戦史に見る意思決定プロセス~日本海軍の決断
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
なぜ東郷平八郎はバルチック艦隊を対馬で迎え撃ったのか?
戦史に見る意思決定プロセス~日本海軍の決断(1)日本海海戦・東郷平八郎
山下万喜(元海上自衛隊自衛艦隊司令官)
「もしも自分が東郷平八郎だったら・・・」バルチック艦隊の迎撃作戦でどんな決断を下すだろうか。海上自衛隊幹部学校長・山下万喜氏が、現在西側諸国を中心に使われている意思決定プロセスを日露戦争・日本海海戦に適用し、その妥当性を検証する。そこから見えてくるのは、現代にも通じる「リスク管理を踏まえた意思決定」のあり方だ。シリーズ第1回。
時間:12分55秒
収録日:2015年6月15日
追加日:2015年7月20日
≪全文≫

●重大な決定における意思決定の方法とは


 海上自衛隊幹部学校長の山下です。本日は、軍事における指揮官の意思決定プロセスについて話そうと思います。この意思決定プロセスは、軍事の分野のみならず、一般の社会においても重要な決心を迫られるときに通用するものであると考えています。今回は、日露戦争における日本海海戦の例を示しながら、「もし、私が東郷平八郎だったら・・・!」との観点で、日本の連合艦隊がロシアのバルチック艦隊を迎え撃つにあたり、対馬海峡で待ち受けるに至った歴史上重要な決心について、皆さんと一緒に考えたいと思います。

 それでは話を進めてまいりましょう。スライドに示す意思決定のプロセスは、西側諸国の軍隊が採用しているもので、その規則を米軍のプロセスに置いています。明治の帝国海軍には、この考え方はありませんでした。本講義においては、この意思決定プロセスの一般的な流れについて紹介します。

 まず、上級指揮官から任務を与えられたならば、最初の「使命の分析」で「自分は何をすべきか?」について検討します。「使命の分析」を誤ってしまうと、作戦の目的を達成することができないため、これは大変重要な手続きといえます。次に、「情勢の分析及び彼我方策の見積り」の段階で、作戦環境や敵・味方の戦力バランス・方策等を見積ります。そして、「彼我方策の対抗・評価」の段階では、敵・味方が採り得る方策をそれぞれ対抗させて、その予想結果を分析します。その分析結果から、我の採り得る方策を比較検討して、最終的に最善の方策を選定します。また、このプロセスを経ることにより、我の方策のリスクを見極めることができ、事前に対応策を講じることができるということも重要なポイントです。

 「彼我方策の対抗・評価」では、スライドのようなマトリックスを作成して分析します。まず、左側の赤い部分に、敵の方策として考えられるものを方策1、方策2というように縦に列挙します。次に、上段の青い部分に、我の方策として考えられるものを方策1、方策2、方策3というように横に列挙します。そして、敵と我の方策が対抗した場合の予想結果を検討し、マトリックスの交差部分に記録していきます。

 この予想結果を受けて、スライドの下段に示す三つの評価項目で我の方策を比較検討します。スィータビリティー(suitability)とは、我の方策が、...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
第二次世界大戦とソ連の真実(1)レーニンの思想的特徴
レーニン演説…革命のため帝国主義の3つの対立を利用せよ
福井義高
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男
明治維新から学ぶもの~改革への道(1)五つの歴史観を踏まえて
明治維新…官軍史観、占領軍史観、司馬史観、過誤論の超克
島田晴雄
戦国武将の経済学(1)織田信長の経済政策
織田信長の経済政策…楽市楽座だけではない資金源とは?
小和田哲男
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(序)時代考証が語る『豊臣兄弟!』の魅力
2026年大河ドラマ『豊臣兄弟!』秀吉と秀長の実像に迫る
黒田基樹
最初の日本列島人~3万年前の航海(1)日本への移住 3つのルート
最初の日本列島人はいつ、どうやって日本に渡ってきたのか
海部陽介

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2025(32)哲学者たちが考えた平和追求
反EU、反国連の時代に再考!「哲学者たちの平和追求」
テンミニッツ・アカデミー編集部
逆境に対峙する哲学(3)修行・物語・語りの転換
武士道に学ぶ自己訓育――幻想としての順境に抗するために
津崎良典
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(3)秀吉出世譚の背景
武闘派・秀吉として出世…織田家中で一番の武略者の道
黒田基樹
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
本当によくわかる「量子コンピュータ入門」(2)コンピュータの歴史
量子コンピュータの転機となった1990年代の発見とは何か
武田俊太郎
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(5)恐るべき台湾への「浸透」
浸透工作…台湾でスパイ裁判が約70件、それも氷山の一角
垂秀夫