民主主義と政治
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
次の動画も登録不要で無料視聴できます!
ヨーロッパのどこにも模範とすべき民主政のモデルがない
第2話へ進む
民主主義は今、危機に瀕している
民主主義と政治(1)民主主義の危機
「民主主義は今、非常に危機に瀕している」と、曽根泰教氏は言う。そもそも現代の民主主義体制は、その始まりである古代ギリシャの体制とは大きく異なり、選挙を通じた間接的な民主政である。その中で問題となるのは、党派性の強さゆえに相手と議論し理解することを目的とせず、相手を否定するという慣行である。こうした性質は政治を尖鋭化させ、さまざまなポピュリストの台頭を招いている。曽根氏は、世界各国の例を引きながら、現代の民主主義体制の在り方に警鐘を鳴らす。(全8話中第1話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
時間:10分26秒
収録日:2019年8月28日
追加日:2019年9月21日
≪全文≫

●古代の民主主義体制と現代の民主主義体制の差異


―― 今日お伺いしたいのは、民主主義と政治というテーマです。アテネの民主政を例に挙げると、実はペリクレスがいた50年間ぐらいだけがうまく機能していて、ペリクレスという天才がいなくなってしまうと、全くうまく機能しなくなってしまいます。プラトンにしてもアリストテレスにしてもそこを見ているから、必ずしも民主主義に対して高い評価を与えていないですよね。そのため、その後は貴族政になっていったりします。

 今度はローマに目を向けると、最初に貴族政の元老院がある。さらに独裁官というリーダーは作るけれども二人同時に任命したり、任期が半年単位になっていたりと、暴走を止めようと工夫しています。でも結果として、領地を拡大していくとともにマネジメントできなくなって、共和制から帝政に変わっていくという流れも出てきました。

 同じ民主主義政治体制といっても、例えばアメリカは、一番上に自分たちの安全保障として軍事を置いた民主主義政体です。また、イギリスやフランスでは、いまだに貴族政的な部分が多く残っているように思います。加えて、今、世界中で格差がこれだけ広がってくると、ポピュリストが台頭するようになってきます。

 ではわれわれは、民主主義をどういうふうに考えていけばいいのか。どう捉えていけばいいのか。このような問いに関して、お考えをお聞かせ願えればと思います。

曽根 民主主義は今、非常に危機に瀕しています。民主主義を語っている、いわばわれわれは、民主主義を今まで語り継いできたんですね。それでも危機に瀕しているということは、今の世界を見ていると共通認識であると思います。

 では、新しい民主主義が定義できているのか。まだだろう。ということで、ギリシャに戻る。アテネに戻る。では、アテネの民主主義とは何なのか。アテネでは「民会」といって、アテネの市民全員(女性や奴隷は含まれない)が集まっていました。これが民主主義だと思われている部分もあるんですが、そうではなくて、500人委員会という制度がありました。これは抽選で選びます。抽選の装置が残っていますが、抽選で選び、輪番で動かすという仕組みがあったのです。

 最近、選挙ではなくて「抽選だ」と民主主義を語る人がいますが、それはこのアテネを念頭に置いた抽選ということでしょう。ただ、そこでとまってい...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉
中国の「なぜ」(1)なぜ「中国は一つの国なのか」
武力で負けても文化で勝つ? 恐るべし「中原」の同化力
石川好

人気の講義ランキングTOP10
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(1)史実としての豊臣兄弟と秀長の役割
豊臣兄弟の謎…明らかになった秀吉政権での秀長の役割
黒田基樹
編集部ラジオ2025(31)絵で語る葛飾北斎と応為
葛飾北斎と応為の見事な「画狂人生」を絵と解説で辿る
テンミニッツ・アカデミー編集部
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(4)葛飾応為の芸術と人生
親娘で進歩させた芸術…葛飾応為の絵の特徴と北斎との比較
堀口茉純
平和の追求~哲学者たちの構想(4)ルソーが考える平和と自由
ルソーの「コスモポリタニズム批判」…分権的連邦国家構想
川出良枝
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
今井むつみ
熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために
夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは
西野精治
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎
死と宗教~教養としての「死の講義」(1)「自分が死ぬ」ということ
世界の宗教は死をどう考えるか…科学では死はわからない
橋爪大三郎