本当のことがわかる昭和史《1》誰が東アジアに戦乱を呼び込んだのか
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
占守島の戦いで健闘空しく停戦命令…負け方が下手な日本
本当のことがわかる昭和史《1》誰が東アジアに戦乱を呼び込んだのか(8)日本軍は負け方を知らなかった
渡部昇一(上智大学名誉教授)
日本軍はそれまで戦争に負けたことがなかったため、負け方が下手だった。それは、終戦直後の北方領土におけるソ連との戦闘に表れている。上智大学名誉教授・渡部昇一氏によるシリーズ「本当のことがわかる昭和史」第一章・第8話。
時間:3分57秒
収録日:2014年11月17日
追加日:2015年8月10日
≪全文≫
 もう一つ付け加えるなら、大東亜戦争の後半、日本軍は当初、南方の小島でアメリカ軍相手に水際で戦ったものだから、日本の戦車隊は艦砲射撃などにやられてあまり役に立たなかった。しかし、終戦直後に行なわれたソ連軍との戦闘では、日本の戦車部隊が非常に健闘しているのだ。

 戦前は日本の領土だった千島列島の一番北に、占守(しむしゅ)島という小さな島がある。そこには本土防衛作戦のために、第七十三旅団および満洲から転進した精鋭の戦車第十一連隊(通称「士魂部隊」──「十一=士」という文字からの連想である)が主力部隊を置いていた。

 これらの部隊は、カムチャツカ半島方面からのソ連の侵攻に備えていたわけだが、日本が昭和20年(1945)8月15日にポツダム宣言を受諾してから3日後の8月18日未明、ソ連軍は突如、占守島に上陸を開始した。

 当時、占守島には第七十三旅団と戦車第十一連隊を軸に、8480人、戦車60台が守りについていた。一方、ソ連軍は8824人が戦闘に参加している。日本軍は一時、ソ連軍を上陸地点にまで押し返す健闘を見せたが、中央の停戦命令に従い、8月21日に戦闘を停止し、ソ連軍に降伏した。

 わずか3日あまりの戦闘だったが、ソ連側の史料でも日本軍の死傷者1018人に対し、ソ連軍の死傷者は1567名と、日本軍の損害を上回っている。

 このように同部隊は非常に健闘していただけに、中央からの命令で停戦しなければならなかったのがまったく惜しい。アメリカ海軍の戦艦ミズーリ号の艦上で降伏調印式が行なわれたのが9月2日だから、それまで攻撃を食い止めていれば、いわゆる北方領土にソ連は手が出せなくなっていたに違いないのだ。

 日本軍はそれまで戦争に負けたことがなかったから、負け方が下手だったのである。降伏しても武器を渡さず、引き揚げを行なう際に武装解除に応じていたら、もっと被害は少なくてすんだろうし、60数万人も強制連行されてシベリアに抑留されることもなかっただろう。

 一方、ドイツは負け方を知っていた。ヒトラーが自殺したあと、新政府の大統領に指名されたデーニッツ元帥が、昭和20年(1945)5月6日に作戦部長のヨードル大将を降伏交渉に当たらせ、翌7日にはアイゼンハワー元帥麾下(きか)の連合軍との間で、8日にはジューコフ元帥麾下のソ連軍との間で降伏文書に調印している。でなけ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
ローマ史に学ぶ戦略思考~ローマ史講座Ⅳ(1)古代の持つ意義と重み
一神教もアルファベットも貨幣も全て古代に生まれた
本村凌二
本当のことがわかる昭和史《1》誰が東アジアに戦乱を呼び込んだのか(1)「客観的かつ科学的な歴史」という偽り
半藤一利氏のベストセラー『昭和史』が持つ危険な面とは?
渡部昇一
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
最初の日本列島人~3万年前の航海(1)日本への移住 3つのルート
最初の日本列島人はいつ、どうやって日本に渡ってきたのか
海部陽介
徳川将軍と江戸幕府~徳川家斉(1)家斉が長期政権を維持できた理由
11代将軍・徳川家斉が50年もの長期政権を築けた理由
山内昌之

人気の講義ランキングTOP10
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
歴史の探り方、活かし方(4)史実・史料分析:秀吉と秀次編〈上〉
史料読解法…豊臣秀吉による秀次粛清の本当の理由とは?
中村彰彦
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
内側から見たアメリカと日本(4)アメリカ労働史とトランプ支持層
ギャングの代わりに弁護士!? 壮絶なアメリカ労働史の変遷
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(4)全てをつなぐ密教の世界観
密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」
鎌田東二
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(2)言葉を理解するプロセスとスキーマ
なぜ子どもは教えられても理解できないのか?鍵はスキーマ
今井むつみ
編集部ラジオ2025(28)内側から見た日米社会の実状とは
島田晴雄先生の体験談から浮かびあがるアメリカと日本
テンミニッツ・アカデミー編集部
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
徳と仏教の人生論(3)無分別知と全人格的思惟
般若とは何か――秋月龍珉からの命題を探求し到達した境地
田口佳史