地政学入門 ヨーロッパ編
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民族自決原則とは?多民族国家が抱える難題と矛盾
地政学入門 ヨーロッパ編(6)「ロシア世界」と民族自決原則
政治と経済
小原雅博(東京大学名誉教授)
「ルスキー・ミール」という言葉で代表される「ロシア世界」――それは、実際の国境にとどまらず、自国語を話す周辺領域の市民をも包括した概念。プーチンはそれを使ってウクライナ侵攻を正当化するが、国家外の自民族の保護を優先する「民族自決原則」という理念とも響き合う。今回は、そうした概念とナショナリズムの関係について考える。(全10話中第6話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:9分32秒
収録日:2025年2月28日
追加日:2025年6月9日
カテゴリー:
≪全文≫

●紛争の引き金となる「ロシア世界」という概念


―― 続きまして、「ロシア世界」です。

小原 先ほど少しお話をしたロシア世界です。これは「ルスキー・ミール」という言葉で代表されています。例えば今、ロシアと国境を接する、旧ソ連に属した共和国に住むロシア人というのは1900万人いるのではないかといわれているわけですけれど、それ以外のところでかなり部分的にロシア語を話す人たちがかなりいるということです。

 これは先ほどのウクライナ侵攻のときにも、ヒトラーが使った1つの理屈です。正当性の理由としてプーチンが挙げたのが、東部にいる、あるいはクリミア半島もそうですが、南部にいるロシア系の住民、あるいはロシア語を話す人たちです。これは圧倒的にクリミア半島とか東部では高いわけです。こういう人たちが、極端な言葉を使うと虐殺されている。それを救わないといけない。つまり自分たちの同じ民族をその危機から救い出すためにわれわれは兵を出す。そうした理屈です。

 ロシア世界というのは、ロシアの外交政策とか安全保障政策にものすごく深く関係しているわけです。したがって、ここは押さえておかないといけない地政学の1つの要素だと思います。

 ロシア以外の国で、例えばベラルーシはロシア語を話す人が70パーセント以上いるわけです。それから、バルト3国ではラトビアは非常に高く、33パーセントほどいて、3人に1人ぐらいです。エストニアも3割近い。ウクライナは、先ほど言った東部を中心に、あるいはクリミア半島を中心にこれだけの数がいるということです。

 面白いのは、例えばイスラエルは15パーセントいるわけです。(表を)見ていくと、例えば下のほうのジョージアですが、ロシアとの関係で非常に難しくなっていて、ジョージア自身がEUに加盟する。つまり親欧州で行くのか、それともロシアと一緒になっていくのかという2つに分かれて、国内が分裂して、今政治的な危機にあるわけですけれど、ジョージアは1.2パーセントしかロシア語を話す人がいない。それでもロシアと国境を接していますから、非常にロシアに影響されるのです。

 こうしたロシアの領土概念、ロシア世界の概念というものがいろいろな紛争、対立を引き起こしているということをこの地図は示しているわけです。


●ナショナリズムと民族自決という理念


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