福田赳夫と日本の戦後政治
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福田赳夫と日本の戦後政治(1)福田赳夫のイメージと大蔵官僚時代
井上正也(慶應義塾大学法学部教授)
「福田赳夫」と聞いて、どのようなイメージが頭に浮かぶだろうか。「角福戦争(田中角栄VS福田赳夫)」や「三角大福中(三木武夫・田中角栄・大平正芳・福田赳夫・中曽根康弘)」などと称された権力闘争を、真っ先に思い起こす人もいるはずだ。あるいは、「ナショナリスト」や「タカ派」といった印象を持つ方もいるだろう。若い世代は、そもそもイメージが頭に浮かんでこないかもしれない。だが、福田赳夫の歩みをつぶさに調べると、果たした役割の大きさ、さらにイメージとはまったく異なる国際主義者のイメージが浮かび上がってくる。福田の生涯を知れば、戦後の日本政治史もよく見通せるようになる。シリーズ第1話では、まず福田が政治家人生として歩む上で礎となった大蔵省時代の「4つの経験」について解説する。(全9話中第1話)
時間:13分10秒
収録日:2022年9月29日
追加日:2023年5月12日
≪全文≫

●一般的な「タカ派」のイメージとはまったく異なる国際主義者の顔


 本日は福田赳夫についてお話をさせていただきたいと思います。

 福田という政治家が一般的にどういうイメージを持たれているかというと、どちらかといえば、自民党の中でもナショナリストやタカ派の系譜の中で位置づけられる政治家です。あるいは、岸信介と政治行動をともにしたということから、岸と関連づけられて論じられることが多いかと思います。確かに、岸派の流れを汲む福田派(後の清和会)には、中国政策や安全保障問題などで非常に強い姿勢を取る政治家が多くいたことも事実です。

 しかし近年、急速にさまざまな資料調査、研究が進んでくる中で、福田という人のイメージは少しずつ変わってきています。まずもって、福田の外交政策をめぐる言説から浮かび上がってくるのは、一般的な「タカ派」というイメージとはまったく異なる国際主義者のイメージなのです。

 1972年、後に「角福戦争」といわれた、田中角栄と対決した自民党総裁選に福田が立候補した時、彼は「戦後の日本が経済的には大国になったが、軍事大国にならずに、経済力を通じて世界平和に貢献する平和大国を目指すのだ」という国家構想を示したのです。

 そういう点を見てみると、やはり福田という人のイメージは少し修正されなければならないのではないでしょうか。本日は、福田の生涯というものを通じて、戦後政治の中で彼がどのような役割を果たしたのかと、もう1つ、福田という人を通じて戦後の政治、外交を見ることで、従来と異なった見方ができるのではないかということを、少しお示ししたいと思います。


●「白切符組」としてヨーロッパの「経済ナショナリズム」に直面


 まず大蔵官僚としての福田の歩みから見ていきたいと思います。

 福田が生まれたのは1905年、明治38年です。福田は群馬県に生まれて、第一高等学校、東京帝国大学を出て、1929年に大蔵省に入省しました。

 当時の大蔵省は、入った時の成績のランクによって待遇が非常に異なっていたといわれています。一番待遇が良かったのは、通称「白切符組」と呼ばれたもの。入って半年や1年でヨーロッパに留学をするということで、まずは外国の勤務から始まるというものです。

 福田はまさにその白切...

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