本当のことがわかる昭和史《1》誰が東アジアに戦乱を呼び込んだのか
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
次の動画も登録不要で無料視聴できます!
張作霖爆殺事件はなぜ起きたのか?その真相に迫る
第2話へ進む
半藤一利氏のベストセラー『昭和史』が持つ危険な面とは?
本当のことがわかる昭和史《1》誰が東アジアに戦乱を呼び込んだのか(1)「客観的かつ科学的な歴史」という偽り
渡部昇一(上智大学名誉教授)
半藤一利氏著『昭和史』は、昭和史としては日本で最も多く読まれたベストセラーである。しかし、この本には危険ともいえる面がある。それは一体どういうことか。上智大学名誉教授・渡部昇一氏によるシリーズ「本当のことがわかる昭和史」第一章・第1話。
時間:2分35秒
収録日:2014年11月17日
追加日:2015年8月10日
≪全文≫
 作家の半藤一利氏が書いた『昭和史』(平凡社)は大変によく売れた本だ。昭和元年から敗戦までと戦後篇の2冊があるが、2015年現在で累計70万部を超えるベストセラーになっている。昭和史としては日本で最も多く読まれた書の一つともいえるだろう。

 私は半藤氏をよく存じ上げている。彼が月刊誌『文藝春秋』の編集長を務めていた頃、企画などをよく頼まれていたのだ。半藤氏は教養あるジェントルマンで、奥さんは夏目漱石のお孫さんである。私と同い年で、大東亜戦争にも大変興味を持っており、戦後、司馬遼太郎氏をはじめ、いろいろな人と交流を持ちつつ多くの関係者に取材し聞き書きを行なっておられる。

 だから、半藤氏の『昭和史』に書かれていることは、時代の一面を非常にうまく切り取っている。口述を文章にまとめたものだから、とても読みやすく、面白いエピソードも数多く入っている。どの話も事実であろう。

 だがしかし、そうであるがゆえに、ある意味で危険ともいえる面がある。そのことを、本書の冒頭でぜひ示しておく必要がある。

 私の見るところ、半藤氏は終始、いわゆる「東京裁判史観」に立っておられる。つまり、東京裁判が日本人に示した(言葉を選ばずにいえば、日本人に「押し付けようとした」)歴史観の矩(のり)を一切踰(こ)えていない。

 戦後、占領軍の命令で、東京裁判(極東国際軍事裁判、昭和21年〈1946〉~23年〈1948〉)のためにあらゆる史料が集められた。それがあまりに膨大なものであったため、それらの史料こそが「客観的かつ科学的な歴史」の源であり、それらなしには二度と昭和史の本を書くことができないような印象さえ世間に与えた。

 だが、実はこの「客観的かつ科学的」というのが、大きな偽りなのである。

 一般にはあまり知られてこなかったことではあるが、終戦直後に、7千点を超える書籍が「宣伝用刊行物」と指定されて禁書とされ、GHQの手で秘密裏に没収されている。その状況については、現在、西尾幹二氏が著作を発表されておられる。また、当時の日本人の多くが気づかないうちに、戦後のメディア報道はきわめて厳重に検閲され、コントロールされていた。そのことについては、江藤淳氏の労作をはじめ、さまざまな研究がなされている。

 さらに、これは気をつけなくてはならない点だが、そのような状況下で「歴史観」がつく...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
徳川将軍と江戸幕府~徳川家斉(1)家斉が長期政権を維持できた理由
11代将軍・徳川家斉が50年もの長期政権を築けた理由
山内昌之
最初の日本列島人~3万年前の航海(1)日本への移住 3つのルート
最初の日本列島人はいつ、どうやって日本に渡ってきたのか
海部陽介
明治維新から学ぶもの~改革への道(1)五つの歴史観を踏まえて
明治維新…官軍史観、占領軍史観、司馬史観、過誤論の超克
島田晴雄
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国時代、民衆にとっての課題は生き延びること
黒田基樹
本当のことがわかる昭和史《1》誰が東アジアに戦乱を呼び込んだのか(1)「客観的かつ科学的な歴史」という偽り
半藤一利氏のベストセラー『昭和史』が持つ危険な面とは?
渡部昇一
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦

人気の講義ランキングTOP10
内側から見たアメリカと日本(5)ヒラリーの無念と日米の半導体問題
大統領選が10年早かったら…全盛期のヒラリーはすごすぎた
島田晴雄
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
西野精治
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(7)不動産暴落と企業倒産の内実
不動産暴落、大企業倒産危機…中国経済の苦境の実態とは?
垂秀夫
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
日本の財政と金融問題の現状(1)財政赤字の何が問題か
日本の財政は本当に悪いのか?将来世代と金利の問題に迫る
木下康司
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(4)全てをつなぐ密教の世界観
密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」
鎌田東二