●ベストな選挙制度に関してコンセンサスは存在しない
曽根 選挙制度に関して、われられはジョークでいうのですが、政治学者が集まったときにしてはいけない2つの質問があります。1つは小選挙区と比例代表のどちらが良いのか。議論は永遠に終わりません。もう1つは、大統領制と議院内閣制のどちらが良いのか。これも議論は永遠に終わらない。
実際、私は昔、学会でカリフォルニア大学のアーバイン校に行った時、ハリー・エクシュタイン(アメリカの政治学者)やデイヴィッド・イーストン(アメリカの政治学者)など昔の教科書で見たような人に会って、「まだ生きていらした」という思いがしました。
20人程度の比較政治の学者が集まったところに、たまたまエストニアの人がやって来て、「うちはこれから憲法を作るのですが、どういう制度が良いでしょうか。大統領制と議院内閣制のどちらが良いですか」と質問をしました。すると、政治学者たちが2時間論争しても終わらない。このように選挙制度や、大統領制と議院内閣制のどちらが良いかという議論は、永遠に終わりません。つまり最終的な答えはないのです。
冷戦後、何が起きたかというと、ほとんどの国で小選挙区と比例代表の組み合わせが取られます。これを「ミックス・システム」と呼びます。これは制度としては、最終的には妥協なのです。両者の主張を取り込んだ制度なのですね。
●選挙制度、政党、代表性の複雑な関係
曽根 では、比例代表、小選挙区に代わる決定的に良い選挙制度はあるのかと問われると、今のところ答えはないのです。中選挙区には1つの可能性があります。しかし、中選挙区時代の欠陥は、これまでに述べたようにお金がかかり過ぎる。それからマニフェストで選挙はできないということですね。自民党から5人立候補者がいたら、全員同じマニフェストで戦うということは有り得ないですね。そうすると、個人型の選挙にならざるを得なくなる。したがって、政党が責任を持つという選挙ではないわけです。
では、政党は責任を持たなくてもいいのか、個人が責任を持てばいいのかというと、これでは政党政治が成り立たない。それでなくても、今の世界は政党がボコボコに叩かれるため、政党を立て直すにはどうしたらいいのかという時代です。政党を立て直すのは難問中の難問になってしまいました。
ご質問の、どのような条件で政党が発生...