民主主義と政治
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
ヨーロッパのどこにも模範とすべき民主政のモデルがない
民主主義と政治(2)民主政のモデルと多数派形成の失敗
かつて民主主義の2つのモデルとして議論された、イギリス型の民主政とヨーロッパ型(コンセンサス型)の民主政。現代では、どちらの制度の下でも多数派形成に苦しんでいる。よって、模範とすべき民主政の形は不明瞭になってきている。ヨーロッパのどこにも民主政のモデルがないとすると、日本はどこに何を求めたら良いのか。(全8話中第2話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
時間:6分48秒
収録日:2019年8月28日
追加日:2019年9月21日
≪全文≫

●イギリス型の議会も機能不全を起こしつつある


曽根 次に、イギリスの議会ですが、もっと大人だなと、少なくとも議会で妥協ができると、考えられてきました。議院内閣制の良い点ですが、政府が提出した法案は、本来が多数ですから基本的には通るわけです。それがイギリスでは通らない。通らないだけではなくて、イギリスの議会から出てきた8つの案がいずれも多数を取れない。つまり、いってみれば議会が決められないということが、イギリスで起こってしまっている。多数派が多数でないということですね。

 つまり、今までわれわれが想定してきた議院内閣制とか、政党政治といったものは、次々に覆されているんです。

 では、こうしたことはかつてあったのかというと、ないことはないのですが、これほど極端な形で起こった例はありませんでした。そうすると、日本はイギリス政治を雛形にして政治改革をやってきましたが、反省する点はたくさんあるわけです。「アメリカの民主主義こそ」って思っていた人もいますが、それも反省するところがたくさんある。そういう意味では、政治学者にとって大変な危機ですよね。

―― なるほど。今まで正しいと思われてきたアメリカ型もイギリス型も全部否定されてしまった、と。ということは、先生、やはり日本の風土と歴史に根差して、結局は自分たちで考えざるを得ないということでしょうか。

曽根 はい。例えば、イギリスになくて日本にあるものといえば、国対(国会対策委員会)ですよね。委員会の理事会もイギリスにはないですよね。国対政治、理事会というのは、良くないものだとずっと言われてきました。だけど、そこにクッションがあることで、まだ合意の余地が生まれるという、ある種の知恵だったのかもしれない。

―― そうでしょうね。


●大陸のコンセンサス型民主主義の行き詰まり


曽根 となると、イギリス型だけが良いと主張してきた人も、もういっぺん「議会とは何か」となる。そして、片方は妥協をどの程度議会はやれるんですかということと、もう1つはやはり何だかんだいっても多数、つまり過半数ないと法案や予算は通らないわけですね。過半数を作り出す議会というのは、条件として必要ですね。では、どうすればそうした議会が生まれるのか。そこで、イギリスではなくて、ヨーロッパ型の政治が良いという人も随分いたわけです。

 私が共同研究を行った...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
2025年、どん底日本を脱却する大戦略(1)日本が凋落した要因を総覧する
日本凋落の「7つの要因」と「10の復活大戦略」
島田晴雄
多数派が多数でなくなるとき
悩める多数派…なぜ「多数は少数の集まり」と考えるべきか
曽根泰教
トランプ・ドクトリンと米国第一主義外交(1)リヤド演説とトランプ・ドクトリン
トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ
東秀敏
トランプ政権と「一寸先は闇」の国際秩序(1)国際秩序の転換点と既存秩序の崩壊
経済秩序や普遍的価値観を破壊し、軍事力行使も辞さぬ米国
佐橋亮
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉

人気の講義ランキングTOP10
東大ハチ公物語―人と犬の関係(1)上野英三郎博士とハチ
忠犬ハチ公で哲学する…人と犬の関係から見えてくる道徳論
一ノ瀬正樹
産業イニシアティブでつくるプラチナ社会(3)健康産業イニシアティブ実装に向けて
使えるデータで「健康のプラットフォーム」を実現しよう
小宮山宏
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(4)エンタメで一番重要なのは「人」
変人募集中…0から1を生める人、発掘する人、育てる人
水野道訓
徳と仏教の人生論(2)和合の至りと正直
正直とは何か――絶対的存在との信頼関係の根幹にあるもの
田口佳史
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
ショパンの音楽とポーランド(1)ショパンの生涯
ショパン…ピアノのことを知り尽くした作曲家の波乱の人生
江崎昌子
チームパフォーマンスを高める心理的安全性(1)心理的安全性が注目される理由
なぜ今「心理的安全性」なのか、注目を集める背景に迫る
青島未佳
大谷翔平の育て方・育ち方(1)花巻東高校までの歩み
大谷翔平の育ち方…「自分を高めてゆく考え方」の秘密とは
桑原晃弥
教養としての世界史とローマ史~ローマ史講座・講演編(1)古典と世界史
教養の基礎となるのは、古典と世界史である
本村凌二