戦史に見る意思決定プロセス~日本海軍の決断
この講義シリーズは第2話まで
登録不要で無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
6,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
レイテ沖海戦…栗田艦隊「謎の反転」の意図を解き明かす!
戦史に見る意思決定プロセス~日本海軍の決断(4)レイテ沖海戦・栗田健男
山下万喜(元海上自衛隊自衛艦隊司令官)
海上自衛隊幹部学校長・山下万喜氏による、戦史に見る意思決定プロセス分析シリーズ。今回は、意思決定の成否を大きく左右する「使命分析」の重要性を、昭和19(1944)年のレイテ沖海戦において「謎の反転」を行った栗田艦隊の指揮官・栗田健男のケースを例に論じる。何か決心をしなければならない人は、過去の失敗からも学び得るはずである。シリーズ最終回(第4回)。
時間:12分46秒
収録日:2015年7月29日
追加日:2015年10月8日
≪全文≫

●もし私がレイテ沖海戦の栗田健男だったら


 こんにちは。海上自衛隊幹部学校長の山下です。本日は、指揮官の意思決定プロセスの最終回となります。今回は、大東亜戦争におけるレイテ沖海戦の例を示しながら、「もし私が栗田健男だったら」という視点に立って、栗田艦隊がレイテ湾に突入するにあたり、敵機動部隊が北方にいるとの情報を受け、レイテ湾突入を継続するのか、または反転して敵機動部隊との艦隊決戦を期して北上するのかという歴史上重要な決心について、皆さんと一緒に考えてみたいと思います。それでは話を進めてまいります。

 軍事における指揮官の一般的な意思決定プロセスは、図に示す通りです。上級指揮官から任務を与えられたならば、「使命の分析」、次に「情勢の分析及び彼我方策の見積り」を行い、敵の方策を見積もります。「彼我方策の対抗・評価」で、彼我の方策を対抗させ、最後に「意思決定」の段階で、我の最善の方策を決定します。

 「彼我方策の対抗・評価」では、スライドのようなマトリックスを作成・分析し、左側の敵の方策を、上に青い部分ですが我の方策を列挙し、対抗した部分の予想結果をマトリックスの交差部分に列挙します。この予想結果に対して、スィータビリティー・フィージビリティー・アクセプタビリティーの観点で、我の方策を比較検討します。これらについて、最終的に総合評価し、最善の方策を選択し、意思決定とします。


●情勢的に不利だったレイテ湾突入作戦


 それではこの意思決定プロセスを、レイテ沖海戦に適用し、栗田長官のレイテ湾突撃か反転かの決断について考えてみましょう。レイテ沖海戦は図に示したように、四つの海戦によって構成されています。第一が、戦艦武蔵が沈んだシブヤン海海戦、第二が南側から栗田艦隊と呼応しようとした西村・志摩艦隊がほぼ全滅もしくは退却したスルガオ海峡海戦、第三は小沢艦隊が囮(おとり)となった作戦であるエンガノ岬沖海戦、第四が今回の意思決定プロセスの対象となるサマール沖海戦です。

 栗田艦隊のレイテ湾突入は、アメリカのフィリピン上陸を阻止するため、南方の西村部隊・志摩部隊と呼応して、昭和19(1944)年7月25日11時と決められていましたが、西村部隊は魚雷艇、駆逐艦、巡洋艦等の攻撃を受けほぼ全滅、志摩部隊も敵情をつかめず退却しました。一方、小沢治三郎中将率いる機動部隊は囮...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
概説・縄文時代~その最新常識(1)縄文時代のイメージと新たな発見
高校日本史で学んだ縄文時代のイメージが最新の研究で変化
山田康弘
モンゴル帝国の世界史(1)日本の世界史教育の大問題
なぜ日本の「世界史」はいびつなのか…東洋史と西洋史の違い
宮脇淳子
中国春秋戦国時代と始皇帝(序)映画『キングダム』の中国史監修
中国古代史の真実と『キングダム』…史実がわかれば物語はもっと面白い
鶴間和幸
天皇のあり方と近代日本(1)「人間宣言」から始まった戦後の皇室
皇室像の転換…戦後日本的な象徴天皇はいかに形成されたか
片山杜秀
ロシア人の見る「ロシアの歴史」(1)会ってみたプーチン…その実像
ロシア人の見る「ロシアの歴史」を知るとロシアがよくわかる・・・実際に会ってみたプーチンの印象とは?
上月豊久
本当のことがわかる昭和史《5》満洲事変と石原莞爾の蹉跌(1)なぜ満洲が重要だったのか
放っておけば朝鮮はロシア領になりかねなかった
渡部昇一

人気の講義ランキングTOP10
ロシア人の見る「ロシアの歴史」(1)会ってみたプーチン…その実像
ロシア人の見る「ロシアの歴史」を知るとロシアがよくわかる・・・実際に会ってみたプーチンの印象とは?
上月豊久
『「甘え」の構造』と現代日本(1)「甘え」のインパクト
「甘え」は現代においてダメなものなのか…名著『「甘え」の構造』への2種類の誤解とは?
與那覇潤
高齢者のフレイル・認知症とその予防対策(6)認知症予防と健康寿命の延伸に向けて
フレイル・サイクルは回り出したら抜けられない!?負のスパイラルへの対処法
小川純人
現代人に必要な「教養」とは?(1)そもそも教養とは何か
教養とは…本質を捉える知、他者を感じる力、先頭に立つ勇気
小宮山宏
近現代史に学ぶ、日本の成功・失敗の本質(6)東條内閣で行われた行政改革
悲惨な末路につながった東條英機内閣での兼職と省庁再編
片山杜秀
『万葉集』と律令社会~官僚の心得と歌宴(2)「出挙」と国司の仕事
地元の有力者の力を借りるために大伴家持が詠んだ歌とは?…今も奈良時代も変わらない中央官僚と地元有力者の関係
上野誠
中国春秋戦国時代と始皇帝(序)映画『キングダム』の中国史監修
中国古代史の真実と『キングダム』…史実がわかれば物語はもっと面白い
鶴間和幸
編集部ラジオ2026(36)宮脇淳子先生「満洲史」講義の要点
【10min解説】「満洲史」はタブー?…そこから見えてくる教訓とは?
テンミニッツ・アカデミー編集部
「満洲」から考える日本とアジア(5)ロシアのシベリア征服と日清日露戦争
「満洲利権」はなぜ日本の手に渡ったか?…ロシアの極東征服、そして朝鮮の混乱が日本を日清・日露戦争へ
宮脇淳子
仏教とキリスト教が照らし出す日本の宗教(1)神とは何か、そして天皇とは?
日本と世界の「神と信仰」の違いは?…そして天皇の大切な役割
橋爪大三郎