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剰余金の2割を外国に寄付できるような国に

松下幸之助の人づくり≪3≫理想の政治(1)国家に経営理念があれば、もっと日本は発展する

松下幸之助
パナソニック(旧松下電器産業)グループ創業者
情報・テキスト
企業の個々の活動の基礎となる基本的な考え方であり、社員たちの行動指針となる「経営理念」――。「経営の神様」と呼ばれた松下幸之助は、国家においてもこれが必要だと考えていた。幸之助が抱いていた国家経営理念のイメージとは、一体いかなるものだったのか。その内容に迫る。(第3章1話目)
時間:13:51
収録日:2015/06/17
追加日:2016/01/07
カテゴリー:
≪全文≫

●国徳国家を国是にしよう


 日本の国には、1億3千万人いる。けれど、日本の国は小さい。ここで働いて、それで自由にわれわれが食べて、それで経済で繁栄してやっていこうと。そういう姿において、少なくとも仮に具体的に言えば、その1割や2割というものを金額にして、仮に1兆円を国民が食べて寝て、そして1割、剰余が出る。それを8割は国が使う。すると2割は外国に寄付する。そういうことをして繁栄したら一番いい。そういうことが可能かどうかという問題。わしは可能だと思う。

 日本は、われわれが働いて、一生懸命やって、それで十分に食べて、なお残る。その残ったうちの2割をただでやると、外国へ。そうしたら貿易摩擦も起こらない。いくら金を取ると思うけど、ただだったら君、それは喜ぶだろう。そういう国をつくったらいい。それが政治だと思う。

 だけど、そんなことができるとは思っていない。普通は大学に行っても、それを教えない。それで、僕はそれができるかどうか研究している。日本の人は1億人いる、1億2千万人いる。これが皆働くと。それで働いてプラスが出る。食べていくだけのものを皆引いて、それでプラスになる。そのプラスの8割を、国民が余分に所有する。あと2割は海外へやる。そうしたら、十分やっていけると思う。そういう国ができるかどうかを考える。

 国民が消費して、剰余金を残す。その剰余金の8割はそっちまでにする。あと2割は外国に分配する。そういう国を建てられないか。それが政治の一番肝心だと思う。

 それで、これから具体的に研究する。徳川時代にも鎖国をしていた。鎖国しても十分食べて、文化も発達させて、それで外国から出入りなし。徳川時代でもやっていることを、今できないことはない。できるはず。そういうことを、この松下政経塾で生み出さなければいけない。われわれの政経的努力によって、差し引きプラスを生む。そのプラスの2割は海外に寄贈する。「そういう国をつくろう」と、はっきりと口に出さないといけない。


●塾は理念をつくるところ


 あまりにも目的が大きいから、ちょっと分からなくなってくる。私自身も具体的に「こうだ」ということはまだ言えない。今は探っている段階です。皆さんとともに、具体的に「こうしたらいいな」「ああしたらいいな」ということをだんだん探ってつくっていく。そしてやがて巡ってくるであろう大きな運命――アジアが繁栄と中心になるという大きな自然の運命と言ってもいいでしょう――そういう運命に順応して、そしてその運命を具体化しようというのが、政経塾の一応の狙いです。だから、難しいといえば難しい。けれども、無限の可能性を持っている。その無限の可能性に挑んでいこうということを考えているわけです。

 皆さんは一応、「学校を卒業したら何の仕事をしよう」とか、それぞれ個々の目的があったと思うけれども、いまはその個々の目的はそれとして、今度はいま言うように、新しい世界を創造するというか、新しい国家運営を創造する、それを主体性を持ってやる、そういう仕事を政経塾でやると、こういうことですね。

 私はまだうまく言葉にして表せないけれど、そういうことを考えていかざるを得ない。政経塾の仕事はそうならざるを得ない、と思っています。もちろん無限大の大きな望みを持っているけれども、実際には一歩一歩固めていく。一歩一歩行くから、すぐに世界の新しい情勢をつくることはできませんが、しかし、狙いはそういうところに行かざるを得ないと思っているのです。

 私は、日本の国というもの、日本の民族というものを考えてみると、そういうことをやらなくてはならない時代を迎えつつあると思うわけです。日本人の使命、日本の国の使命というものは、「世界を動かす」と言うと誤解される恐れがあるかもしれませんが、世界の、何と言ったらいいか、新しい世界観、そういうものを創造して、それの実現に邁進するためには、われわれは何を考え何をしたらいいかということを考えていかなければいけない。だから、お互い個人の目的はその中に生かしていく。個人の個々の目的をその過程に生かしていくということは許される。基本はもっと大きな世界の再創成というか、世界の新組織ですね。つまり、世界のあり方、世界の国々のあり方、世界の人々のあり方はどうあるべきかというところまで突っ込んでいかなければいけない。そうなると大変な問題ですが、そういうことを念頭に置きつつ現実の仕事をしていこうと、こういうわけです。


●時代に合った憲法を


 政治ということになると、何でもできるというわけにはいきません。憲法というものがあって、憲法に従って政治をやらなくてはいけないということになっている。範囲が限定されてしまうわけです。

 これが、例えば信長の時代だったら、いわば自分で憲...
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