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“官僚たちの夏”はもうなくなってしまったのか

民主主義と政治(6)役人と政治家の人材育成

情報・テキスト
役人への要求があまりにも多い現状では、官僚を志望する有能な学生は減少しつつあるのは必然である。曽根泰教氏は、昨今求められているエビデンスベースの政策議論から、政治家と役人がより建設的な関係を結ぶことができるのではないかと展望を述べる。そのためには政治家をどう育てるか、その仕組みをどう作っていくか、重要な問題である。(全8話中第6話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
時間:07:21
収録日:2019/08/28
追加日:2019/09/28
キーワード:
≪全文≫

●有望な若者が役人を敬遠するという現状を改革する必要がある


―― これ(役人への要求が増えているという問題)、先生、相当難しいですよね。

曽根 難しい問題です。一番大元ではない部分で、「若手官僚のエネルギーを削ぐな」「そうしたところばかり駆けずり回らせるな」というのが、基本的な立場です。

 そういう意味では、改革しなければならない部分は、結構あります。生き残るのは、民主党時代の経験を含めてですが、与党審査ですかね。問題は最後まで残る。

 与党審査ですが、議員提出法案の場合は与党で行うわけですね。これは当然なんですけど、内閣提出法案の場合も与党審査を行います。だけど、拒否権を持たせない方が良いと思うんですよ。

 ただ、どのようにそこを作るかというのは難しい。拒否権を持たせないような案を提案したら、「それは議院内閣制の否定だ」と言われて、また怒られたんですね。

―― なるほど。

曽根 でも、そこは実質一番なコア部分ですから、現実と制度の仕組みで試行錯誤して、考えなければならないことの1つなのです。とにかく役人が忙しすぎる。寝ずに仕事をする。その原因のいくつかは非常に単純なところです。物理的に解放してあげて、政策の本当のところで役人と政治家がガチンコで議論したらいいんですよ。

―― 望むべき方向とはかなり乖離が進んでいる感じですよね。今の役人の消耗度合いは、相当激しい…。

曽根 だから、今年の採用では、財務省に東大法学部出身者がほとんどいなかったとかね。経産省を途中で辞めていく人は昔からいたんですが、最近もっと多くなった。役人の魅力は、昔はあったと思います。給料の問題ではなくて、政策の根本のところでいくつか大枠が作れる。だったとしたら、役人冥利だと。

―― 国を背負っているという感覚なのですよね。

曽根 そういうことですね。そういう点でいうと、“官僚たちの夏”はもうないんです。


●エビデンスベースで役人と政治家が政策の議論をするために


曽根 ただ、最近ではエビデンスベースといわれますよね。エビデンス、つまり証拠を出せ、データを出せ、資料を出せ、と。政策の議論に関しては、エビデンスベースでできるようにしようという考え方です。これは官僚にとっては、実はとても意味があるわけです。「われわれはデータを持っていて、分析しているので、エビデンスベースで勝負しましょう」「はい、外国の例はこうです。政策案の候補になっているのはこれです」と。そこは1つの余地なんですよ。

―― なるほど。エビデンスベースで政治家と議論する、と。

曽根 議論できるようになれば、ね。

―― でもやっぱり、かなり根性がある役人じゃないとね。

曽根 そうなんです。

―― 相当、気骨がないとできないでしょうね。

曽根 かつては調整型の役人がやはり出世したわけです。政治家の先生方の間を駆けずり回って、忠誠を示して、「先生、これをのんで頂ければ、こちらの予算を付けますから」という話でやってきた。ところが、「政策をエビデンスベースで」という話になると、ちょっと話が違うという反応が起きるかもしれない。

―― でもその部分が変わると、役人が役人らしく生きられますよね。

曽根 はい。政治家は自分で政策の候補を作れなくてもいいんです。複数の案の中から、どれが良いか判断できる、その能力を政治家が持つことが大事なのです。持つというのは能力だけではなく、責任を持つということも、です。その胆力を政治家の方が鍛えなければならない。


●議員としての人材をどのように選抜、育成するのか


―― 胆力を鍛えるという意味では、当選回数が若い議員を見ていると、およそ人間の胆力を鍛えた形跡がない。例えば、中国古典、『貞観政要』とか見たこともないという人々が圧倒的に増えていますよね。小選挙区がいい、中選挙区がいいという前に、議員になる人の資質の劣化がすごく進んでいるのではないでしょうか。

曽根 人材源をどこに求めるかですよね。今の教育システムを前提とすれば、大学生が就職して何年かたって、政治家を目指すというのが普通のルートですよね。昔は、官僚、地方政治家、ジャーナリスト、それにプラスして松下政治塾というようなルートでした。

 そこを例えば、公募制にするとか。公募制の導入自体は悪くないのですが、公募に出てくるかさ上げされた経歴を見抜く目を持たなければならないですね。

―― そうでしょうね。

曽根 政治家をどのように判断するか、候補者として、ですね。実は、政党がその機能を持たなければならないのです。しかも、それは党が持つだけではなく、選挙区でも、です。われわれの例でいうと、履歴書、業績表を見て、良い学者だと判断してみても、実際に講義をさせてみるとボロボロだということがあります。あ...
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