『マカーマート』から読む政治家の運
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
次の動画も登録不要で無料視聴できます!
日本政治史に残る大記録…5回目の挑戦で勝敗を分けたのは
第2話へ進む
石破新総裁誕生から考える政治家の運と『マカーマート』
『マカーマート』から読む政治家の運(1)中世アラブの知恵と現代の日本政治
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
人間とりわけ政治家にとって運がいいとはどういうことか。それを考える上で読むべき古典がある。それが中世アラブ文学の古典で教養人必読の書ともいえる、アル・ハリーリー作の『マカーマート』である。巧みなウィットと弁舌が持ち味の説話文学で、現代の日本政治を彷彿させるものも多い。特に2024年9月27日、自民党新総裁の座を争った石破氏と高市氏の姿は、中世アラブが描き出した「時の運」に支配されているかのように見える。(全4話中第1話)
時間:12分38秒
収録日:2024年10月2日
追加日:2024年10月19日
≪全文≫

●教養人必読の古典、中世アラブ文学『マカーマート』


 皆さん、こんにちは。

 中世(アラブ)文学の古典に『マカーマート』という作品があります。これは12世紀のアル・ハリーリーの手になる教養・知識人層を対象にした書籍、すなわち教養・知識人階層であれば必ず読まなければならないとされた古典です。

 「マカーマ」というのは単数系で、(アラビア語では)伝統的な集会において雄弁家が立ち上がって行う技巧的な演説を指します。韻や音律を踏まえ、単語の選択や重ね合わせなどに非常に周到な準備をこなし、非常に難しいアラビア語の文法を高度に理解した人々が作った文章でもありました。

 12世紀以来、彼らにとって『マカーマート』は、『コーラン』に次ぐ、あるいはそれ以上に必読の古典とされてきました。そこには共通の語り手と主人公が設定され、中東世界の全域にわたる政治や社会経済、ひいては社会風俗、日常生活にまたがるウィット(機知)と弁舌でやり取りされる豊富な話題が取り上げられています。

 それを読むと、人間の運命や運、あるいはツキといった観点が、現在の政治にも非常に参考になり、現代政治を不思議と照射しているのではないかと思えるものが満載です。今日、最初に私がこれに触れたのは、他でもありません。

 最近の私は日本政治を見るにあたって、堀内勝氏の手になる日本語訳である平凡社東洋文庫に収められた3巻本の『マカーマート』を、普段からも比較的よく繙いていますが、改めて思いついて読んでみますと、最近の石破新総裁・新総理の誕生や、下馬評の高かった高市早苗氏、あるいは小泉進次郎氏などの落選、敗北と、その背後にあった事情や敗北の原因などをどう解釈するかについて、参考になる文章が非常に多かったように思います。

 この本を読むにあたって、運の良し悪し、人間とりわけ政治家にとって運がいいとはどういうことか、逆に悪いとはどういうことかといった面において、中世アラブの知恵に学ぶところが私なりにありました。そこで、少し考えてみたところ、皆さんとともにもう一度勉強してみたいと思うのです。


●石破新総裁誕生にみる「時の幸運」


 『マカーマート』の中に次のような文章(節)があります。

 「彼とともに在りせば 我が煩い事も消え
 時の幸運(めがみ)来たりてその顔を顕わさん
 ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
為替レートから考える日本の競争力・購買力(1)為替レートと物の値段で見る円の価値
ビッグマック指数から考える実質為替レートと購買力平価
養田功一郎
マルクス入門と資本主義の未来(1)マルクスとはどんな人物なのか
マルクスを理解するための4つの重要ポイント
橋爪大三郎
危機のデモクラシー…公共哲学から考える(1)ポピュリズムの台頭と社会の分断化
デモクラシーは大丈夫か…ポピュリズムの「反多元性」問題
齋藤純一
日本の財政の真実を検証する(1)膨らむ借金の知られざる実態
日本の財政の「真実」をデータで徹底検証…国際機関の分析は?
宮本弘曉
地政学入門 ヨーロッパ編(1)地図で読むヨーロッパ
ヨーロッパとは?地図で読み解く地政学と国際政治の関係
小原雅博
教養としての「人口減少問題と社会保障」(1)急速に人口減少する日本の現実
毎年100万人ずつ減少…急降下する日本の人口問題を考える
森田朗

人気の講義ランキングTOP10
ヒトはなぜ罪を犯すのか(1)「善と悪の生物学」として
ヒトが罪を犯す理由…脳の働きから考える「善と悪」
長谷川眞理子
中国春秋戦国時代と始皇帝(6)秦の恵文王、昭王、荘襄王の時代
秦による中国統一への道…恵文王、昭王、荘襄王が行なったこと
鶴間和幸
編集部ラジオ2026(24)「皇室典範改正」を考える
【10minで考える】「皇室典範改正」社会の空気をどう見るか?
テンミニッツ・アカデミー編集部
天皇のあり方と近代日本(4)三島由紀夫VS東大全共闘
「人間天皇」を否定した三島由紀夫の思想が問うものとは
片山杜秀
日本の財政の真実を検証する(5)財政政策で経済は成長するか
どうすれば経済成長できるのか…財政政策の可能性と限界とは?
宮本弘曉
AI大格差~最新研究による仕事と給料の未来(1)最新研究から見えてくる未来像
AI大格差…なぜ日本の雇用環境では「ショックが大きい」のか?
宮本弘曉
行動経済学とマーケティング(4)出費を左右する「心理的会計」
ギャンブルのマーケティング…あぶく銭効果とは何か
阿部誠
『太平記』に学ぶ激動期の生き方(1)なぜ今『太平記』を読むべきなのか
『太平記』は乱世における人間の処し方が学べる古典文学
兵藤裕己
老子の神髄(7)『老子道徳経』「去用第四十」
緊張や怒りをコントロールするには?老子に学ぶ精神と肉体の関係
田口佳史
昭和の名将・根本博…内蒙古・終戦後の戦い(2)在留邦人の生命財産を保護する決断
武装解除の「厳命」を守るか、戦って在留邦人の「生命」を守るか
門田隆将