●地政学と国際政治の深い関係
―― 皆さま、こんにちは。
小原 こんにちは。
―― 本日は小原雅博先生に、地政学講義のヨーロッパ編ということでお話をいただきたいと思います。小原先生、どうぞよろしくお願いいたします。
小原 よろしくお願いします。
―― 小原先生には2024年3月末に配信した「地政学入門 歴史と理論編」ということでご講義をいただきました。この講義で、地政学とは何かについて主要な理論をご紹介いただきました。今回はそれに基づきつつ、ヨーロッパ編になります。
少しおさらい的にいきますと、地政学というのはジオポリティクスということで、地理プラス政治、特に国際政治を結びつけたような概念であるということです。あと非常に印象深かったのが、スパイクマンという方のお言葉で、「地理とは外交政策において最も基本的なファクターである。なぜなら地理は不変であるから」というところです。
先生のご説明では、政治、特に指導者がどう動くかとか、非常に可変的なところがあるけれど、地理の条件というのは不変的なものなので、それを見た上で国家が戦略を決めるのに、どのようにその地理の影響を受けているのかというのを考えていく。基本的にはそういう認識でよろしいわけですね。
小原 そうですね。地政学と戦略は非常に緊密な関係があって、もちろん時代がどんどん変わっています。最近では科学技術が大変な勢いで進歩していますから、特に軍事技術は、例えば大陸間弾道弾は100年前にはなかったものです。そういう意味でいうと、地政学において非常に重要な要素である距離(ディスタンス)というものを飛び越えるような技術革新が起きてきているわけです。
それでも、いろいろなことを考えていくと、この不変的な要素である、例えば中国は引っ越しはできない、永遠に日本の隣国であるというような、根本的な、本質的な問いかけからして、地理というものをどう国際政治の上で反映させていくのかということはすごく大事なことです。
―― さらに前回の講義で印象深かったのが、「地図を読むのだ」というお話です。小原先生は子どもの頃から地理、地図が大好きで、地図帳を今日もお持ちいただきましたけれど、ずっと読みながら、読み出すと1時間でも2時間でもいろいろな空想を働かせたということですね。
小原 はい...