本当のことがわかる昭和史《1》誰が東アジアに戦乱を呼び込んだのか
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
日本の戦車はソ連の25倍以上頑丈だった!
本当のことがわかる昭和史《1》誰が東アジアに戦乱を呼び込んだのか(7)司馬遼太郎がノモンハンを書かなかった理由
渡部昇一(上智大学名誉教授)
日本を代表する歴史小説家である故・司馬遼太郎氏は、ノモンハン事件を執筆のテーマに定め、膨大な史料を収集し、取材を進めていた。ところが、突如「ノモンハン事件は書かない」と言い出した。一体それはなぜなのか。上智大学名誉教授・渡部昇一氏によるシリーズ「本当のことがわかる昭和史」第一章・第7話。
時間:4分55秒
収録日:2014年11月17日
追加日:2015年8月10日
≪全文≫
 にもかかわらず、半藤氏はこうした事実には目をくれず、司馬遼太郎氏がなぜノモンハン事件を書かなかったのかについて、『昭和史』(平凡社ライブラリー)に書いている。

 司馬氏は神田の本屋と提携し、執筆のテーマを決めるとお金を惜しまず史料を集めて、トラックで運んでいった人である。ノモンハンの史料もみなそうやって集めている。また司馬氏は、ノモンハン事件当時の部隊長で唯一の生き残りである須見新一郎氏からも話を聞いていた。

 ところが司馬氏は突如、「ノモンハン事件は書かない」と言い出した。半藤氏は同書の中で、司馬氏がノモンハン事件を書かない理由について、あれこれ考えをめぐらせている。

 たとえば司馬氏が小説に書いている坂本龍馬や河井継之助、土方歳三などの主人公は潔い人物だが、ノモンハン事件の当事者である陸軍参謀本部や関東軍の作戦課の軍人たちは、「司馬さん好みのさわやかさ」がない人ばかりだったから、書きたくなくなったのではないかと、半藤氏は解釈した。

 しかし司馬氏は結局、ノモンハン事件を書かない理由のすべてを半藤氏にも話していないのだから、別の解釈も可能だろう。取材を進める中で、「もう少し頑張れば勝てたのに」という声に突き当たった可能性もあるのではないかと思うのだ。

 事実、当時、関東軍参謀としてノモンハン事件を指揮した辻政信少佐は、

〈戦争は指導者相互の意志と意志との戦いである。もう少し日本が頑張っていれば、おそらくソ連側から停戦の申し入れがあったであろう。とにかく戦争というものは、意志の強い方が勝つ〉
(半藤一利『昭和史』)

 といったという。

 一方、司馬氏は陸軍の戦車隊出身だったが、日本の戦車は装甲が薄くて機関銃の弾が貫通するとか、日本は立派な戦車がつくれなかったというように、日本の戦車隊を非常に低く評価していた。

 ところが、実際にノモンハンで戦った戦車隊の隊員たちの証言によれば、ソ連の戦車は装甲も厚くて火力も強いが、停止しなければ主砲が撃てない。日本の戦車は走りながら撃てたから、ソ連の戦車を次から次へと撃破できたという。そんな話を、ひょっとしたら司馬氏は聞いたのかもしれない。そうなると作品を書けなくなるのも無理はない。

 結果として、平成10年(1998)にソ連からの情報が公開されたことによってノモンハン事件に対する考え方は一変したの...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
本当のことがわかる昭和史《1》誰が東アジアに戦乱を呼び込んだのか(1)「客観的かつ科学的な歴史」という偽り
半藤一利氏のベストセラー『昭和史』が持つ危険な面とは?
渡部昇一
第二次世界大戦とソ連の真実(1)レーニンの思想的特徴
レーニン演説…革命のため帝国主義の3つの対立を利用せよ
福井義高
明治維新から学ぶもの~改革への道(1)五つの歴史観を踏まえて
明治維新…官軍史観、占領軍史観、司馬史観、過誤論の超克
島田晴雄
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国時代、民衆にとっての課題は生き延びること
黒田基樹
徳川将軍と江戸幕府~徳川家斉(1)家斉が長期政権を維持できた理由
11代将軍・徳川家斉が50年もの長期政権を築けた理由
山内昌之
『江戸名所図会』で歩く東京~吉原(1)「苦界」とは異なる江戸時代の吉原
遊女の実像…「苦界?公界?」江戸時代の吉原遊郭の真実
堀口茉純

人気の講義ランキングTOP10
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
健診結果から考える健康管理・新5カ条(1)血管をより長く守ることが重要な時代
健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと
野口緑
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
プロジェクトマネジメントの基本(1)国際標準とプロジェクトの定義
プロジェクトマネジメントとは?国際標準から考える特性
大塚有希子
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦