戦史に見る意思決定プロセス~日本海軍の決断
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ミッドウェー海戦の敗因…南雲忠一はなぜ決断を誤ったのか
戦史に見る意思決定プロセス~日本海軍の決断(3)ミッドウェー海戦・南雲忠一
山下万喜(元海上自衛隊自衛艦隊司令官)
昭和17(1942)年のミッドウェー海戦で大敗を喫した指揮官・南雲忠一の判断ミスは、適切な情報の不足に由来していた。なぜ南雲は、魚雷のままでよかった攻撃機の装備を、あえて敗因になった爆弾に変えたのか。海上自衛隊幹部学校長・山下万喜氏が、現代の意思決定プロセスを使いながら、南雲の「失敗の本質」に迫る。シリーズ第3回。
時間:12分21秒
収録日:2015年7月29日
追加日:2015年10月1日
≪全文≫

●もし私がミッドウェー海戦の南雲忠一だったら


 こんにちは。海上自衛隊幹部学校長の山下です。本日は、指揮官の意思決定プロセスの第3回目となります。今回は、昭和17(1942)年のミッドウェー海戦の例を示しながら「もし私が南雲忠一だったら」との視点に立って、南雲機動部隊がミッドウェー島に第二次攻撃を加えるにあたり、敵艦隊出現に備えて魚雷装備していた攻撃機の魚雷を降ろして、爆弾に積み替えるか否かの歴史上重要な決断について、皆さんと一緒に考えてみたいと思います。それでは話を進めてまいります。

 軍事における指揮官の一般的な意思決定プロセスは、前回に示した通りです。上級指揮官から任務を与えられたならば、「使命の分析」の段階で自分は何を為すべきかについて検討します。次に「情勢の分析及び彼我方策の見積り」で、情勢の分析と敵の方策を見積もります。「彼我方策の対抗・評価」では、彼我方策を対抗させ、「意思決定」の段階で、我の最善の方策を決定していきます。特に「彼我方策の対抗・評価」では、スライドのようなマトリックスを作成し分析します。左側の赤い部分に敵の方策を列挙し、上の青い部分には我の方策を列挙します。そして双方が対抗した場合の予想結果を、マトリックスの交差部分に記録します。この予想結果を受けて、スライドの下に示した、スィータビリティー・フィージビリティー・アクセプタビリティーの観点で、我の方策を比較検討します。これらについて総合評価し、最終的に最善の方策を選択して、意思決定とします。


●不発に終わったミッドウェー作戦の第一次攻撃


 それでは、この意思決定プロセスをミッドウェー作戦に適用し、第二次攻撃のための、魚雷か爆弾かの選択について考えてみましょう。

 まずミッドウェー作戦について概観します。ミッドウェー作戦の目的は、ミッドウェー島を攻略して、どの方面からも敵艦隊の機動を封止するとともに、我が作戦基盤を前方に推進することでした。作戦計画の概要は、偵察艇や潜水艦をもって事前にハワイ周辺の敵軍の動きを偵察するとともに、北方部隊によりアリューシャン方面を奇襲して敵の注意を引きつけた上で、その間に南雲長官が指揮する第一機動部隊でミッドウェー島を攻撃する計画でした。一方、事前に作戦の全容を察知していたアメリカのチェスター・ニミッツ大将は、ミッドウェーの北西から侵攻し...

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