福田赳夫と日本の戦後政治
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なぜ「三角大福」の抗争で福田の行動がわかりづらいか
福田赳夫と日本の戦後政治(7)田中政権から三木政権へ
井上正也(慶應義塾大学法学部教授)
田中角栄政権成立後に進められた日中国交正常化は、実は自民党の総裁選とリンクしていた。福田赳夫はソ連との関係や台湾問題などに配慮して慎重姿勢を見せていたが、田中は三木武夫を取り込むための大義名分として日中国交正常化を公約に掲げたのである。結局、中国との交渉は成功する。だが本来、外交論として考えたならば、福田の考え方のほうが王道であった。敗れた福田は、田中政権の大蔵大臣となり、インフレの抑制に貢献する。だが、田中の金権体質とそりが合わない福田は、田中政権の政権末期に蔵相を辞任する。それもあって、次の首相の座を逃し、次の三木政権で再び経済財政を支える司令塔としての役割を担うのだが……。福田と田中。対照的な2人の動向から、1970年代の自民党政治を振り返る。(全9話中第7話)
時間:11分53秒
収録日:2022年9月29日
追加日:2023年6月23日
≪全文≫

●日中国交正常化…福田の慎重な考え方のほうが王道だった


 さて、田中政権が成立します。その田中政権がやった外交政策は、一番大きなものは日中国交正常化です。実は、この日中国交正常化は自民党の総裁選とリンクしていました。

 というのも、田中角栄は三木武夫を取り込むためには、日中国交正常化をやるという公約を掲げざるを得なかったのです。田中は、実際には買収攻勢をかけていたのですが、大義名分は必要でした。その格好の大義名分が日中国交正常化だったのです。

 実は、福田赳夫はこれに対して慎重姿勢でした。俗にいわれるのが、福田が親台湾派、田中が親中国派で、結局は田中の勝利で日中国交正常化が実現したという見方です。しかし、この見方は少し単純化しすぎているところがあると思います。というのは、やはり1972年当時、日中国交正常化は当時の国際情勢から見ても、また国内の世論の要求から見ても、避けられないものであるというのはもう明らかだったからです。

 福田赳夫が主張していたのは、日中国交正常化を実現するという路線に反対はしないということです。しかしながら、いきなり北京に向かうのではない。例えば当時、ソ連が日本に対して接近をしてきていて、もしかすると北方領土問題が前に進むのではないかという期待がありました。だから、日ソ関係を見据えて慎重な外交をやらないといけない。あるいは、日中国交正常化を結んだら、台湾との政治関係は切らないといけない。ところが、いきなりやってしまうと台湾問題の処理が大きな問題になります。だから、北京側とも台湾問題をどうするかをちゃんと協議した上で日中国交正常化に踏み切るべきだ、ということを福田は主張していたのです。

 そうして福田は反対したわけですが、結局は田中と外務大臣になった大平正芳が、政権ができて間もなく北京に向かって日中国交正常化を実現することになります。ただこれは、中国政府が当時、日中国交正常化を急いでいたという事情があって、条件面では中国側が非常に譲歩しているのです。

 だから、田中政権にしてみたら、実現できる見通しが立った上で、国交正常化に踏み切ったのです。結果として田中のやり方はこの時、成功したわけですが、ただ本来、外交論として考えたとき、福田の慎重に交渉を進めるという考え方のほうが王道でした。

 だからこそ、その後で中国問題は、福田に近い...

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