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ロシア資源依存からの脱却へ…ヨーロッパに課せられた難問

地政学入門 ヨーロッパ編(8)未解決の紛争とロシア資源依存

小原雅博
東京大学名誉教授
概要・テキスト
ソ連が解体されるとともに起こった民族紛争の中には、いまだに解決されていないものがいくつもある。それはソ連が抑え込んできた多民族性に端を発する地域的な背景があった。資源のロシア依存というヨーロッパ諸国の課題とともに解説する。(全10話中第8話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:10:30
収録日:2025/02/28
追加日:2025/06/23
カテゴリー:
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≪全文≫

●ソ連解体と未解決の紛争


―― 続きまして、凍結された紛争というところです。

小原 これは先ほど言ったように、ソ連が解体をしていく中で、その起きたいろいろな紛争のいくつかの例です。今も解決されていないというものを、ここに例として挙げました。

 地図上では、ここで国を見ていただければ分かりますが、まず左の下のほうです。モルドバという小さい国があります。これはヨーロッパでも本当に貧しい国だといわれていますが、非常にきれいな国で、ワインもおいしい。ウクライナの隣国です。ウクライナとの国境沿いを親ロシア派が支配していて、ここにロシア軍もいて、ロシアがかなりテコ入れをしているということなのです。ここの紛争がずっと続いているというのが1つです。

 それから、右側、これはジョージアです。先ほどジョージアの話をしましたが、この2つで、1つがアブハジア、(もう1つがその)右の南オセチアというジョージアの2地域で、いわゆる独立勢力という、武装勢力が事実上の独立をしたような形になっています。それをロシアが支援しています。平和維持軍というような形で軍も出しているわけです。戦争も南オセチアをめぐってはジョージアとやっているわけです。これは今も解決されていないのです。この解決がないがために、これまでもいわゆるEUとかNATOに入りたいわけですけれど、入れないのです。紛争がある限りダメなのです。今、ジョージアの中では親ロ派と親欧米派で分かれて非常に政治が不安定になっているということがあります。

 それから右上ですが、アゼルバイジャンとアルメニアの紛争がナゴルノカラバフというところでずっと続いています。これに対して、もちろんロシアは何とか解決しようとしていろいろな仲裁にも入るわけですが、なかなかそれがうまくいかないということで続いています。

 こうした紛争が残っているということをわれわれは頭に入れておく必要があろうかと思います。

―― やはりこのあたりも地理に基づくところがあるということですか。

小原 そうですね。つまり、ロシアが(その問題について)継承したわけですけれど、継承する中で、先ほどの民族問題もありますが、それぞれの民族がみんな独立をしていくわけです。そのときに一部でその民族とは一緒になれないというようなマイノリティもいる。(また...
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