福田赳夫と日本の戦後政治
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
「福田ドクトリン」と全方位平和外交…福田赳夫の真実とは
福田赳夫と日本の戦後政治(8)福田政権「3つの功績」
井上正也(慶應義塾大学法学部教授)
1976年に発足した福田政権は、経済、外交の両面で主に3つの大きな成果を残した。経済大国となった責任と平和的な国際協調を重んじる政治理念あってのことだが、その一つが「福田ドクトリン」と呼ばれるものである。「平和に徹し軍事大国にならない」という言葉に象徴されるように平和外交の旗印に掲げたそれは、実は福田が田中角栄との自民党総裁選の際に政権構想として挙げたアイデアだった。最後に本シリーズ講義のまとめとして、これまでのステレオタイプでは理解できない、福田赳夫という政治家の重層性について解説する。(全9話中第8話)
時間:16分08秒
収録日:2022年9月29日
追加日:2023年6月30日
≪全文≫

●国際協調を念頭に置いた変幻自在な経済運営


 さて、福田赳夫と政局に関する総括は以上にして、福田政権の功績について少しまとめてみたいと思います。

 1976年12月から1978年12月までの2年間が福田政権でした。この福田政権の功績を考えたとき、その多くは外交に関わる部分ではなかったかと思います。つまり、国際社会の中で日本が果たすべき役割を、福田は正確に理解をし、それに対応したという評価はできると思います。

 福田の評価を見たときに大事なことの1つ目は、経済政策です。福田の経済運営は非常に変幻自在です。

 田中政権の大蔵大臣をやっていた頃から、三木政権の副総理時代は厳しい総需要抑制策を取ることで、とにかくお金を使わないようにして、インフレを抑えるのです。ところが、福田政権になると一転して、大胆な内需拡大策を取って、経済を活気づけようとする。7パーセントという当時の経済成長率を実現するために「臨時異例」の経済運営をするのです。例えば、1977年度の第2次補正予算と、1978年度の予算を一緒に運営をして、切れ目のない公共事業をやって、景気刺激を続けるという考え方です。

 ところが、これをやったがために日本の公債依存度が、福田政権期、ついに30パーセントを超えて、34パーセントまでいってしまうのです。その後、財政課題が大きな課題として残ったことは事実です。

 しかしながら、ではなぜ福田はこんな異例な手を使ってまで景気刺激策を取ったか、ということです。

 それはやはり国際協調の文脈というものが無視できないと思うのです。当時、石油ショックが世界を覆う中で、西側の先進国はどの国も経済不況に襲われていて、国際収支が不均衡な状態でした。そういう中で日本は、アメリカ、ヨーロッパとともに、世界経済の3つの中心の一角として、世界経済を牽引しなければいけないという圧力があったのです。

 さらに福田自身が、戦前に国際協調体制が崩壊して、それがファシズムの台頭を招いて、第2次世界大戦に向かったという歴史の目撃者だったことも大きな要因でした。福田が自身の歴史的経験から、国際協調が非常に重要で、そのためには日本が少々無理をしてでも、世界経済を引っ張る機関車にならないといけないのだということを強く考えており、その責務を積極的に受け入れたということが大きかったと思います。


●平和外交の旗印として掲げた...


スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
地政学入門 歴史と理論編(1)地政学とは何か
地政学をわかりやすく解説…地政学の「3つの柱」とは?
小原雅博
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
衰退途上国ニッポン~その急所と勝機(1)安いニッポンと急性インフレ
世界で一人負け…「安い国」日本と急性インフレの現実
宮本弘曉
独立と在野を支える中間団体(1)「中間団体」とは何か
なぜ中間団体が重要か…家族も企業も学校も自治会も政党も
片山杜秀
お金とは何か?…金本位制とビットコイン(1)お金の機能とその要件
お金の「3大機能」とは何か? そしてお金のルーツとは?
養田功一郎
財政問題の本質を考える(1)「国の借金」の歴史と内訳
いつから日本は慢性的な借金依存の財政体質になったのか
岡本薫明

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2026(20)W杯に想う聖徳太子の「和」の力
【10minで考える】W杯と聖徳太子流・勝利への「和の力」の真実
テンミニッツ・アカデミー編集部
中国史概説~『皇帝たちの中国』を読む(1)なぜ「中国史はつまらない」のか?
驚きの中国史~「中国史はつまらない」という通説の裏の波乱の真実
宮脇淳子
老子の神髄(2)達人の境地と「無為」
無為とは「絶対なる喜びを得る」こと…その境地こそ長寿への秘訣
田口佳史
AI時代にリベラルアーツがなぜ必要か(7)自分の人生のために
AI時代こそAIでなく「生きた学び」で自分の人生を膨らませる
橋爪大三郎
重職心得箇条~管理職は何をなすべきか(2)一途と覚悟で道を究める
自己鍛錬を目指す人に知ってほしい数々の名言
田口佳史
日本の財政の真実を検証する(1)膨らむ借金の知られざる実態
日本の財政の「真実」をデータで徹底検証…国際機関の分析は?
宮本弘曉
ラカンの精神分析~心の謎を解き明かす(5)否定神学とラカン理論の限界
暴いてはいけない!?心を理解する上で重要な「否定神学」とは
斎藤環
キケロ『老年について』を読む(1)キケロの評価と「老年の心構え」
幸福な老年への智恵をキケロに学ぶ…惨めな老年の4つの理由とは
本村凌二
認知症とは何か(1)疾患の種類と対応
多くの認知症の原因は「脳のゴミ」の蓄積
遠藤英俊
なぜ働いていると本が読めなくなるのか問答(1)読書と教養からみた日本の近現代史
『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』で追う近現代史
三宅香帆