●長期政権を見据えたプーチン…軍需産業の強化への布石
それを申し上げた上で、(2024年)5月以降の動きを一言いいますと、プーチン大統領が(2024年3月に)再選されて、投票率77パーセント、得票率87パーセントと、高いパーセント値になりました。
憲法が改正されていて、これから新しい憲法の下で2期というカウントになって、(最長の任期が)12年になります。現在71歳のプーチンは、12年たつと83歳になります。
2024年5月7日に大統領の就任式がありましたけれど、その中のプーチン大統領の演説の表現で注目したのは、「国内の不安定と障害によって巨大な対価を払ったことを忘れてはならない」という(表現です)。最近、プーチンは歴史のことに立って国民に訴えかけるのが得意なのですけれど、この中で「国内の不安定と障害」といっているのは、国内の引き締めを強化していくということを示唆しているところだろうと思います。
2036年までの発展計画を、もう就任式の翌々日に発表しています。2036年というのは(大統領をあと)2期続けたらということですので、非常に長期の目標を立てています。平均寿命を2036年までに73.4歳から80歳まで伸ばすというようなこともいっているところになります。
それを受けての内閣改造がありまして、基本的に外務大臣などは変わりませんでした。ただ、大きく注目されたのは、国防大臣の交代でした。ベラウーソフという第一副首相が国防大臣になったことです。それからもう1つ、今まで第一副首相だったベラウーソフのあとに、チェメゾフ(軍需産業国有企業・ロステックの経営者)に近いマントゥロフという副首相を第一副首相にしたという点が目のつくところですけれど、この2つともに共通している話が何かというと、軍需産業の強化です。
経済学者(であったベラウーソフ)を国防大臣に据えることに対して、なぜそうしたのだと、一部ではずいぶんと話題になっておりましたけれど、プーチン自身が言った表現を使えば、「ベラウーソフは、軍需産業を国民経済に組み込むことをいちばんよく知っている人だからだ」ということです。すなわち、軍需産業を国民経済の中に組み込んで、国民経済全体の力をして軍需生産を上げていくということを意図した人事だと、プーチン自身が説明しました。
もう1つ。マントゥロフを第一副首...