『マカーマート』から読む政治家の運
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
幸運の火打石――闇夜に不案内な土地を旅する者への忠告
『マカーマート』から読む政治家の運(4)幸運の火打石
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
時の運は決して持続的には働かない。運よく地位を上げた人も、次の瞬間は分からない。悲運に見舞われ挫折したリーダーをサポートすることこそ、人にとって「あらまほしき」ことなのだ。運が天から降ってくるのをただ待つよりも、自ら創意工夫した方法を「幸運の火打石」とするのはさらによいことだ。暗き闇夜に不案内な土地を旅する者へのメッセージとして、『マカーマート』は語っているのである。(全4話中第4話)
時間:12分42秒
収録日:2024年10月2日
追加日:2024年10月26日
≪全文≫

●運から人間への警告


 皆さん、こんにちは。

 運というものはときに、私にとって幸いに作用して、私に成功をもたらすかもしれません。しかし次の瞬間には、運に恵まれてきた人間が不運に付きまとわれ、挫折や失敗に見舞われるかもしれません。このように運というものは持続的ではない反面、不運というものも持続的でないということがあるわけです。

 今回の自民党の総裁選挙は、まさに4回挫折した政治家が5回目の挑戦によって勝利を収めた。その反面、勝利をほぼ手中に収めていた候補者が、最後の瞬間に手元から勝利が転げ落ちていくのを経験した。そういう劇的な結果に終わったことを、アラブ中世の『マカーマート』を素材にして少し考えてみたのが、前回までのお話でした。

 さて、『マカーマート』はこのように言っています。

 「運などというものは人を豊かにするどころかmaala(顔を背けてしまう)もの、aamaala(望み)をひっくり返してしまうもの!それは(恵みを)与えると言うよりwaSaala(踏みにじり)、awSaala(五体)を傷つけるだけなのだ!・・・・・・それは人を健康にさせるどころか、ただdaa’(病気)を患わせ、それでawiddaa’(友達)を心配させるだけなのだ!」

 これは、運といったものに過剰に頼る、あるいはそういうものに対する信頼にあまりに重きを置くことに対しての警告といってもよろしいでしょう。

 他方、運がどのように転んでも、あるいは運というものが自分に味方せず苦杯をなめたとしても、それをものともせず、自分や仲間が新たな変化や状況に対応できるような者こそが、実はリーダーの名にふさわしい(のです)。政治の世界において(も)、まさに指導者として持続的な評価を受けることにつながるのではないかと思われます。


●「不運」の別名は「怠惰」?


 実際、『マカーマート』はこういうふうに言っています。

 「どんな時であれ状況に応じて衣換える我
 運不運の事態の変化に応ずる衣を
 同席する者誰にもふさわしきもの提供す」

 ということで、こうした悲運のあまり、リーダーが権力の座から落ちたとしても、苦境にあえぐリーダーから離れずに、それを支えようとする人こそが、人間としても政治家としても「あらまほしき」者、まさにそうであってほしい者ということです。

 これは、例えば第一次安倍政権が失敗し挫折して、安倍総理が野に...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
半導体から見る明日の世界(1)世界的な半導体不足と日本の可能性
なぜ世界の半導体不足は起きた?台湾TSMCと日本復活への鍵
島田晴雄
岸信介と日本の戦前・戦後(1)毀誉褒貶相半ばする政治家
「昭和の妖怪」岸信介の知られざる実像を検証する
井上正也
第2次トランプ政権の危険性と本質(1)実は「経済重視」ではない?
トランプ政権の極右ポピュリズム…文化戦争を重視し経済軽視
柿埜真吾
会計検査から見えてくる日本政治の実態(1)コロナ禍の会計検査
アベノマスク、ワクチン調達の決算は?驚きの会計検査結果
田中弥生
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
アメリカの理念と本質(1)西洋文明の行き着いた先と三つの建国
アメリカの理念と本質とは?…まず「三つの建国」から原点に迫る
中西輝政

人気の講義ランキングTOP10
仏教とキリスト教が照らし出す日本の宗教(1)神とは何か、そして天皇とは?
日本と世界の「神と信仰」の違いは?…そして天皇の大切な役割
橋爪大三郎
徳川将軍と江戸幕府~井伊直弼編(1)桜田門外の変と井伊直弼の人物像
「桜田門外の変」の謎…井伊直弼の警護に問題はなかったのか
山内昌之
編集部ラジオ2026(28)自由喪失の危機に考えるハイエク-1
斎藤幸平氏に物申す…自由喪失の危機に読みたい自由主義の近現代史
テンミニッツ・アカデミー編集部
中国春秋戦国時代と始皇帝(序)映画『キングダム』の中国史監修
中国古代史の真実と『キングダム』…史実がわかれば物語はもっと面白い
鶴間和幸
資本主義の再定義…哲学で考える(1)アダム・スミスの「市場と感情」
資本主義を哲学する…まずアダム・スミスの見えざる手と道徳感情論
中島隆博
昭和の名将・根本博…台湾での恩義の戦い(5)1人の力で歴史を変えた男たち
大義にもとづく「個人の決断と行動」が歴史を動かす…名将の教訓
門田隆将
中国史概説~『皇帝たちの中国』を読む(1)なぜ「中国史はつまらない」のか?
驚きの中国史~「中国史はつまらない」という通説の裏の波乱の真実
宮脇淳子
AI大格差~最新研究による仕事と給料の未来(1)最新研究から見えてくる未来像
AI大格差…なぜ日本の雇用環境では「ショックが大きい」のか?
宮本弘曉
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
AI時代にリベラルアーツがなぜ必要か(1)AIに置き換わる仕事と人間がやる仕事
AI時代にリベラルアーツがなぜ必要か…人間がやるべきこととは?
橋爪大三郎