●プーチンの政治は国民の支持を意識して成り立っている
こんにちは。上月です。今回、私はロシアの話をしたいと思います。私はロシアに全部で17年、4回の勤務をしました。直近では昨年(2023年)12月までの8年間、ロシアの大使をしておりました。
そういうことの中で、自分が見聞きしたことを合わせながら、全体として、プーチン大統領の下でロシアがどう変わってきたのか、内政、経済、外交について、そして、特にウクライナで2年数か月前から始まった戦争は、それにどういう影響を与えて、ロシアがそれでどう変わってきたかということについてお話ししたいと思います。
ウクライナの戦争は、まだ出口がどうなるかは分かりませんけれど、その問題について少し触れた上で、今年(2024年)5月にプーチン大統領が再選されまして、新しく内閣もできましたので、それについても触れ、さらに将来の見通し、日本の政策などについてもお話ししたいと思います。
最初に、プーチン大統領の目指す政治の中で、内政の話をしたいと思います。
まず、皆さんのイメージとして、プーチン大統領は専制君主だから、なんでも自分の好きなようにやっているのだろうと思われるかもしれませんけれど、実はプーチン大統領の政治は、意外と国民の支持のことを意識して成り立っているというところから、話を始めたいと思います。
プーチンは大統領府の第一副長官、そして首相を経て、エリツィン大統領の退任に伴って、2000年に大統領選挙で選ばれることになります。エリツィンは1996年の選挙ではようやく当選したのですが、そのときに世話になったのが、いわゆるオリガルヒという金持ちたちと地方の知事でした。この知事によって、エリツィン大統領は共産党の候補を破って当選できたのですけれども、当選後、プーチンが大統領府の第一副長官に就任した1998年ぐらいになりますと、彼(エリツィン)自身の健康が悪かったこともあり、さらには選挙でお世話になったオリガルヒと地方の知事たちがずいぶん勝手なことをし始めたため、政治がそうとう混乱しました。
それを見ていたプーチンは2000年、大統領になったとき、オリガルヒを集め、「皆さん、仕事を続けてもいい。ただ、政治には口を出さないでください」としたので、その中からベレゾフスキーとかグシンスキーは、海外に結局...