の今回はまずプーチンの来歴を振り返りつつ、彼の目指す政治、保守性を強める内政と経済について見ていく。(全3話中第1話)
時間:13:06
収録日:2024/07/08
追加日:2024/09/28
カテゴリー:
≪全文≫

●プーチンの政治は国民の支持を意識して成り立っている


 こんにちは。上月です。今回、私はロシアの話をしたいと思います。私はロシアに全部で17年、4回の勤務をしました。直近では昨年(2023年)12月までの8年間、ロシアの大使をしておりました。

 そういうことの中で、自分が見聞きしたことを合わせながら、全体として、プーチン大統領の下でロシアがどう変わってきたのか、内政、経済、外交について、そして、特にウクライナで2年数か月前から始まった戦争は、それにどういう影響を与えて、ロシアがそれでどう変わってきたかということについてお話ししたいと思います。

 ウクライナの戦争は、まだ出口がどうなるかは分かりませんけれど、その問題について少し触れた上で、今年(2024年)5月にプーチン大統領が再選されまして、新しく内閣もできましたので、それについても触れた上で、将来の見通し、日本の政策などについてもお話ししたいと思います。

 最初に、プーチン大統領の目指す政治の中で、内政の話をしたいと思います。

 まず、皆さんのイメージとして、プーチン大統領は専制君主だから、なんでも自分の好きなようにやっているのだろうと思われるかもしれませんけれど、実はプーチン大統領の政治は国民の支持のことを意識して成り立っているというところから、話を始めたいと思います。

 プーチンは大統領府の第一副長官を経て、エリツィン大統領の退任に伴って、2000年に大統領選挙で選ばれることになります。そのプーチンが1998年に大統領府の第一副長官をしていた頃、エリツィンは1996年の選挙にようやく当選したのです。そのときに世話になったのが、いわゆるオリガルヒという金持ちたちと地方の知事でした。この知事によって、エリツィン大統領は共産党の候補を破って当選できたのですけれど、当選後、1998年ぐらいになりますと、彼自身の健康が悪かったこともあり、さらには選挙でお世話になったオリガルヒと地方の知事たちがずいぶん勝手なことをし始めたため、政治がそうとう混乱しました。

 それを見ていたプーチンは2000年、大統領になったとき、オリガルヒを集め、「皆さん、仕事を続けてもいい。ただ、政治には口を出さないでください」としたので、その中からベルゾンスキーとかウシンスキーは、海外に結局亡命することになりました...
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