●キエフ攻略失敗の背景にあった地理的要因
―― 続きまして、こちらです。ロシアによるウクライナ侵略というところになります。
小原 いよいよ、それで現代に入ってきました。そうした経緯もあってロシアは2014年に、プーチン政権の下ですが、クリミアを併合します。そうして2022年にはウクライナに全面侵攻するということで、ベラルーシの北側からのキエフへの攻撃、これは最終的にはウクライナ側に押し返されるということで、先ほどプーチン大統領に誤算があったということを言いましたが、当時、専門家も次々に入ってくるニュースの中で、もうもっても数日だろうというコメントをされる方が多かったですが、それを引っくり返して、ロシアはこのキエフ攻略に失敗しました。
ところが東部、あるいは南は、私自身は『戦争と平和の国際政治』という本にも書きましたけれど、地理というのが非常に大きな役割を果たしたのではないかと思うのです。
ウクライナの地形を見ていただけると、キエフに対する北側からの攻撃というのは、これは湿地帯なのです。それで、独ソ戦のときにナチス、ヒトラーのドイツも非常に苦労したのですが、ここは戦車が通るのでも大変なのです。当時、ウクライナ側の反撃が効果を上げたのは、例えば舗装された一本道しかないそこを戦車部隊がザーッと長く行列を続けて、動けなくなるわけです。それはいわゆる半分ゲリラ戦のような形で、ウクライナ兵がそうして立ち止まっている戦車を狙って次々に攻撃して、それでもって大変な犠牲、損害をロシアに与えるわけです。
そういったように、この次のページを見ていただけるとこういう感じなのです。
―― 湿原ですね。
小原 湿原なのです。したがって、北側からの攻撃は非常に難しいということなのですが、南と東の一帯は非常に平坦な、障害物の少ない地域なのです。したがってここでは相当な前進をロシア軍が見せているのです。東から南部にかけて、相当ロシアは占領地を大きくしたわけです。いわゆるドンバス地域、東部の2地域と南の2州です。この4州をロシアは完全に征服して、ロシアに併合することを宣言していますから、この地理というものが今回のウクライナ戦争において私は隠れた1つの要...